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ダンジョンの隠し部屋でのんびり生活  作者: 泪
ダンジョンの秋
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ウエストダンジョンの冒険者達 

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。

 俺の名前はヒル、弟のクロスと2人で「ノルディーク」というBランク冒険者パーティーを組んでいる。

 10日前、冒険者ギルドからCランク以上の冒険者に強制依頼がでた、ウエストダンジョンに逃げ込んだエルフの親子を生け捕りにしろと。


「春に流行ったポーションがほとんど効かない病の原因がそのエルフだ、なんとしても生け捕りにして病の情報を吐き出させるのだ」

 集まった冒険者達を前にそう言った、ギルドマスターの言葉を信じた奴はどれだけいたか……何せその情報を持ち込んだのは、強欲で黒い噂に事欠かない奴隷商人だったのだから。

 それでも強制依頼を断れば、冒険者義務違反として職を失った上に投獄されるので断ることは出来ない。

 仕方なくウエストダンジョンにエルフ捜索に来た俺達は、確かにエルフらしき親子の姿は見つけたものの、あと一歩の所で捕まえる事ができず2人は20階層に逃げて行った。


「はぁはぁ……た、助けてくれ!」

「げほっ……誰か、石化解除薬を……」

 ウエストダンジョン20階層に繋がる階段の目の前にある、19階層のセーフティエリアに飛び込んで来たのは、1時間前に意気揚々と先に進んだAランク冒険者パーティー「オリンピア」の内の2人だ。

「やっぱりダメか、だから止めとけって教えてやったのに」

「石化解除薬なんて高級品、俺達が持ってるわけねえだろ。死にたくなかったら、その石化した腕と足を切り落とすをだな、それでも助かるかどうかは賭けだがな」

 昨夜、散々俺達を腰抜けだとバカにしていたオリンピアのメンバーに、ここに残った連中の目は冷たい。

 20階層にコカトリスの巣がある事も、その嘴の攻撃を受ければそこから咳して解除薬がなければ死ぬ事も、昨夜の内に説明したんだ、解除薬が俺達の手に入らない程飲高級品だって事も含めて……それでも先に進んだのは、自分達の責任だ、と。


「兄さん、このままここに居ても仕方ないでしょ。エルフが20階層に上がって行くのは、ここに居る4パーティー11人が見てる、先に進むには石化解除薬が必要だって外に報告しよう」

 弟の言葉に周りの連中も頷いているのを確認して、俺も覚悟を決める。

 オリンピアを除いて、今ここに居る最高ランクの冒険者はBランクの俺と弟の2人、ということは報告するのは必然的に俺になるだろう。

「あいつら、俺達の言葉を信用するとおもうか?」

 苦笑いしながら俺がそう言えば、他の連中も疲れた様な顔で話しだした。


「さすがにこの人数でそう言えば、信じるんじゃないか?だが、石化解除薬はくれないだろうな」

「もし薬があったとして、20階層に逃がした俺達の責任だとか言われて、薬は俺達が買い取れってなるんじゃねえの?」

「買い取れって、石化解除薬だぞ。1本いくらすると思ってんだ! アレ、1本で帝都の貴族街に豪邸が建つ程の値段だぞ、そんな物買える訳ねえだろ」

「嫌だ、死にたくねえよぅ……助け……て」

「あ、ああぁ……体が……」

 俺達がこれからの事を話し合ってる間に、オリンピアの2人は石化した部分を切り落とすのを躊躇った為にとうとう全身が石化して死んでしまった、薄情なようだが薬がなければ俺達にはどうしてやることも出来なかった。


とにかく一度ダンジョンを出ようとセーフティエリアを出た所で、見知らぬ冒険者達が20階層に向かおうとしているのを見つけて慌てて声を掛ける。

「待て!! 20階層にはコカトリスの巣があって危険だ、攻撃を受けると石化して死んでしまうぞ」

 その冒険者達はびっくりしたように俺達をみると、20階層には行かずこちらに近付いて話しかけてきた。

「貴重な情報ありがとう、俺達は「トライアスラ」普段はシュバルツ王国で活動しているAランク冒険者だ。あなた達はエルフを見ましたか?」

「トライアスラって、もしかして、あの?」

「ウエストダンジョン36階層まで踏破したって、ギルドの連中が言ってたやつか?」

「あんなの嘘に決まってるだろ、どうやってコカトリスの巣を抜けるんだよ。嘘に決まってる」

 後ろの連中の言葉に驚いて、詳しい話しを聞こうとしたら、苦笑いしたトライアスラのメンバーが話しだした。


「あ~、俺達夏の暑い時期にダンジョンアタックしたんだ、その時は20階層にコカトリスはいなかったぞ。季節によってダンジョン内の魔物の分布が変わる事あるから、それでかも知れない」

