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ダンジョンの隠し部屋でのんびり生活  作者: 泪
隠し部屋の春
23/54

お花見とウエディングドレス 2

 お花見当日、朝ごはんの準備中に庭の方からレイちゃんの興奮した声が聞こえてた。

「ふわぁ~!きれ~、とーしゃま、これきれーね」

 昨日は一日中家の中で遊んでいたから、レイちゃんはぽつぽつ花が咲いた3部咲きの桜しか見てなかったのよね、満開の桜の迫力にビックリしたのかな?

「すげーな、一面ピンクだ。レイこっちおいで、抱っこしてやるよ」

「わ~い、とーしゃまだっこ~」

 楽しそうなレオンとレイちゃんのはしゃぎ声をBGMに朝ごはんが完成。

 今朝は玉ねぎのお味噌汁に出汁巻き玉子、アジの干物の和朝食、アジの干物は以前ブルーノさんにいただいたアジを捌いて干した自家製です。

 ブルーノさんにいただいた海鮮食材の中にサメが有ったんだけど、サメのタレの作り方が分からなかったのが残念……サメのタレ、食べたかったなぁ。

「レオン、レイちゃん、朝ごはん出来たわよ~」


「かーしゃまあのね、おそときれーなの」

 アジの干物を解してあげながら、まだまだ興奮冷めやらない様子のレイちゃんを宥めて朝食を食べさせる。

「うん、桜綺麗だったでしょう。でも今は朝ごはんに集中しようね」

「はーい、ごはんおいしいね~」

 素直に頷いて食べ始めるレイちゃんを見ていたら、ここでの生活は夢で本当の私は日本の病院のベッドで眠っているんじゃないかという考えが、ふと思い浮かんだ。

 日本にいた頃は病気のせいで子供は望めないと医師に言われていたし、家族は事故で亡くなってこの家で一人で命のタイムリミットに怯えてた……ペシッ

「痛っ、何するの?」

 そんな事を考えていたら、レオンにでこピンされちゃった。

「何か変な事考えてただろ?ここでの生活は夢じゃねえよ。もし夢だったとしても、サクラの世界まで俺がサクラを拐いに行ってやるから心配すんな」

 ……もう、レオンには敵わないなぁ。最近私の考えている事読めてるんじゃないかと疑っちゃうんだけど。

「ぅや?かーしゃま、まっかよ~、だいじょぶ?」


「サクラは大丈夫だ、心配ねぇよレイ。ごちそうさん、仕事行ってくる……ちゅっ」

「いってらっしゃ~い」

 レイちゃんの頬に行ってきますのキスをしたレオンが玄関に向かう、みんな何時頃くるのか聞き忘れてた……

「レイちゃん、お母さんお父さんにお話あるから、一寸一人で待っててね」

「はーい」

 にこにこ笑って手を降るレイちゃんに声をかけて、レオンを追いかける


「レオン、お花見の開始はお昼頃でいいのよね」

「ああ、俺もそのくらいには帰って来るから。じゃ、行ってくる……ちゅっ」

 いってきますのキスはもう習慣になってしまった……最近ではレイちゃんにまでちゅっちゅっしてるし、レオンってキス魔?

「あらあらオアツイコトデスネー」

 ブランさん?レッカさんも、今の見てた?

 キャー恥ずかしい……しゃがみこんで顔を隠すと、頭の上からイライラしたようなレオンの声が

「ちっ、邪魔すんな!次からサクラが嫌がったらどうすんだよ。お前ら来んの早すぎだろ」

「なによ、お花見の準備サクラちゃん一人じゃ大変だろうからって、早めに手伝いに来たのにずいぶんな言い草ねぇレオン。だいたい見られて困る事なら隠れてこっそりしなさいよ」

 ハイ、その通りですねブランさん。でもね、これでもレイちゃんの前でやるのは、何とか止めてもらったんですよ「レイちゃんも、とーしゃまとおくちでちゅーする」って、言い出して困ったので。

 はっ、そんな事よりお二人が手伝いに来てくれたのは、凄く助かるんでした。

「レッカさん、ブランさん、ありがとうございます。レオン?お仕事いってらっしゃい」

 ブランさんにまだ何か言いたそうにしていたレオンに、にっこり笑って早く仕事に行きなさいと促すとなぜかビクッとして

「い、いってくる。レッカ、ブラン手伝い頼むな」

 と言って、やっと仕事に行きました。

「ふ~んサクラちゃん、中々やるもんだね。きちんとレオンの手綱を握ってる」

 レッカさんが、うんうん頷きながら言ってくれますが、結構大変なんですよ……


 さて、お花見の準備開始です、と言っても昨日の内に大部分は下準備がしてありますが。

 ブランさんはあまり料理が得意ではないそうなので、桜の木の下に敷物を敷いたり、飲み物や果物、コップや取り皿を用意した後レイちゃんのお相手をしてもらい、私とレッカさんでお花見弁当を仕上げます。


 まずは昨夜作っておいた人参の甘酢漬けとタケノコの煮物のおかかあえを、レッカさんにお重に詰めてもらい、その間にブロッコリーを小房に分けてレンジでチン、後はケチャップとマヨネーズを合わせたソースであえてブロッコリーサラダの完成。

 朝食前に切ってタレに漬けこんでいたワイルドコッコのお肉と、これまた昨夜作っておいたジャガイモたっぷりのスパニッシュオムレツの大皿を取りだす。


「こりゃまた大きな塊の玉子だね、さっきの茶色い料理も何を使ってるのか分からなかったし、食べるのが楽しみだね」

 ふふ、レッカさんを驚かせる事に成功した事だし、スパニッシュオムレツは食べやすい大きさに切って、このまま大皿で出しちゃおうか?

