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ダンジョンの隠し部屋でのんびり生活  作者: 泪
ダンジョンの秋
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番外編 トリック&トリート

 いつも読んでいただいて、ありがとうございます。

 唐突に浮かんだハロウィン小話ですが、よろしくお願いします。

 カタカタカタ、ミシンに軽快な音をたてさせてサクラが黒い布を縫っている。

「サクラ、何作ってんだ?」

「私の居た世界ではね、10月の最終日にハロウィンってお祭りがあって、子供達が仮装して近所の家を回って「トリックオアトリート」お菓子くれなきゃ悪戯するぞって言ってお菓子をもらうの。それを思い出してレイちゃんに可愛い格好させたくなっちゃって」

 何を作ってるのか聞いてみたら、サクラがそう言ってさっきまで縫っていた布を広げると、猫耳の付いたフード付の黒いケープになっていた。

「ふふふ可愛いでしょ。後ね、こんな手袋もあるんだよ、でもこれは大人用だからレイちゃんには大きすぎるかな?」 

 サクラが着けて見せたのは、黒い毛皮で作った猫の手型の手袋……ご丁寧にピンクの肉球まで付いたそれを顔の横でニャンニャンと言いながら振ってるサクラが可愛いな、おい。


「なあサクラ、お前もレイとお揃いで仮装しないのか?絶対似合うと思う」

「私も?うーん、もう仮装するような年じゃないんだけど。ここなら家族しか見ないし、いいかな?」

 何時もとちょっと違う格好のサクラとしてみたい、なんて下心が透けて見えねえよう言ってみたお陰か、サクラも乗り気になってきたみたいだ、よし!!

「レイは昼間からその格好だろ、シバ達にその日は菓子持ってくるように言っといてやるよ。ハロウィン面白そうだから、獣人族の連中にも教えてやってくれ。あ、サクラの仮装は夜だけな」

「えーっ、ハロウィンの詳しい起源とか知らないんだけど……」

 ダメ押しでそう言っとけほば、サクラは困った顔をしながらもあのワンピースを改造してとか、シバさん達にはどんなお菓子が良いかなとハロウィンの算段を始めた……くくく上手くいったぞ。


「トリックオアトリートにゃん!」

「キャー、レイちゃん可愛いにゃ!!黒猫にゃ、お耳も尻尾も可愛いにゃ」

「ふおー、凄いっすね。この耳ちゃんと立ってるっす」

 野菜を届けに来たシバとニャニャがレイの格好を見て歓声をあげてる……どうだ、家の子可愛いだろ。

 真っ白のブラウスに赤いリボンを首元で結び、猫の尻尾付の黒の膝丈スカートは中に白く薄い生地を何枚も重ねてふわふわと広がっている、もちろん猫耳の付いたフード付の黒のケープを被ったレイは、とんでもなく可愛いかったからな。

 思わず転移魔法でレッカ達の所に連れて行って自慢してしまう位……後でサクラにめっちゃ怒られた、いきなりレイを連れて転移したから驚いたと。


「トリックオアトリートってどんな意味にゃ?」

「トリックが悪戯でトリートがお菓子の意味なの。だから、悪戯か?お菓子か?って事でお菓子くれなきゃ悪戯するぞって事よ。レイちゃん、お菓子くれないニャニャちゃんに悪戯しちゃえ」

 サクラの言葉に、にっこり笑ったレイがニャニャの脇腹をくすぐり始めた、

「にゃはははは、や、止めてにゃ。降参にゃ~、お菓子はここにゃ。にゃははは」

「レイちゃんどうぞ、お菓子っす」

「ありがとにゃん」

 くすぐられ過ぎてゼイゼイ言いながら菓子を差し出すニャニャを見て、シバがさっさと菓子を差し出すのを、レイはちょっと残念そうに見ながら礼を言ってるが……その語尾可愛いじゃねえか、今夜絶対サクラにも言わせてやる。


