かき氷祭り
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
砂浜にテーブルを出して美味しいBBQをいただいた後は、お待ちかねのおやつタイムです。
奥の建物から袋を持ってきてもらい、テーブルの上に袋から練乳と苺のシロップ2種類の瓶とドワーフさんにお願いして作ってもらったかき氷機を並べます。
苺シロップは春にジャムを作った時に一緒に作って水やモウモウ乳で割ってジュース代わりにしたら、レイちゃんのお気に入りになって大量にストックしてあったし、苺シロップには練乳がないとねとモウモウ乳と砂糖を煮つめて練乳も作ってきました。
「サクラ様、言われたとおりに飲み水で氷を作って適当な大きさに砕いておきましたが、これをどうするのでしょうか?」
ドゥエさんが大きなタライにいっぱいの氷と人数分の器を持ってきてくれたので、早速かき氷機に氷をセットしてハンドルを回すと日本のお店で食べたような、真っ白でふわふわの雪みたいなかき氷が器の上に山になっていきます。
あ、先にシロップ入れるの忘れてた……途中で気が付いてシロップをかけようと顔を上げたら、テーブルの周りを人魚族の皆さんが取り囲んで私の手元を覗きこんでました。
「サクラ様これは氷ですの?」
「ふわふわですわ~、どうしたらこうなるのかしら~?」
「ただの水を氷にして砕いても、甘くはならないはずですよね?」
興味津々で次々質問されるけど、早く食べないと溶けちゃうからシロップをかけてドゥエさんに渡してしまおう。
「かき氷です、さあ召し上がれ。甘いのはこのベリルのシロップですよ、白い方はモウモウ乳と砂糖を煮つめて作った練乳です、お好みでかけて食べ比べて下さいね」
赤い苺シロップの上に白い練乳をとろっとかけたかき氷に、スプーンをそっと差し込んで掬い一口食べたドゥエさんが、
「美味し~い!甘酸っぱいベリルにこの練乳ですか、これの濃厚な甘さとコクが絡んで最高ですわ」
と叫んだ途端、ドゥエさんを囲んでいた人達が獲物を狙う目でこちらを振り返り騒ぎ始めます……ちょっとドゥエさん食べてないでこの人達抑えて下さいよ。
「早く、早く、私もそれ食べたいわ」
「何言ってるの、次は私よ」
「ちょっと押さないでよ、次にもらうのは私なんだから」
「うるせぇ!!ちゃんと全員分あるんだから黙って並べ、だいたいサクラだけ働かせてねえで誰か手伝えよ」
きゃいきゃいと騒いでた人魚族の皆さんは、レオンの一喝でしゅんとなってしまった。
私は助かったけど、あっちの若い子泣きそうになってない?どうしようと思っていたら、後ろから来たウーノさんが肩を叩いてウインクする。
「サクラちゃん、それがこの前言ってたおやつ?美味しそうね、お手伝いするから私も味見させて~。はいはいあんた達はさっさと並ぶ、私も早く食べたいんだから」
明るくそう言って、かき氷機を回すのを代わってくれたウーノさんが次々作るかき氷に、シロップをかけて並んでる人に渡していきます。
レオンに叱られたせいか始めはしゅんとして並んでいた人達も、先に食べた人からキャアキャア歓声が上がると楽しそうな表情になってきたので一安心。
自分の分を食べ終えて手伝いにきてくれたドゥエさんと交代して、レオンとレイちゃんのかき氷を持ってその場を離れると、後ろからウーノさんの呆れたような声でドゥエさんを叱るのが聞こえてきた。
「ちょっとドゥエ、あなた長老なんだからちゃんと下の子達抑えとかなきゃダメじゃない、自分が食べることに夢中で黒竜様を怒らせるなんて、耄碌したんじゃない?」
「だって、せっかくの甘味が溶けてしまったら勿体ないでしょう……」
まあレオンも本気で怒った訳じゃないし、ドゥエさん達の方はウーノさんが上手くフォローしてくれそうだから大丈夫よね。
「レオン、レイちゃん私達もおやつにしましょう」
