お花見とウエディングドレス 3
上中下では終わらなかったので、数字に変えさせてもらいました。
「肉肉肉~、俺は肉が好き~!うぉっこの揚げた肉美味い、ジューシーな肉汁がたまらん」
なんて変な節をつけて歌いながら、唐揚げと八幡巻きを小皿に山盛り取って食べるブルーノさんの隣ではブランさんがタケノコの煮物とブロッコリーのサラダをニコニコしながら食べてる。
「まさかグングンの若木が、こんなに美味しく食べられるなんてね~、このピンクのソースのかかったグリーンフラワーも美味しいわ、後でレシピ教えてね」
「はい、グングンの若木は掘ってすぐに米ぬかを入れて湯がかないと、アクがあってえぐ味がでますから美味しく食べるには下処理が大切なんですよ」
とブランさんに教えてあげると、その横でタケノコご飯のおにぎりを食べてたレッカさんが、
「おや、そんな手間がかかるのかい。道理でドワーフの連中がグングンの若木なんてえぐくって食べれたもんじゃないって言うはずだね」
って、こっちの世界の人もタケノコ食べたことはあるんだね、あ~でも米を食べないんだから米ぬかがないのか……
下処理していないタケノコは、ちょっと私も食べたくないなあ。
家のタケノコご飯は、タケノコの他に鶏肉、人参あればシメジを先に味をつけて鍋で煮て、その煮汁でご飯を炊いて炊き上がったご飯に後から具材を混ぜる混ぜご飯式。
タケノコご飯はタケノコの旨味を味わうものだから、鶏肉を入れるのは邪道かもしれないけど、家は昔からこれで、母いわく
「だって鶏肉入ったほうが味が出て美味しいでしょ」
と……お肉入のタケノコご飯は男性陣にも好評の様で、白ご飯のおにぎりより減りが激しい。
しかも、お酒もかなりのペースで飲んでますね、匂いだけでも酔いそうだからちょっと避難しないと。
「レイちゃん唐揚げは熱いからフーフーして食べようね」
「ふーふー、あっちっち。おいしい~の」
まわりにつられて何時もより食欲旺盛なレイちゃんが、唐揚げとおにぎりをニコニコしながらパクついてるが可愛くて、ついつい頬が弛んでしまいます。
「おいおい、顔がにやけすぎてて気持悪いぞ」
って言葉にびくっとして声の聞こえた方を見ると、呆れたように肩をすくめるブルーノさんとレオンが言い合いになってた。
良かった私の事じゃなかったのね、小さな子供の仕草って可愛くてついついにやけちゃうから。
「うるせーよ、番を見てて何が悪い。料理上手で可愛い番が羨ましいだけだろ、お前」
え、レオン何言ってんの?そういったセリフは、人前で言わないでってお願いしてたのに、ブランさんまで赤い顔でレオンに絡みだしたし
「にやけた顔は否定しないんだ~、そーよ羨ましいわよ、この野郎」
「そうだそうだ、羨ましすぎだぞこの野郎。サクラ~、俺様の番は何処に居るか知らないか~?」
って、そばにフラフラ寄ってきたブルーノさんが物凄くお酒臭いです、三重県民なめないでくださいよお酒臭い息だけで私、酔えますからね。(三重県は47都道府県で一番下戸が多いです)
「クソ、サクラに絡むな。この筋肉ダルマ」
竜ってお酒好きで、ざるだって神様も言ってたよね。そんなにお酒の瓶は空いてないのに、何でこんなに酔ってるの?