「茶色いのはグングンの若木の煮物ですよ、この大皿の料理はジャガイモ入の卵焼きですが、このまま出しちゃいますか?」

「その方が楽だしインパクトがあるから、そうしようかね……しかしグングンの若木ねえ、こんなものまで異世界では食べるのかい?」

 やっぱり、こっちでタケノコは食べないんだね、まぁ下茹でしてアク抜きしたり手間はかかるけど美味しいのになぁ。

 春巻きや肉まんに入れても良いし、タケノコの煮物を天ぷらにしたのも好きなんだよね。

「美味しいですよ、今日は煮物の他に炊き込みご飯にもしてありますから、楽しみにしてくださいね」


「レッカさん、おにぎり握るの手伝ってくれますか?」

 エビフライはもう衣をつけてあるし、唐揚げも揚げたてを出したいよね、牛肉に似たデスホーンのモモ肉の薄切りで人参と牛蒡を巻いた八幡巻きは、味が染みるまでもう少しお鍋に入れておいて……

「おにぎり?サクラちゃんおにぎりって何かね?」

 あーそっか、ご飯を食べる習慣が無かったらおにぎりも知らないよね。

 きょとんとした顔のレッカさんに、ご飯をこうやって三角ににぎるんですよと見本を作ってみたんですが、中々上手くいかないみたい……どうも力が入りすぎて潰れちゃうみたい。

「すみません、私がにぎっていくので、お重に詰めてもらえますか?」

「ごめんねえ、力加減が難しくって三角にならないんだよ」

 日本人でも三角に上手くにぎれない人もいるし、レッカさんは竜だから握力も強いだろうから力加減は難しいよね。


「「こっこっこ、こけっこっこ」」

「ブランしゃんまってまって~、ピーしゃんがんばれ!」

 お花見弁当がほぼ完成したのでお茶でもいれようと思っていたら、窓の外から楽しそうなレイちゃんの声が聞こえる。

「ここのワイルドコッコは変わってるね、アレも一応魔物のはずなんだけど」

 レッカさんが呆れたように苦笑して見る先には、ピーちゃんの背中に乗ってブランさんを追いかけるレイちゃんの姿が……ピーちゃんもコッコちゃんも普段からレイちゃんの遊び相手をしてくれてて助かってるんだけど、本来は人間を襲う魔物なんだよね。

 レオンも「何でコイツらこんなに魔物らしくねぇんだ?」って首傾げてたし。


「とーしゃま、おかえりなしゃ~い」

 レオンが帰って来た、ブルーノさんも一緒ね、これで全員揃ったから揚げ物始めます。

 レッカさんと出来立てお花見弁当を持って庭に出ると、桜の木の下でブルーノさんがすでにお酒を飲み始めてました

「お前ら遅いぞ!!先に始めてるぞー」

 ってブルーノさんが来るの待ってたんですが……お怒りモードのレオンがブルーノさんの後ろから、

「ちょっと目を離したすきに、何一人で先に飲んでんだよお前は!」

 と言いながら背中をげしげし蹴ってる、レイちゃん抱いてて両手が塞がってるからって、あぁお酒がこぼれてるよ。

「痛ってぇーな、何しやがんだレオン。せっかくの旨い酒がこぼれちまっただろ」

「ブルーノ!一番最後に来て、手伝いもしないでバカな事言わないの。まったくしょうのない子だね」

 あらら、レッカさんもお怒りですね。とうのブルーノさんは分かってない感じですが、

「は?俺が来た時、誰も此処にいなかったぞ。レオンはちびをトイレに連れてくとか言って家の中に入っちまったし、やる事ねぇから飲んでたんじゃねえか」

「「「やる事無かったら花でも見とけ!花見なんだから!!」」」

 見事に台詞が揃った後、げしげしげしっと3人の蹴りがブルーノさんの背中に炸裂する。

 みんなの意見には賛成ですが、悪影響を与えるといけないのでレイちゃんの前での暴力は止めて欲しいです。


「とーしゃまたち、けんか?ブルしゃんイタイイタイ?」

 とことこ歩いて来たレイちゃんが、レオン達を指差して聞いてくるのに苦笑して、

「アレは遊んでいるの、でも危ないからレイちゃんはこっちにいようね」

 と避難させる。アレに巻き込まれたら私でも怪我しちゃいそうだし、レオン達を大人しくさせるには食べ物が一番よね。

「皆さん、お花見弁当の用意が出来ましたよ。さあ召し上がれ」

 と声をかければ、ぴたりと騒ぐのを止めて座る4人と一緒に

「「「「「「いただきまーす」」」」」」

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