潮だまりを覗きこんでの生き物探してた二人に声をかけると、レオンの手を引いてレイちゃんが走ってくる。
「かーしゃま、かにしゃんとへんなのいた~」
楽しそうに報告してくれるのを見て、海に連れて来れて良かったな~と思ってると、レオンが変な顔で私の手元を見ていた。
そうだ溶ける前に食べちゃわなきゃ、砂浜に座ったレイちゃんには練乳苺のかき氷を、その隣に座ったレオンにはシロップ無しのかき氷を渡すと情けない顔で見上げてくる。
「サクラ?俺の何もかかってないぞ。俺も手伝ってないのに、あいつら怒鳴ったから怒ってるのか?」
「ふふふ、レイちゃんが巻き込まれないように離れてたんでしょ、それに実際助かったから怒る訳ないわ。レオンのは特別製なの、これをかけてさあ召し上がれ」
微笑んでカバンから取り出した小瓶の中身を氷にかけると、ふわんとアルコール分を含んだ良い香りが広がります。
日本のお酒好きの友人に大好評だった自家製の梅酒がけのかき氷は、レオンの口にもあったみたいで黙々と食べてる。
「かーしゃま、はいあ~ん」
レイちゃんがスプーンにかき氷を乗せて差し出してくれたので、ぱくっといただくと冷たい甘さが口に広がります。
「サクラ、こっちもほらあ~ん」
レオンが差し出してくれた梅酒かき氷は、いつの間にか傍に来ていたブルーノさんが食べてしまいました。
「うめぇ~、なんだこれ!甘い酒と氷か?サクラ俺の分は?」
……あの、ブルーノさん後ろ後ろ、レオンが怒ってますよぅ。
「おい脳筋、てめぇ何しやがる。これはサクラが俺の為に特別に作ったかき氷だぞ、てめぇに食わせる分は無い」
「レオンだけ狡いぞ、俺も美味い物が食いたい」
あっという間にブルーノさんとレオンの追いかけっこが始まってしまいました、レイちゃん巻き込まれないようにウーノさん達の方に避難しようね。
「サクラ様、先程はご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。皆久しぶりの甘味に我を忘れてしまった様で……」
テーブルの方に戻ると、ドゥエさん達から謝罪されました、前にドゥエさんも300年ぶりの甘味って言ってたもね、皆さんがはしゃぐのも仕方ないよね。
「気にしないで下さいね、それよりかき氷はどうでしたか?シロップは果物と砂糖を一緒に煮詰めれば作れますし、氷は魔法で作れるそうなので割と簡単に作れると思うのですが」
そう言ってみると、みんな目を輝かせながら話しだします。
「氷が削っただけで、こんな食感になるなんて。この機械は特別な魔道具なのですか?」
「そうですね、長老様以外ならばシロップも簡単に作れるとおもいますわ、砂糖も手に入りましたし」
「まさかエルフが海草と果物を交換してくれるとは、思いもしなかったですが良い取引が出来ました」
そう言えばブランさんに昆布だしの取り方を教えたら、昆布だしがエルフに大好評過ぎて私達が海にいくまで待てないからと、先に人魚族と取引を始めたらしいんです。
砂糖と果物があれば色々お菓子を作れるはずだし、良かったなあ……ドゥエさんは、誰かに作ってもらわないとダメみたいだけど。
「かき氷機はドワーフの里にお願いして作ってもらいました、これは皆さんに差し上げるので壊れた時や自分の分が欲しい方はドワーフの里で聞いてみて下さいね」
「「「ありがとうございます、大切に使いますね」」」
その後もシロップの作り方などを説明していると、げっそりした顔でレオンが帰ってきた。
「脳筋の相手は疲れる。サクラ、そろそろ帰ろう」
さっきまで人魚族の若い子達と砂浜で貝殻を拾っていたレイちゃんも、そろそろおねむの様でレオンに抱き上げられて船をこいでます。
挨拶をしたらノースダンジョンのお家に帰ろう、今日は楽しかったねレイちゃん、レオンも連れて来てくれてありがとうね。