「その代わりと言っちゃなんだけど、30階層より上は地獄だぜ。セーフティエリアでも、全然セーフティじゃ無えし、湧き水が熱湯だったり、猛毒のオタマジャクシが水が見えねえほどうじゃうじゃいたり」

「……30階層以上……毎日構造変わる……」

 トライアスラのメンバーの言葉は信じられない事ばかりというか、普通自分達以外の冒険者にダンジョン内部の情報を教えるなんてあり得ない、何を考えてるんだ。

「何でそんな情報を、俺達に教えてくれるんですか?」

「何でって、さっきお前達も20階層にはコカトリスが居て危険だって、教えてくれただろう」

 俺達の常識では当然とおもえるクロスの質問に、きょとんとした顔でトライアスラの連中はそう答えた。


「挨拶が遅くなってすまない。俺はBランク冒険者パーティー「ノルディークのヒルだ。少しそこのセーフティエリアで話がしたいんだが、良いか?」

「ああ、俺はトライアスラのリーダーのラン、でこっちがスイムで後ろのでかいのがバイクだ。こっちも話しておきたい事があるんだ」

 話しておきたい事? ランの言葉は気になったが全員でセーフティエリアに戻り、まずは俺から今の状況を話した。

「なるほどな、だが俺達は20階層以上に進んだ実績を買われてここに来た、ここで引き返す訳にはいかないんだ。それに、ここの件に早く片をつけないと大変な事になる」

 難しい顔でそう言ったランが続けたのは、冒険者達がこのウエストダンジョンに集中しすぎたせいで、他のダンジョンの魔物が増えすぎてスタンピードが起きる可能性があるという、とんでもない話しだった。


「まさか……いや、でも俺も親父から聞いた事がある」

「ちょっと待てよ、今の状況でスタンピードが起こったら……」

 シュバルツからリュミエールへの移動途中で、小規模なスタンピードは潰してきたというランの説明に、俺達は真っ青になる。

 ここのダンジョンに冒険者達が集中してどの位たつ? Cランク以上は強制依頼だが、それ以下は自分達の意思でここに来てるんだよな、すぐに他のダンジョンに移動してくれと言って……無理だ……エルフが見つからない限り、多分大多数の冒険者は移動しない。


「もし一日外に戻るなら、他の冒険者達にもスタンピードの危険性を伝えてくれないか? 俺達はこちらに知り合いが居ないから、ほとんどの冒険者達が俺達の話しを信用してくれなかったんだ。俺達は先に進んでエルフを追う」

 無茶だと騒ぐ他の連中の声にも、トライアスラの意志は変わらない様子に俺も覚悟を決めて横を見れば、クロスも目に決意を秘め頷く……俺達の生まれ育った村は、廃ダンジョンから起こったスタンピードで全滅したんだ、俺達は母の病の治療の為に帝都に来ていて助かった。

 スタンピードを止める為に、冒険者達を他のダンジョンに向かわせるには、エルフを捕まえるのが一番早い。

「俺達ノルディークも一緒に行く。一応Aランク間際だって言われてるBランクだ、少しは役に立つと思う」

 俺の言葉に、無茶だ死にに行くようなものだと止める奴、止めるのは無理だとカバンからポーションや食料を取り出し渡してくる奴がいる。

「報告は、俺達が行く、他の冒険者達にもさっきの話しはしてみるから……死ぬなよ」

「これ持ってけ、俺達は帰るだけだから……」

「無茶するなよ……死んだら終わりだぞ」

 こいつら、みんな良いやつらだったな……ああ、俺達も簡単には死んでやらないさ。


 なんて思って出発したんだがな、何なんだこいつら……トライアスラのメンバーは強かった。

 クロスの魔法攻撃の援助はあるものの、コカトリス相手にまったく怯む様子も見せずにサクサク倒していく。

「とうっ……はぁ、次が出る前に進むぞ。コカトリスといっても、思ってたよりたいした事ないな、嘴と尻尾の蛇さえ気を付けたら何とかなる」

「あの3匹に比べれば、こっちの方が楽ーって、どうなんだ?」

「……あれは、別物……」

 3人で話しながらサクサクと進むのについて行く俺達は、ここが何処なのか分からなくなってきた。

「兄さん、ここ20階層だよね。こんな簡単に進めていいの?」

「いや、彼らが強いんだ。実際俺達2人だけで、コカトリスを倒せると思うか?」

「……無理だね………居た!! エルフだ!」

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