モウモウ乳は美味しいのです
いつも読んでいたたき、ありがとうございます。
「良い匂いがするにゃ~、お腹ペッコペコにゃ」
「ぐーぎゅるぎゅる~、俺も腹ペコっす~」
腹ペコさん達が台所を覗きに来てるし、早く運んでご飯にしましょ。
「もうすぐ出来るから、テーブルで待っててね~」
と声をかけたら、シュバッとシバさん達が姿を消した、素早い(笑)
その後ろにいたらしいレイちゃんが、レオンの手を引っ張りながら、
「とーしゃまあのね、レイちゃんおてつだいしたの~。こうやって、ふっりふっりにゃって」
お尻フリフリダンスを再演してます、あ、レオンがしゃがみこんで震えてる、
「なんだそれ、かっわいいな~レイ。夜にゆっくりもう一度やって見せてくれるか?」
それ良い、デジカメで動画撮れるかなぁ?可愛い映像を残しておきたいな。
「サラダを作る間ニャタロウ君は鍋をかき混ぜててくれる?モウモウ乳も入ってるから焦げやすいの」
とお願いしてプリンを冷蔵庫に移してから、玉ねぎを刻んでると隣から小さな声で、
「ふみゃ~目が痛いみゃ、でも我慢みゃ、男の子はこんな事で泣かないみゃ」
何このつぶやき、可愛い。この前レオンに包丁といでもらって切れ味良くなったから、私はあんまり目にきてないんだけど、獣人は鼻がいいから……玉ねぎが目にしみるのは生理現象だから男の子でも泣いていいんだよ。
スライスした玉ねぎを氷水でさらしてる隙に、トースターでパンを温めてバターを皿に盛ってテーブルへ。
玉ねぎも冷えたので水気を絞ってる間に、クリームシチューも良い感じになったみたい、
「シチューが温まったみゃ、これは鍋ごと持ってくみゃ?」
「お願いします、重いから足元気をつけてね」
玉ねぎサラダもテーブルに運んだら、さぁ召し上がれ。
「ふにゃ~良い匂いにゃ……何にゃ?この真っ白いスープは!」
「もしかして、モウモウ乳が入ってるっすか?」
クリームシチューのお皿を前に固まるシバさんとニャニャちゃんのよこで、ニコニコしながらシチューの匂いを嗅いだニャタロウ君は、
「うん、モウモウ乳臭さは感じないみゃ。ちょっと見た目はビックリするけど……はむっ、むぐむぐ……美味しいみゃ~」
レオンやレイちゃんも美味しそうに食べる様子を見て、二人もおそるおそるスプーンを口にいれると、
「あれ?美味いっす。里で食べるスープより濃厚で、これ好きっす」
「臭くないにゃ!パンを浸して食べると、とろっとしてて美味しいにゃ」
気に入ってくれたみたいで、かなりの勢いでお皿の中身が減っていく。
「しろいすーぷおいしーの。レイちゃんもこれすき」
うんうん、レイちゃんも気に入ってくれたみたいだし、レオンのお皿はもう空ね。
スッと差し出されたお皿を受け取って、おかわりをよそっていると、
「あの~、俺もおかわりいいっすか?」
「ニャニャもおかわりにゃ!」
「僕もおかわりお願いみゃ」
と3枚のお皿が出てきた、ふふふ沢山たべてね。
「かーしゃま、これからいの。レイちゃんもう、いやない」
い、いやないって……玉ねぎサラダのお皿をこちらに押しやってきたけど、生の玉ねぎはレイちゃんにはまだ辛かったかなぁ?
いらないの前にサンドイッチを試してみようよ、切れ目を入れておいたロールパンにバターを塗ってサラダを挟んで、どうかな?
