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ダンジョンの隠し部屋でのんびり生活  作者: 泪
ダンジョンの秋
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恐ろしい未来の予感ととんでもない贈り物

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。


 台風が近付いてきましたね、皆様に被害がありませんようお祈りします。

「スタンピードが起こるわよ、それも同時に何カ所も」

 ウエストダンジョンのダンジョンマスターの言葉に、冷や汗が止まらない……昔、新しいダンジョンが出来て冒険者がそちらに集中したせいで、古いダンジョンから魔物が溢れ近くの町が壊滅したと、先輩冒険者から聞いた事がある。

 その為に冒険者ギルドが出来て、冒険者が一ヶ所のダンジョンに集中しないように調整するようになったはずだ、ギルドは何をしてるんだ。


「……スタンピード……町が消える……」

「騎士団は王族や貴族しか守らないよな、ようやく病の影響が薄れてきたってのに」

 バイクやスイムの言葉に恐ろしい未来を想像してしまう、普通の町や村の人間ではゴブリン相手でも集団で襲われたら勝てないだろう。

 しかも今は収穫時期、畑の作物を荒らされたら……冬を越す事が出来ない人間が大勢でる。


「そこであなた達にお願いがあるの。うちのダンジョンのエルフ捜索に加わって、36階でエルフの親子がホールイーターに食われたのを見たって証言してほしいのよ」

 ウエストのダンジョンマスターは何を言ってるんだ?エルフはいなかったって、さっき自分が言ったじゃないか。

「彼女達は、エルフではなかったのでしょう?それに、俺達の証言だけで、奴隷商人達が納得するとはおもえません」

「エルフが最初から存在しなかったと納得させるのは、悪魔の証明じゃないけど絶対無理よ。なら、エルフはいたけど魔物に食われて死んだ、と言ったほうが信憑性が高いとおもわない?その上で、スタンピードの危険性を示唆してもらえば、ね」

 確かに、エルフが最初から存在しなかったと認めさせるのには、ウエストダンジョンの完全攻略でもしない限り無理だろう。


 だが、俺達の言葉を王族や貴族が信用するか?

 欲に目が眩んで隠しているとか疑われそうだ、それにそこまで考えてたなら、なぜ自分がしない?

「なぜ俺達なのですか?あなた方なら、人間の振りをしてエルフ捜索隊に紛れ込む事も、王族や貴族を丸め込む事も出来るでしょう」

 そう言った途端、ノースのダンジョンマスターに怒鳴られた。

「勘違いするなよ! 人間が原因で起こる災害は、お前ら人間が何とかするべきだろ!」

 その言葉にはっとする、俺達に似た姿をしていてもダンジョンマスター達は人間ではない、別にスタンピードが起こって町や村が壊滅しても構わないだ。

「あなた達はAランクの冒険者として、ある程度名前も顔も売れてるでしょ。そのあなた達の証言なら、ある程度の効果もあるはずよ」

 ウエストのダンジョンマスターが、優しげな顔でそう言ってるが本心はダンジョン内の冒険者が多すぎて鬱陶しいって事なのかもな。

 とはいえ、スタンピードが起こる可能性を放っておく訳にはいかない、バイクとスイムも覚悟を決めた顔で頷いている、

「分かりました、やってみます。ただ、俺達がそう証言するだけで納得する人間は、多くは無いと思いますが」


「ありがとう、こちらも手助けはするわよ。エルフの幻影を出して、他の冒険者に追いかけさせるわね。まあ、20階層以上に進む冒険者はほとんどいないでしょうけど、その上でエルフの幻影が装備していた上着をあなた達が証拠として出せば信憑性もでるでしょ」

「それは大変ありがたいのですが、出来ればもう一組位は目撃者が欲しいですね、俺達がエルフを捕まえて隠しているとの疑惑を向けられそうなので」

 強欲な奴隷商人が、俺達の証言を鵜呑みにする訳無いからな……

それに今からウエストダンジョンに行って間に合うのか?

「もう一組ね~、それは現地で探してくれる? ただ、今回は前回のダンジョン攻略より厳しいと思うから頑張ってね。あ、そうだ、これをあげる役に立つはずよ」


 ウエストのダンジョンマスターから手渡されたのは、3人分の外套とブーツ。

「え?前回より厳しいって、どんだけ……」

 驚愕の表情を浮かべたスイムの呟きに、ウエストのダンジョンマスターはにこやかに爆弾を落とす。

「36階のセーフティエリアにオタマジャクシがいたでしょう、アレが手のひらサイズの猛毒の蛙に成長して、湿地のいたる所にいるの、この外套とブーツなら蛙の毒にもビッグフロッグの粘液攻撃も効かないから」

 ちょっと待ってくれ、猛毒の蛙?あのオタマジャクシの量を考えると…… 

「うっ……想像しただけで吐き気が、だが行かなければスタンピードが……」

「いーやーだー、毒蛙がうぞうぞいる湿地なんて行きたくねえ~」

「……蛙……嫌い」

 バイクやスイムもアレを思い出したのか、悲壮な顔で呻いている、そんな状況なら確かにこの外套とブーツは役に立つだろうが、どうせなら毒蛙を居なくして欲しかった。


「ちっ、しょうがねぇな。これもおまけでくれてやる。感謝しろよ」

 俺達の落ち込み具合が酷かったせいか、ノースのダンジョンマスターからバッグが投げつけられた。

「え?あの、これは?」

「マジックバッグだ。サクラの作った飯が10日分入ってる、これでダンジョン内でも熱々の美味い飯が食えるぞ、容量もデカイから上手くつかえよ」

 マジックバッグ?サクラさんの料理が熱々?慌てて中身を確認して思わず叫んでしまった。

「何ですかこの容量は!! その上中身の時間停止機能付のマジックバッグなんて国宝級ですよ。しかも料理だけじゃ無くてポーションに解毒薬、石化解除薬まで入ってるじゃないですか」


「国宝級?バレなきゃ良いだろバレなきゃ、内容量なんて手突っ込んでみなけりゃ分かんねえんだ、要らなきゃ返せ」

 ダンジョンマスターのその台詞に、バイクとスイムが俺の両肩を掴みぶんぶん首を振っている、こんな貴重なマジックバッグを返すような馬鹿な真似はしないから、心配するな。

「ありがたく使わせていただきます。貴重な物をありがとうございました」

 ただ、中身の時間停止機能なんて聞いた事も無い、熱々の料理は嬉しいがこれを出して食べる時は気を付けないとまずいな。

 しかも石化解除薬って、石化病の特効薬だよな……ダンジョンの宝箱からしか手に入らないから、体が徐々に石になって最終的に死に至る石化病患者にとって喉から手が出るほど欲しがる奇跡の薬、なんでこんな物まで入ってるんだ?




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