竜の溺愛と指名依頼 下
ランとスイムの書き分けが……分かりにくくてすいません、m(。_。)m
俺はスイム、Aランク冒険者パーティー『トライアスラ』の斥候だ。
Aランク昇格記念にノースダンジョンに潜ったはいいけど、今回は散々だった。
20階のセーフティーエリアで冒険者同士のケンカに巻き込まれるは、そいつ等からバイクが病気をうつされて死にそうになるし、ダンジョン自体30階より下は鬼畜仕様だったし……
まぁ、32階の隠し部屋で会ったサクラちゃんに助けてもらったのはラッキーだったけどさ、サクラちゃん可愛かったな~、あの衝撃的な見た目の料理も美味かったし。
あ~あ、ダンジョンの出口が近いのに又トラブルの予感なんだけど
「なぁラン、ダンジョンのこんな浅い階で冒険者に一人も会わないって変じゃね?」
「あり得ないな、何が起こってるんだ……」
とはいえ、今どんな状況なのかが分からないと話にならないよなぁ。
「ラン、ちょっと俺が本当に誰もいないか様子を見てこようか?」
「……近くに……2人……騎士?」
おっ、バイクお得意の探知術か、でも騎士?あいつらがダンジョンに潜るって?
「よし、その2人の様子を探ってくる」
と言って来たものの……マジで騎士だよ、何が起こってんだ。
ヤバイ、マジでヤバイ……騎士達が喋ってた話を盗み聞きしてセーフティーエリアに戻ってきたけど、もうちょっと下の階に移動した方がいい、あいつらに今見つかるのは本当にヤバイって事で地下8階のセーフティーエリアに移動して、ランとバイクに説明中……
「王都で病気が蔓延してる、しかもポーションが効かないらしくて貴族にも死人がでてるって」
「確かダンジョンで会った冒険者達も手持ちのポーションが効かなくて、セーフティーエリアの薬草まで使いきってしまってたな……」
「……俺は……ポーション飲んで……すぐ、楽になった」
はっと気が付いてバイクを見る、そうだバイクも同じ病気にかかったんだった。
「この病気の特効薬、もしくは高い効能をもつハイポーション……まずいな、これがバレたらサクラさんが危険だ」
ランとバイクも悩んでる……俺達は3人共家族を10年前の流行り病で亡くして孤児院で育った、特効薬があればってあの時どんなに願ったか……でも多分サクラちゃんの所に有る分では圧倒的に数が足りない、そのうえ……
「後な、神殿が声明を出したらしい『王家に忌み子の姫がいる、その姫の呪いが今回の病気の原因だ』って」
「それは、王が怒り狂うだろうな……だが、その状況で何故騎士がダンジョンに……」
ランがポツリと呟く……
悩んでいても俺達にはどうする事も出来ない、ともかくサクラちゃんとポーションの件は報告しないという事だけ決めて、帰ることにする。
ダンジョンの出口にいた騎士と、ちょっともめたものの俺達の名前を聞いた途端、ニヤリと笑いお前達を待っていたと言われギルドに連行された。
その道すがら見た王都は病人が溢れ、一部の元気な人間は暴動の一歩手前といった雰囲気だった。
はぁ~、騎士にギルドに連行されるって嫌な予感しかしないんだけど。
王都の冒険者ギルドのギルドマスターは信用出来ない、下級貴族出身の冒険者は実力がなくても簡単にランクを上げるくせに、俺達みたいな平民の冒険者は中々ランクを上げさせない、そのくせ危険な仕事はランク関係なしに平民出身の冒険者にさせる。
報酬の7割をギルマスにピンはねされてギルド本部に訴えた奴は、どんな手を使ったのか冒険者資格を剥奪された……
ギルドに着くなりギルマスの執務室に通され、そこには騎士達が待っていた。
「トライアスラ、ありがたくも陛下よりの指名依頼だ。何も聞かずにこの箱をダンジョンの30階より下に捨ててこい」
