ポーションとTKG
元の世界の女神様から頂いた手紙には、家にあった生鮮食品以外の全ての物を無くなり次第補充してくれれるという、とんでもなく有難い話が書いてあった。
トイレットペーパー等の生活必需品やお米、本数制限有りとはいえ料理用の日本酒、ワイン、ビールに製菓用のラム酒にブランデー迄……竜は酒好きだからレオンさんには酒類の事は秘密にねって、こんなに厚待遇で良いのかしら?
「おーいサクラー、地球の女神から送ってきたこの木、此処に植えちまって良いんだよな?」
まったく、地球の女神も面倒癖ーもん送ってきやがって、魔力石の礼ならもっと美味い飯とか酒とか酒とか送ってくれりゃあ良いもんを……
「レオンさん待って、此処に植えても枯れてしまわない?太陽も水もないし、環境が違いすぎるんだけど」
「ダンジョンマスター舐めんなよ、此処でも枯れねえよ。35階にある獣人族の隠れ里では、四季もあるし普通に野菜作って生活してるぞ」
「本当?じゃあ此処にも四季を創る事が出来る?この桜の木は季節によって色々な姿を見せるの」
「別に構わねぇけど、暑いのや寒いの面倒くさくねえのかサクラ?風邪ひいたりすんなよ、弱っちいんだから」
ふふふ、レオンさん口は悪いけど優しいんだよね。
「余った場所に薬草でも植えるか、ポーションの作り方教えるから自分で作って体調悪くなったら飲んどけよ」
ほらね、お兄ちゃんがいたらこんな感じかな?
「ポーションの作り方は簡単だ、此処に生える草は全部薬草にしといたから、こうやって引っこ抜いて葉っぱだけ磨り潰して水で煮る、こんくらいの色になったら出来上がりだ」
……レオンさん、ワイルドで大雑把だけど、これで良いの?
「葉っぱは布で濾した方が良いよね?後1回の量はどのくらいが目安なの?」
「別に布で濾さなくても俺は気にしねぇけど、サクラが気になるなら好きにすりゃあ良い、量は大体こんくらいだな」
う~ん100cc位かな、ペットボトルの空き容器に詰めて冷蔵庫に入れておこう。
「あー働いたら腹へった、サクラ~飯食わせろ」
「はい、じゃあ今から作りますね、何か食べたいもの有りますか?」
「今から仕事だから直ぐ食べられる簡単な物でいいぞ」
直ぐ食べられる簡単で美味しいもの、ご飯は炊きたてだし冷蔵庫の中身は……TKG、卵がまだ新しいから美味しいはず
私は醤油じゃなくポン酢で食べるのが好きだけど、はじめは基本のだし醤油が良いかな?
「ワイルドコッコの卵?何でこんな物がここにあるんだ?て言うか、こんなもんどうすんだよ」
テーブルに運んだものをレオンさんが見て、ビックリした顔をしてる
「ワイルドコッコ?これは元の世界の鶏の卵よ、こうやって食べると美味しいの」
炊きたて熱々の丼ご飯の天辺を少し凹ませて、そこに生卵を割り入れる、その上からだし醤油をタラタラっとかけて出来上がり。
「さぁレオンさん、このままかき混ぜて一気に食べちゃって下さい」
「サクラ、これ生じゃねえか!こんなもん食ったら俺でも腹壊すぞ」
レオンさんが嫌そうな顔で丼を見てる。早く食べないとふやけちゃう~
「大丈夫です!新鮮な卵は安全だし美味しいの、元の世界では、子供だって食べてましたから、それにお腹壊してもさっき作ったポーションがあるでしょ」
おいおいサクラ、お前性格変わってきてねぇか?なんて思いながら卵の黄身にスプーンをツプリと突き刺すとトロリと流れ出した黄身が白い飯に絡んで何だか美味そうに見えてきた。
一口食べたら、後は夢中になって掻き込むように食べる。
「美味い、甘みのある飯に濃厚な黄身が絡んで塩気となんか深みのある汁と混ざると何とも言えねぇ美味さだ、もう一杯くれ」
「はい、今度はだし醤油のかわりにポン酢にしてみませんか?ちょっと酸味が加わって又味が変わりますよ」
「何?じゃあそれで……これも美味い!」
結局、レオンさんは卵かけご飯を丼5杯食べてお仕事に行ってしまいました、食事は1日1食で良いそうですが……どうしよう、卵って生鮮食品だから補充されなかった。
「サクラ、ワイルドコッコ狩ってきたぞ。肉要るだろ、卵も有ったから持ってきたぞ」
夕方レオンさんが顔をだしてくれたのですが、その手に持っているのは何ですか?
凶悪な顔つきで甲斐犬位の大きさの鳥3羽です。
「レオンさんすいません、私解体なんて出来ません。出来たら精肉迄していただけませんか?」
「はぁ、面倒癖ーな。ま、サクラには無理か魔力ないし弱っちいもんな」
呆れた様な顔をしながらも、解体の為家の裏に向かうレオンさんから2個の卵を預かる。
何時産んだ卵だろう?
流石にこれは生じゃまずいわよね何て思っていたら、卵からコツコツと音がしてヒヨコが出てきた。
え、卵から出るの早すぎない?
ワイルドコッコって魔物?
まだ小さいヒヨコだけど、此処に置いて逃げた方が良いの?
何て考えてる間に、さっきレオンさんが持ってた大人サイズになってる~、成長早すぎ!
「きゃーっレオンさん、助けてー」
慌てて家の裏に向かって走ると、ワイルドコッコも追いかけてくる。
サクラ?なんでワイルドコッコに追いかけられてんだ?
「卵からワイルドコッコが孵ってしまいました~」
あ……この隠し部屋魔力高過ぎたからか、魔物も魔力吸収して成長するからな。
それにアレ、サクラを襲うつもり無いよな、刷り込みか?
ピーちゃんとコッコちゃんと名前をつけ、ワイルドコッコ達は此処で飼う事になりました。
メスだったので毎日卵を1羽につき2個ずつ産んでくれる上に、何故か私になついてくれたので用心棒に丁度良いとレオンさんが……
これで新鮮な卵も毎日手に入ります、良かった。
後からレオンさんがこの部屋の魔力を、卵がすぐ孵らない程度に調整してくれました(笑)