そんなにぐいぐい来たらレイちゃんが潰されちゃう、安全な場所を探してきょろきょろしていたら、ちょっと離れた場所からレッカさんが手招きしてるので、レイちゃんを連れて避難する。
「おばあちゃん、とーしゃまたち、おかおまっかよ。それにくしゃいの」
レッカさんと私の間にちょこんと座ったレイちゃんがそう訴えると、にやりと笑いながら
「あいつらにそう言っておやり、臭い奴らは嫌いだって。面白いくらい凹むだろうさ」
あれ?ちょっと機嫌が悪いみたい、何か失敗しちゃったかな……あ、レッカさんの持ってる酒瓶が空だ、花見が始まった最初の頃にお酌したきりでした。
「お客様にお酌もせずにすいません、お酒持ってきますね」
新しいお酒を持ちに行こうとしたら、手を引いて止められた
「気にしなくて良いよ、お酒も料理もたっぷりいただいたからね」
と言って、手に持ってる酒瓶を見せながら
「これはドワーフの秘蔵の火酒でね。私ら竜族でもコップ1杯で酔うほど強くて旨い酒さ、レオンが暴走しそうな時に飲ましてつぶす用にサクラちゃんの秘密兵器として持ってきたんだけどね。ブルーノのバカが隠してあったのを見つけて飲んじまったのさ、しかも私が怒ってるのに気が付いて2人を巻き込んだだよ、だからあの様さ」
……秘密兵器ですか、酔っ払いは別の意味で危険な気もしますが。
レッカさんが、ふふふと笑いながら
「後でしっかりお灸をすえてやらないと」
って言ってますね、3人ともご愁傷様です。
用意した料理もお酒もあらかた無くなり、酔っ払い達も大人しくなった様なのでお花見終了かな?
お花見と言いながら、花はあんまり見てない気もするけど、日本にいた頃の花見も似た様なものだったような……
レイちゃんは途中からはしゃぎ疲れたのでお昼寝中だから、この隙に
「皆さ~ん、そろそろお開きにして片付けますよ~」
敷物やゴミの片付けをレオンとブルーノさんに任せて、女性陣は汚れたお皿やコップを台所に運んで洗い物です。
洗い物が終わったので、お茶でも淹れようとしていたら、ブランさんが廊下から手招きしてる、何かあったのかな?
「ここは良いから、ブランの所へ行っておいで」
レッカさんもニコニコ笑って私の背中を押してくれるので、訳も分からずついていくと客間の前で止まり
「さぁサクラちゃん、この部屋に入って」
って、朝掃除した時は何もなかったけどと不審に思いながらも襖を開けて入れば、部屋の真ん中に不思議な光沢をもつ白い布で作られたシンプルなAラインのウエディングドレスが……え?
「ブランさん、これ、どうして?」
「レオンがねぇ、満開の桜の木の下でサクラちゃんがウエディングドレス着た姿を見たいっていいだしてね。面白そうだからレイちゃんの絵本を借りて、うちのエルフ達に頼んで作ってもらったのよ」
呆然としている私に、ブランさんは優しい笑顔で透けそうなほど薄いレースのヴェールを被せてくれる
「ふふふ、ヴェールもちゃんと用意したわよ。花嫁さんがそんな泣きそうな顔しないの、さぁ着てみてちょうだい」
だって、嬉しすぎて勝手に涙が出てくるんですよ、レオンがそんな事考えてくれてるなんて、
「ありがとうございます。こんなに素敵なドレスを作っていただけるなんて夢みたいです」
ブランさんにお礼をいうと、優しい笑顔のままハンカチで私の涙をぬぐい
「レオンの番になったサクラちゃんはもう私達の家族なんだから、これくらい当たり前でしょ」
って、カッコいい旦那様と可愛い子供のほかに、素敵な家族がいつの間にか増えていました。
白い糸で複雑な刺繍が施されたビスチェタイプの上半身に、綺麗なAラインを作っているスカート部分はエルフの里の特産だというウィンドシルクで、絹の様な光沢を持ち羽の様に軽く肌触りの良いものでした。
このデザインのドレスって、なかなかビスチェ部分のサイズがぴったり合うのが無くて、胸に合わせたらウエストがとか、ウエストに合わせたら胸がってなって諦めた、と結婚した友人に聞いた事があるんだけど……サイズぴったりなんですが、どうやって調べたの?
「ねぇブランさん、このドレスのサイズぴったりなんですけど」
え、何ですか?そのニヤニヤ笑い、ちょっと怖いですよ
「いやぁ、レオンの採寸バッチリだったんだなあって。サクラちゃんが寝てる間に測ったらしいよ」
はい?眠ってる間に測った?何やってるのレオン……言ってくれたら自分でやったのに。
ぐるぐる考え込んでる間にブランさんは手早く化粧も施してくれてました。
「完成、綺麗よサクラちゃん。レオンが待ってるわ、行きましょうか」