神界にて
「私に何か御用かしらラフィリアの神?」
「申し訳ない、儂の弟子がそなたの世界から色々な物を盗んでおったようじゃ」
ラフィリアの神が私の前で土下座する。
「それで?」
「弟子は生まれ変わらせて一から修行をやり直させることにした、これは弟子がそなたの世界から盗んだ物じゃ」
「アクセサリーにバック、化粧品にお菓子ねぇ」
確かに私の世界はラフィリアより進んでいるから、若い女の子にとって魅力的だとは思うけど、よくもこれだけの物を盗んでくれたわね。
「申し訳ないのじゃが、弟子が最後に盗んだ物の事で相談があるのじゃが……」
土下座を続けたままのラフィリアの神がおずおずと私を見上げながら言ったのは
「はぁ?お菓子を盗もうとして力の配分間違って、うちの世界の住人家ごと転移させた~?」
「ちょっと待って、ラフィリアって魔力量で人の優劣決めてたわよね、うちの世界の住人は魔力0なのよ、その子大丈夫なの?」
「転移した場所がダンジョンの隠し部屋での、ダンジョンマスターの黒竜が彼女の料理を気に入って保護を申し出ているゆえ何とか生活は出来ると思うんじゃが……」
「魔力0では人の住む場所では生活出来んのでのぅ調味料等が手に入らんと言うのじゃ、何とかならんかのぅ」
誘拐されたのは、上野 桜ちゃん28歳、趣味は料理、お菓子作りに手芸ね……家族は事故で亡くなってるのね。
「……病気で余命半年!?」
「あ、病気は治しておいたのじゃ、あのままではあまりに不憫でのぅ」
それは良かったけど桜ちゃん日本人か~、日本人って真面目で従順でお人好しな上に変な適応力あるから異世界に誘拐される事多いけど、食へのこだわり半端ない民族なんだよね~、調味料って言ってもな~、とんでもない種類あるし……
対価無しに何かを与えるのも問題だから、桜ちゃんの貯金は……う~ん病気が治ったんだったら後50年は生きるわよねぇ。
「そうじゃ、これを黒竜から調味料の代金に当ててくれと預かってきたんじゃが」
ラフィリアの神が差し出したのは、バレーボール大の魔力石!!
これがあれば次元の裂け目の補修や結界の強化が出来る!
他の世界からの勇者召喚なんて誘拐も防げるわ、最近誘拐が増えすぎて困ってたのよ。
他の神はラフィリアの神と違って、自分の世界の住人達がしたことだから自分は関係無いなんて言って、うちの世界の子が使い捨て状態にされても何にもしてくれないし。
自分の世界の危機ぐらい自分の世界の住人で何とかしなさいよ!
地球だって環境破壊とか、とんでもない国の指導者とか色々大変なんだから……はっ、今は桜ちゃんの事だったわね。
桜ちゃんのおかげで良いものが手に入った事だしね、サービスしちゃえ
「家の設備は問題なく使えるんだよね、じゃあ家の中の物は生鮮食品以外無くなったら自動で補充してあげる、調味料だけじゃなくトイレットペーパーとか女の子用品も必要でしょ」
そうそう、日本人ならお米は必須よね、お菓子作りをするなら小麦粉も薄力粉と強力粉が要るし料理酒だって必要よね……お酒は本数制限しておいた方が良いかな、竜って酒好きだから際限なくなりそうだしね
日本人だしアレもあげちゃおう、桜ちゃんにとっては特別な物だしね。
桜ちゃん幸せになってね。