「シバさんもニャニャちゃんも、レイちゃんに付き合ってくれてありがとうね。これは私から、ニャタロウ君と3人で分けて食べてね」

 サクラがアップルパイを渡すと、その甘い匂いに鼻をヒクつかせて嬉しそうに尻尾を振っているシバの横から、ニャニャが今すぐ食べたそうに袋の中をのぞき込んむ。

「ふにゃ?このお菓子変な顔が付いてるにゃ。美味しそうな匂いはするけど、不気味にゃ」

 ああ、アレな……俺も最初はびっくりしたけどな、味は最高だったぞ。

「これはね、ジャックオランタンってカボチャのお化けの顔になってるの。ハロウィンにはカボチャをこんな顔に見えるようにくり抜いてランタンを作って飾るのよ」

 なんて説明するサクラに、異世界には変な風習が有るんだなーと言いながら、シバ達は菓子を嬉しそうに抱えて帰って行った。


 シバ達が村に帰ってから俺も仕事に行ったものの、今夜のサクラの事を想像してニヤついていたのかアインに呆れた様な顔で文句を言われた。

「何を想像しているのかは聞きませんが、いい加減私にもお子様を紹介していただけませんかねえ。可愛い可愛いと自慢だけされては、段々腹も立ってきますよ……しかも自分だけ美味しいもの食べて」

 最後の方小さい声だったが、お前本当はそれが本音だろ!


「今夜は予定が有るから近い内にな、お前の好きなオーク肉の料理の日に呼んでやるよ」

 と言えば途端に上機嫌になったアインに、後の仕事はやっておくので予定が有るなら早く帰られては?と促されて、いつもより早い時間に家に帰る事が出来た。

 2人を驚かそうと家の中に転移で戻り、居間のドアを開けると黒猫が2匹で遊んでた。

 サクラはふんわり膨らんだ半袖の黒のシンプルなワンピースの上に白くてヒラヒラなエプロンを着けてる、しかも腿の中ほどまでのミニスカートで、膝上まである白い靴下とスカートの間の素肌の部分に目が奪われる。

 しっかり猫耳と尻尾も着けて、この前見せてくれた手袋まではめたサクラは、とんでもなく可愛いとニヤニヤ笑っていたら俺に気付いたレイに飛びつかれた。

「とーしゃま、おかえりなさーい。あと、えっと、トリックオアトリートにゃん!」

「ほう、俺に悪戯出来るものならやってみな」

「とーしゃま、かくごにゃん、!!」

 レイをからかってやると、そう叫びながら俺をくすぐりだした……ちょっ、マジでくすぐったいぞこれ。

「降参だっ、これで許してくれ」

 朝の内にサクラからあずかった、ジャックオランタン型のスイートポテトとかいう菓子を渡せば、素直にくすぐるのを止めたレイの頭を撫でて床に下ろす。


「サクラも似合ってる、可愛いな、それ」

「ね~、かーしゃま、かわいいにゃん」

 俺達が誉めると真っ赤になったサクラは、ぴゅっと台所に引っ込んで顔だけ出すと、

「ありがとにゃん。レオンも帰ってきたし、ちょっと早いけどもう夕飯にしちゃう?」

 と聞いてきた、そうだな早く夕飯を食べて、ゆっくりサクラに悪戯するか。


 はしゃぎ疲れたレイは夕飯を食べるとすぐに眠そうに船を漕ぎだしたので、さっさと風呂に入れて寝かしつけたら、これからは大人の時間だ。

 黒猫の姿のまま居間で待ってたサクラを後ろから抱きしめ、耳元で囁く。

「トリック&トリート」

「トリック&トリート?」

 不思議そうな顔で振り向いたサクラの右頬には、血を流した痛々しい傷跡をぱっくりと晒していた……

「サクラ!!どうしたんだそれ。今すぐ治してやるから……」

 慌ててポーションをとりに行こうとすると、クスクス笑ってサクラがその傷跡を顔から剥がす……

「ごめんなさい、これは作り物よ。日本では、こんなのを着けて仮装してたから」

 旦那を騙すとは良い度胸だ、今夜は手加減してやらねえからなと、抱きしめる腕を強めてやる。

「そんな悪戯する嫁には、トリック&トリートだ!たっぷり悪戯してから美味しくいただいてやるよ」

 その台詞を聞いた途端に暴れだしたサクラをお姫様抱っこで寝室に運んで、しっかりハロウィンをたのしんだ。

 異世界の祭りも、良いもんだな。

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