「ちょっと待ってください、この箱の中身は何ですか?こんな大きな箱を持ってダンジョンの30階より下になんて自殺行為だ、無茶すぎる」
ランが慌てて反論すれば、騎士達から罵声がとんできた。
「お前達には耳が無いのか、何も聞かずにと言ったではないか!」
「お前達に拒否権は無い!黙って従え!」
はぁ?ふざけんなよ、俺が騎士達の方に一歩踏み出そうとしたらバイクに止められた。
「俺達は今ダンジョンから戻ったばかりだ、本来ならダンジョンの25階まで行った者は3日以上の休養をとらなければいけないと規則にあったはずだ」
とランがギルマスに言えばニヤニヤ笑いながら
「緊急事態ゆえ、ギルドマスター権限で免除してやる、ぐずぐず言わずに今すぐダンジョンに行け」
くっそ~、何でこんな奴が冒険者ギルドのギルマスなんだよ。
「せめて今日1日だけでも休ませてくれ、30階より下に行くなら装備の補修や食料等の補充も必要だ」
ランが頼んでくれたおかげで、何とか休養日は確保出来たものの俺達はギルドの建物を出る事を禁止され、1部屋に軟禁された。
装備の補修をギルドでやってやるって言われたけど、自分達で補修する。
食料等はギルドに頼らないといけないのが、不安だ~。
「なあ、あの箱の中身ってさ……」
「……子供……術で眠ってる……」
俺が言った言葉に反応したバイクの答えは、今現在考えられる中で最悪のものだった。
「つまり、神殿の声明にあった忌み子の姫様か。だが、あの箱の中に入るって事は12~3歳位か、そんな子供が病気の原因とは思えないが」
ランの言うことは一理あるけど、神殿が声明を出すって事は麗しの君のお言葉じゃねえのか?とか考えてたら、バイクが悲しそうな顔で
「……子供……小さい……2~3歳」
って、はあ?そんな小さい子供?
「まさか、3年前に死産だったという第5王女か……そんな小さい子供が呪いを?忌み子って事は魔力なしのはず、神殿の言った事は本当に正しいのか?」
ランもショックを隠しきれないって顔でそう言うと、黙りこんでしまった。
俺達はそんな小さい子供を、ダンジョンに捨てに行くのか?冗談じゃない、俺はそんな事をするために冒険者になった訳じゃない……でもな~。
「スイム、バイク、俺は小さな子供一人殺して自分を守ろうとする王に従いたくない、何とかあの子を助けたい」
ラン……やっぱりお前もそう思うよな、バイクもウンウン頷いてるし、だけどな~。
「俺も同じ気持ちだけどさ、この状況で何が出来る?このままだと多分、俺達も騎士達に口封じに殺されるんじゃないか」
「……騎士団……ダンジョン付いてくる……逃げる無理……」
やっぱり付いてくるよな、それにダンジョンの出入口は1つだから、そこで待ち伏せされたらどうしようもないし。
はぁ~、麗しの君でも神様でも良いから俺達を助けてくれねえかな。
その頃、ダンジョンの中では……
「サクラ、白い花の咲いてる木が1本増えてんだが、何か知ってるか?」
実はホワイトデーのお返しに神様が梅の木をくれたの、地球の女神様からは塩、氷砂糖、ホワイトリカーを……梅干しと梅酒が漬けられますよ、ふふふ。
でも、バレンタインデーに神様達にチョコをあげたことは、レオンさんが焼きもちやくから言っちゃダメって言われたんだよね。
「さぁ?私も気がついたら生えてたの」
って言っても、こんなこと出来るの神様位だよね……
「ジジイの仕業だよな、サクラ?俺に何か隠してないか?」
…………マズイです、壁際に追い込まれてしまいました。
ドンッ……レオンさん壁ドン似合いますね……きゃー顎クイまでってもう無理です、神様ゴメンなさい。
「神様達にバレンタインデーのチョコをあげたら、お返しにもらいました~」
「あのジジイ~、俺達に面倒事押しつけておいて、俺より先にサクラのチョコケーキ食べたな~」