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ダンジョンの隠し部屋でのんびり生活  作者: 泪
ダンジョンの秋
40/54

ウエストダンジョン攻略

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。

 今回ちょっとグロいと言うか気持ち悪い表現が有ります、オタマジャクシが苦手な人は注意して下さい。

「あっちーなぁ、誰だよウエストダンジョンは木の上にあるダンジョンだから、夏でも風が通って涼しいとか言ってたのは」

「「お・ま・え・だ!!」」

 普段は無口なバイクまでが俺と一緒になってそう言ってスイムの頭を叩くのは、今いる階が暑い上に湿度の高い湿地帯になっているからだろう。

 膝付近まである湿地の泥の中を進むのは、泥に足を取られて平地の倍は疲れる上、装備の中は湿気や汗でびしょ濡れ、ましてやタンカーのバイクは俺達の中で一番の重装備だからな……


 俺達トライアスラは3年に1度、持ち回りで開催される「世界王族会議」に出席される王太后様の旅の間の護衛として西の「リュミエール帝国」まで来ていた。

 普通は冒険者が王族の護衛なんてあり得ないんだが、あの病のせいで軍内部も人手不足で仕方なくって事らしい。

 まあ、さすがに王族会議中の護衛は軍がやってくれるから、俺達は会議が行われている1ヶ月はやることがなく、せっかくここまで来たのだからとウエストダンジョンに潜ることにした。


 地下に向かって広がるノースダンジョンに対して、このウエストダンジョンは3本の絡まりあって生えている巨木の根元にある洞から、木の中や枝の上を空に向かって広がっている。

 巨木とは言ったものの、同じ種類の木は世界中の何処にも存在しない上、絡まりあった3本の木の周りを一周するだけで大人が歩いて5日かかり、木の天辺は常に雲がかかっているためどの位の高さがあるのかも分からない。

 その上、木の表面はつるつると硬化していて、斧で傷つける事も火で燃やす事も出来ない、木の形をしたダンジョンとしか言い様のないものだったりする。


「うげ~、汗と泥でベタベタだぜ。何で木の上35階層に湿地帯なんかがあるんだよ」

「……うるさい……よけいに暑くなる……」

 ノースダンジョン内が夏は外より暑く冬は外より寒いのは知っていたが、まさかウエストダンジョンもだとはな……しかも30階層より先は毎日構造の変わる鬼畜仕様、ここのダンジョンマスターも竜とか言わないよな、あはははは……ん?

「スイム、左奥にあるのセーフティエリアじゃないか?」

「マジで?やった、乾いた場所で休める、冷たい湧き水飲みてぇ……前の階のセーフティエリアの湧き水、熱湯って酷えよなぁ!ここのダンジョンマスター絶対性格悪い」

「水、あるだけまし……っ、右から蛙!!」


 バイクの言葉に即座に反応したスイムが、泥の中から飛び出した子牛程の大きさの巨大な蛙型魔物ビッグケローにナイフを投げるものの、ドロリとした粘液に包まれた皮膚に弾かれてしまう。

 ナイフが投げられたのを片目で見ながらも気にしなかったビッグケローは、空中で俺の方に舌を伸ばして攻撃してきたのでそれを長剣で切ろうとするが、器用に舌の軌道を変えて避けられた。

 しかも攻撃の為ビッグケローに近付いていた俺は、そいつの着地の衝撃に飛び散った湿地の泥とビッグケローの粘液の混じったものを頭からかぶってしまう。


「うわぁ~最悪……汚い上に臭そう」

 スイム聞こえてるぞ、無駄口たたいてないで火炎魔法の詠唱を始めろ……くそったれ、痺れてきやがった。

「粘液に麻痺毒があるぞ、気を付けろ!」

 そう叫んでビッグケローから距離をとると、二人も素早く離れた、麻痺毒の解毒薬はまだ有ったはずだが今それを飲む余裕は無い、動けなくなる前にこいつを片付けないとまずい。

 バイクと二人で高速で繰り出される舌の攻撃を避けたりいなしたりしながら、ビッグケローの注意を引きつける、スイムの詠唱が終わったのを横目で確認し目配せした俺達が下がった瞬間、大きく開けた口の中にスイムの火炎魔法が飛び込んだ。

 さすがに体の中から焼かれるのは効いたのか、グギャーと叫びながらドロップの上で悶えるビッグケローにバイクが止めをさしたのを確認して解毒薬を飲んだ。


 薬が効いて痺れが解消してきたので慎重に移動を開始する、セーフティエリアは目と鼻の先に見えているものの、この湿地には所々底なし沼の様に深くなっている場所があり、そこからあのビッグケローが飛び出してきたり魚型魔物のホールイーターが口を開けて待っていたりする。

 見た目では深い場所はまるっきり見分けがつかないから、急いでいても慎重に成らざるをえない、一歩足を踏み出した先がホールイーターの口の中だなんてしゃれにならないからな。


 やっとの思いでセーフティエリアにたどり着き、久しぶりの乾いた土の上で休んでいると、

「うぎゃー!!気持ち悪ぃ~……勘弁してくれよ、もう」

 俺達の中にはクリーンの魔法を使える者がいないので、泥を洗い流す為の水を汲みに奥に行ったスイムの叫び声が聞こえた。

 湧き水の泉付近で腰を抜かして座り込んだスイムのそばまで行って目線の先を追えば、直径1メトル程の泉は大小様々な真っ黒いオタマジャクシで埋め尽くされいた。

「これは、確かに気持ち悪いな……」

「……うえっ……すまん、これは無理……」

 口を押さえてその場をそそくさと逃げ出したバイクを責める気はない、なんせ水面はビチビチとのたうつオタマジャクシで覆わその粘液で泡立っている……しかも共食いをしているものまでいて、たとえその下に湧き水があったとしても体を洗うのに使う気にもなれなかった。


「ラン、ドロドロのお前には言いにくいんだけどさ、この水使えねぇわ。こいつら毒持ってるみたいで、湧き水全部毒水になってるっぽい」

「ははははは……」

 スイムのその台詞にはもう、乾いた笑い声しか出なかった。

「なぁ、もう帰るか?これ以上は危険だろ」

「賛成~!!帰ろ帰ろ、もうこんなダンジョン嫌だ。これならまだノースダンジョンの方がまし」

「……帰る!」

 全員一致で帰る事にはなったものの、今日は疲れ果てていたので一晩休憩してから引き返す事にした。

 夜中に泉のオタマジャクシの親蛙が、新しく卵を産む為に大量にセーフティエリアに入りこんで来たりしてあまり休め無かった俺達は、

「「「もう二度と来るか、こんなダンジョン!!!」」」

 と言って帰ったんだが、その時はまさかもう一度このダンジョンに挑戦する事になるとは、思いもしていなかった。




その頃、とある場所ではこんな会話が……

「うん?アイツらが何でここに居るんだ?」

「見たことない冒険者ね。あら?35階、今までの最高記録じゃない……って言うかレオン、アイツら知ってるの?」

「普段はノースダンジョンの攻略してるヤツらでな、レイを逃がす為に命がけでサクラの所にまで来ようとしてたな。人間としては、珍しくまともなヤツらだ」

「そう……アイツらあの子達の護衛に使えるかも?」

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