ニャタロウの悩みと里の大人の黒歴史
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僕の名前はニャタロウ。
僕の家族はここ獣人族の里で、モウモウを飼ってお肉やモウモウ乳を売って生活しているみゃ。
モウモウはビックホーンの角と体を小さくしたような魔物みゃ、ビックホーンは気が荒くて危険な魔物だけどモウモウは大人しくて草食の魔物みゃ、よく見ると大きな目が可愛いのみゃ。
里の人達はダンジョンの中で狩ってきた魔物の肉を食べるけど、モウモウのお肉も大好きみゃ。
でもね、里の人達にはモウモウ乳は人気が無いみゃ、栄養満点だけどみんなは臭いが嫌だって言うんだみゃ。
今年は妊娠中のモウモウが何時もより多いから、モウモウ乳がいっぱい搾れるみゃ、みんなが飲んでくれないと捨てる事になるみゃ。
それは悲しいみゃ、みんなどうしたらモウモウ乳を飲んでくれるかみゃ~。
「ニャタロウ~、山までグングンの若木蹴っ飛ばしに行くにゃ~」
「ニャニャ蹴っ飛ばすんじゃなくて、収穫してサクラちゃんの所に持っていくっすよ」
モウモウ達のお世話をしていたら、ニャニャが大きな声をあげながら走ってきた。
「ニャニャもシバもおはようみゃ。グングンの若木なんて持ってって何するみゃ?」
何処から走って来たのか、ゼイゼイと荒い息をついている2人に質問すると、
「こないだ黒竜様が里に来た時、グングンの若木が欲しいって何本か持ってったっす。それを使ってサクラちゃんが美味しい料理を作ったって黒竜様が自慢して、余ってたらもっと欲しいって言われたっす」
春に若木がでるグングンは、その名前の通りあっという間に成長するみゃ、ただ大きくなっても中が空洞だから木の代わりに使うには弱いし、使い道もないのに放っておくとどんどん増えて困るから若木の内に少しでも間引きするのみゃ。
だから今までグングンの若木は、里の子供達が狩の練習や遊びで蹴り倒してたみゃ。
「食べる物が無かった頃は、グングンの若木も食ってみた事があるのじゃが、大きい物は硬くて歯がたたないし小さい物もえぐ味が強くてたべれたもんじゃなかった」
ってオジジが言ってたのを聞いたことがあるみゃ、どうすれば食べれるみゃ?
異世界には特殊な料理に使う魔法があるのかみゃ~?
「黒竜様は、まだ土の上にちょこっとだけ出てる若木の芽を、足の裏で探して掘り出して持って来てくれって言ってたっす」
「土の中から掘り出すなんて面倒にゃ~、蹴り倒したの持って行けばいいにゃ」
なんてニャニャは言ってるけど、黒竜様がわざわざそう言うんだから何か訳があるはずみゃ。
「ニャ~ニャ!里の仕事をする時に、手抜きはダメっす!」
痛いみゃ、シバに叱られて膨れっ面になったニャニャの尻尾がブンブン振られて僕の膝を直撃してるみゃ。
早くニャニャの気を逸らすみゃ、とシバに目で合図を送ると、
「とにかく、サクラちゃんに美味しく料理したグングンの若木を食べさせてもらいに2人も行くっすよ」
……シバ、目的変わってないかみゃ?
