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ダンジョンの隠し部屋でのんびり生活  作者: 泪
ダンジョンの秋
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コカトリスパニック

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。

「ポーションや解毒薬は分かるんですが、石化解除薬まで入っているのはなぜですか?」

「あぁ?お前ら知らなかったのか、ウエストの20階にはコカトリスの巣があるぞ。あいつらの嘴で攻撃されると石化するからな、まあ攻撃に当たらなきゃ大丈夫だが保険にな」

「コカトリスね、夏の間は暑いから上の階に移動するのよあいつら。秋になるとエサ(冒険者)の豊富な20階層に戻るんだけど」

 石化解除薬は病用の薬なのに、わざわざマジックバッグに入れてくれたのだから何か理由があるのかと一応確認してみれば、各ダンジョンマスターから信じられない様な返答が返ってきた。

 20階層にそんな恐ろしい魔物がいるなんて聞いてないぞ、ウエストダンジョンに潜る前にギルドで魔物の種類や注意点を聞いた時もそんな話は出なかった。


「それでか!! 19階のセーフティエリアで、他の連中が俺達をを指差してニヤニヤ笑って話してたんだ」

 スイムの言葉を聞いて思い出した、ギルドに報告した時のギルド職員のおかしな態度を……

 どういう仕組みか分からないが、絶対に偽装出来ないはずの期待カードに、確かにウエストダンジョン36階到達と出ているのにそれを認めようとしなかったのは。

 ギルドが冒険者に情報を渡さないってのは規則違反だ、たとえよそ者には情報を与えるなと現地の高位冒険者に脅されたとしても、やはりまだギルドは信用出来ないようだな。


「貴重な情報をありがとうございます。これで少しは対策をとることが出来ます」

「頑張れよ、後、コカトリスの嘴は石化解除薬の原料になる、忘れずに持って帰れよ。まあ薬が自分達で作れなかったら、お前らの分位は売ってやるよ、ここまで来たらな」

 情報のお礼を言ったら、又しても信じられない様な情報を追加される……薬を売っていただけるのはありがたいが、値段を聞くのは怖いな。


 しかしコカトリスか、体は鳥で尻尾が蛇の魔物だったか、嘴の攻撃を受けると石化、尻尾の蛇は猛毒持ちだったはず……接近戦より魔法を主体にした攻撃が必要か?

「クックドゥルドゥー!!」

「「コッコッコ、コケーッコッコ」」

 今の声は、以前ここに来た時にいたワイルドコッコか? 庭をドスドス走り回る様な音がしているが、何だか増えてないか?


「なななな、何だあれ~っ! コ、コカトリス? 何でここにー?」

 スイムが叫びながら指差す窓の外には、以前より大きくなったようなワイルドコッコのメス2匹と、コカトリスのオスが走り回っている。

 しかも俺の目がおかしいのか、コカトリスの背中にはあの子、レイティア姫が乗っているように見えるのだが……

「レイちゃんってば、すっかりトリスと仲良しねー。魔物って普通は、あんな風に懐かないんだけど」

「アレな、ピーとコッコに完全に尻に尻に敷かれてるからな。その上、魔力たっぷりの美味いエサをくれるサクラやレイには絶対服従してるぞ。俺にはたまに突っかかってくるがな」


 楽しそうに話してるダンジョンマスター達の台詞は、耳に届いてはいるが頭が理解しようとしていない、コカトリスはかなり強い魔物で、俺達でも倒すのに苦労するはずの……

「……ありえん!……」

「なあ、嘘だろ。ラン、アレは俺の目がおかしいんだって笑ってくれよ」

 バイクとスイムの言葉に、2人にもあの光景が見えているのだと確信するが、俺だって信じられないんだ。

 だいたいノースダンジョンにコカトリスっていたか?


「あ~、ピーとコッコが婿探ししてたんだがな、あいつらより強い鳥系魔物のオスはノースにはいなかったから、試しにウエストのコカトリスの巣に連れてったらトリスを気に入って連れてきたんだ」

 俺の疑問が顔に出ていたのか、ノースのダンジョンマスターがそう答えてくれたのに、ウエストのダンジョンマスターが反論してる。

「群のボスだったトリスを、2匹がかりでボコボコにして連れてったンじゃない。下位種のメスに負けたオスが群に戻れる訳無かったけど、ピーちゃん達って強すぎない?」

 なんだか、聞いてはいけない事を聞いてしまった様な気がする、ワイルドコッコがコカトリスに勝つ? ありえないだろう。

「だからって、コカトリスの背中に乗って遊ぶ子供とか……」

 スイムの呟きには激しく同意だが、レイティア姫は本当に楽しそうに遊んでいる……ははは、ここは俺達の常識の通用しない場所だったな。


「あ、そうだ。お前らコカトリスと闘った事ないだろ、トリスと戦闘訓練していけよ。アイツ結構強いし、ここなら薬もあるしな」

「そうねー、サクラちゃんが近くにいれば、負けても殺される事はないでしょ」

 乾いた笑いを浮かべる俺達に、ダンジョンマスター達がとんでもない提案をしてくれたのだが。

 確かに初見の魔物と闘うのは危険を伴う、石化なんて厄介な効果付の攻撃をする奴なら尚更だから、訓練が出来るならありがたい、ありがたいんだが……なんだかあのコカトリスはヤバイ気がする。

「アレと戦闘訓練?ワイルドコッコも一緒とか言わないよな」

「……訓練……鬼畜バージョン?……」

「とりあえず、やるだけやってみよう」

 スイムとバイクもそうは言っても、こんなチャンスを棒に振るつもりは無いらしく俺の後について庭に出てきてコカトリス達との戦闘訓練が始まった。


 スタンピードの阻止の為には、なるべく早くウエストダンジョンに向かったほうが良いと、ノースのダンジョンマスターがダンジョンの出口まで転移魔法で送ってくれた。

 王太后様へのレイティア姫の生活の報告と、スタンピードが起こる可能性もついでに話せば、シュバルツ王国では騎士団を使いダンジョンの魔物を狩って対策をとる事になった。

 ウエストダンジョンまでの移動の時間も惜しいからと、これもまたダンジョンマスターが転移魔法で送ってくれる事になったのは、あまりにも俺達が戦闘訓練でズタボロにされた事に対する罪ほろぼしだそうだ。

 いわく、あの場にいたワイルドコッコとコカトリスの3匹からなる群は、ウエストダンジョン20階層にいるすべての群を合わせたより強かったと……ははは、何度死んだと思ったか。

スイム「何で俺、生きてるのかな? 今、絶対死んでたよな」

バイク「……石化解除薬……間に合った」

桜「トリス、石化攻撃はダメよ! 危ないでしょ」

ラン「いや、危ないではすまないんだが……」

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