「レイちゃんこれ食べてみようよ、これダメだったらもう食べなくていいよ」
サンドイッチを渡すと、いやいやと首を振って食べようとしない。
「いやないの」
う~んどうしようかなと思ってると、反対側からレオンがレイちゃんの持ってたサンドイッチを、がぶっ……もぐもぐもぐ、
「おっ美味いな、レイが作ったバターが塗ってあるから余計に美味いのかな?」
ニコニコ笑いながら、レイちゃんの頭をなでなでするレオンと半分食べられたパンを見つめ、
「バター?レイちゃんがふりふりした?」
と不思議そうな顔をしてるから、もう一押し、
「そうよさっき作ったバターを塗ったパンに挟んであるから、美味しいよ」
玉ねぎ部分はレオンがほとんど食べたし、大丈夫よね……ぱくっ……もぐもぐ……
「おいしー、からくないよー」
よし、大成功ってシバさん達がポカーンってしてるけど、
「にゃにゃ?……本物の黒竜様にゃ?」
「がぶって……がぶってレイちゃんの手からパンを食べて笑ったみゃ」
「嘘っす、嘘っすよ、人間達に暗黒邪悪竜なんて呼ばれた黒竜様がこんな……レイちゃんにデレデレなんて」
……暗黒邪悪竜?シバさんから変な単語が聞こえてきたけど、家ではレオンはこれが平常運転ですよ、慣れて下さいね。
驚愕の表情でぼーっとしてる3人の口に、にやにや笑いながらレオンがバターを塗ったパンを突っ込んだ、
「「「うぐっ」」」
いきなり口に詰めこまれたパンに目を剥いていた3人も、バターの味に気がついたみたい、
「黒竜様酷いのにゃ、でもこのパン美味しいにゃ」
「美味いっす~、これ本当にモウモウ乳のバターっすか?」
「そうみゃ、さっき作ったバターみゃ。これなら里の皆も喜んでくれるみゃ」
ニャタロウ君が本当に嬉しそうな顔で笑ってる、これで里のモウモウ乳の消費が増えるといいね、とレオンと二人顔を見合せ微笑んでると向かいに座る3人が又、ムンクの人みたいになってた。
さて、皆食べ終わったみたいなので、プリンの出番です。
シバさん達にお皿を流しに運んでもらってる間に、冷蔵庫から冷え冷えのプリンを取り出して、竹串で容器の外周を一周させてから、お皿の上に裏返して……ぷるる~ん、トロッとカラメルが流れ落ちるモウモウ乳プリンの出来上がり。
あら?シバさん達3人の目がプリンに釘付けね……すいっ……すいっ……
プリンをのせたお皿を左右に動かすと、皆の顔が同じ方向を向く、日本の動画サイトでも猫がこんな風にシンクロして動く映像があったなあ。
遊ぶのは程々にして、次々とプリンをお皿に出していくと、はっと気付いたシバさん達がテーブルに運んでくれる、
「すごいみゃ!プルプルみゃ、モウモウ乳は蒸すとこんなプルプルになるみゃ?」
目をキラキラさせてプリンを見つめるニャタロウ君には悪いけど、
「モウモウ乳を蒸すだけだと固まらないわよ、卵を入れないとね」
「卵がプルプルの素みゃ?サクラちゃんは物知りみゃ~」
物知り……日本では常識だけど、獣人族はダンジョンの中の生活が長いから、料理の発展があまりないのね、調味料は基本塩のみで料理方も焼くか煮るだけだって聞いてるし。
流しの下からラム酒の小瓶を出して最後のプリンにひとたらし、レオン用はラム香る大人プリンです、さあ冷え冷えの内にいただきましょう。
プリンを一口食べた途端、ニャニャちゃんの尻尾がシビビッと椅子の後ろで立ち上がって震えてる、シバさんの尻尾もブンブン振れてるから気に入ってもらえたみたい。
「プリンのお味はどう?モウモウ乳の匂いは気にならない?」
シバさん達に一応匂いの確認をすると、
「ふるふる美味いにゃ~!ぜんぜん臭くないにゃ」
「冷たくて甘くて美味いっす、このプルプルがクセになるっす」
大丈夫みたいね、レイちゃんもニコニコ笑いながら食べてるし、
「サクラ、これ俺のだけ酒がかかってるのか?」
あ、気がついた?
「そう、レオンのはラム酒を最後にかけた特製品よ」
と言うと、なんだか嬉しそうな顔でプリンをスプーンにすくうと、
「美味いよ、サクラも食べてみろよ。ほら、あーん」
ってシバさん達が見てる、見てるから、
「かーしゃま、たべないの?じゃあ、レイちゃんがたべる」
ラム酒かかってるからレイちゃんはダメよ、レオンもにやにや笑わないでよ。
シバさん達、赤い顔で横向いて見ないふりしてくれてるし……ぱくっ。
「美味いだろ」
美味しいけど、恥ずかしいよ。
普段見るのとは違う様子のレオンにビックリし過ぎたのか、シバさん達は慌ててプリンを食べ終えて帰ってしまった。
バターとシチューとプリンで、獣人族の皆さんのモウモウ乳嫌いが少しでも減ると良いなあ。
あ、プリンの食べ比べ忘れてたみゃ……黒竜様のデレデレショックのせいみゃ……ビックリしたみゃ……あーんって……