「うさきーっく!!」
「蹴り蹴りわぉーん!」
「ゴッツンメェー!」
グングン林は里のチビッ子達が集まっていて騒がしい、みんな必殺技の練習をしていると興奮してついつい自分で考えた技名を叫んでしまうのみゃ。
ここには里の大人達の黒歴史が眠っているみゃ、なんて僕が恥ずかしい思い出と戦っている間に、シバがチビッ子達に声をかけてたみゃ。
「おはようっす。これから黒竜様の所へ持ってくグングンの若木を掘るから、ちょっと場所を空けて欲しいっす」
「あーシバ兄ちゃんだ、おはようわん。黒竜様はこんな物どうするわん?」
騒いでた3人の内、シバの従弟のアキタが不思議そうに聞いてくると、ウサキチが不機嫌そうにダンダンと土を蹴りながら答える。
「黒竜様はこんな物が美味いって言ってたぷきゅ。姉ちゃんがその話を聞いて、これを料理してくれたけど、食べれた物じゃなかったぷきゅー!!」
ウサキチの姉さんは、里一番の料理上手みゃ、そのウサコ姉さんでもグングンの若木は料理出来なかったみゃ?
サクラちゃんは、どんな魔法を使ったみゃ~?
機嫌の悪いウサキチを何とかなだめてると、
「この辺のが今日蹴り倒した物メェー、でもおいらの頭突きしたのはボロボロになっちゃったメェー」
メースケがそう言って指差した先には、粉々になったグングンの若木が……くるくる天然パーマの可愛い見た目に反して羊族の頭突きはかなり強力みゃ。
「ありがとうっす。でも黒竜様には、まだ土の上に出ていない若い芽をって頼まれたっす」
と説明したシバに、アキタが不思議そうに質問する
「えー、そんなのどうやって見つけるわん?」
すると、シバは摺り足で歩き回ってグングンの芽を探していたが、ピタッと立ち止まり
「あったっす!アキタここを一緒に掘るっす」
と言ってあっという間に2人で15センチ位のグングンの若木を掘り出してしまった。
「こうやって足の裏で探すと分かるっす、宝探しみたいで楽しいっすよ、みんなもやってみるっす」
シバの号令に6人全員で探し始めると、あちこちに芽があり、夢中で土を掘ってたみゃ。
土掘りは楽しいみゃ、何だか獣人の血が騒ぐみゃ。
30分位で10本のグングンの若木が掘り出せたみゃ、でもそれとは別に味がどう変わるのか知りたくて、土の上に生えていた小さい物もウサキチの回し蹴りで地面ギリギリの所を綺麗に蹴り折ってもらって3本持っていく事になったみゃ。
う~ん、グングン林迄は一緒に来たけど、サクラちゃんって黒竜様の番だったみゃ。
竜族って番のそばに他のオスが寄ってくると、激怒するはずみゃ。
ニャニャは女の子で、シバはいつも野菜を届けているし、今回も黒竜様の依頼だから良くてもニャタロウまで一緒に行くのはマズイと思うみゃ。
「ニャタロウはモウモウのお世話があるから、もう帰るみゃ。2人共気を付けて行ってくるみゃ」
「一緒に行こうにゃー」
ってニャニャは駄々をこねるけど、シバは困ったような顔でこそっと
「ゴメンっす、ニャタロウは又今、度黒竜様に許可もらったら一緒に行こうっす」
って言って頭をぽふぽふ撫でられたみゃ。
家に帰ってモウモウのお世話をしながら、どうすれば里のみんながモウモウ乳を飲んでくれるか考えるみゃ。
パパとママだって今まで何の努力もして無かった訳じゃないみゃ、子供が飲みやすいように砂糖やハチミツを混ぜてみたり、季節の果物を混ぜたりしたみゃ。
だけど一度スイスイの実の汁を混ぜたら、白い塊と水分に別れてしまって、気持ち悪いって余計に人気が無くなったみゃ。
元々砂糖等を入れたモウモウ乳は大人には甘すぎるって、受けが悪かったらしいみゃ。
前に黒竜様が、外の人間が作ったモウモウ乳のバターやチーズって言う物を持って来てくれたみゃ、里の大人達も美味しい美味しいってたべてたみゃ……だけどパパとママがどんなに頑張っても同じような物は作れなかったみゃ。
グングンの若木まで、美味しい料理にしてしまうサクラちゃんなら何か良い方法を知って無いかみゃー?