竜の溺愛と指名依頼 上
甘くなったかな、あんまり甘くない?
お砂糖……これが私の精一杯です(*´ー`*)
竜族の皆さんとの食事会が終わってから、レオンさんはこの隠し部屋と獣人族の里の入口を閉じダンジョン最深部にあるダンジョンマスターの部屋からしか出入り出来ないように変えた。
もしも獣人族や魔力無しの私が外の人間に見つかれば、今流行っている病気の原因だと濡れ衣をきせられて殺されてしまうと……それほどに人間の国は今、荒れているのだと。
入口を閉じた獣人族の里の方は、もしもの時の為にアインさんが常駐してくれているそうで、里の皆さんが食べる肉類は、レオンさんとアインさんがダンジョン内の人間達がまだ到達していない階層で魔物を狩ってまかない、20階まで採りに行っていた薬草は私の作るポーションを渡す事で問題なく生活出来るって事でした。
ただ、私とレオンさんの同居生活は……どうしてこうなった?
同居の話を聞いて私が客間の準備をしている間、レオンさんは家の外でブルーノさんやこの世界の神様と何か話をされていたようなのですが、
「レオンさん、客間にベットが無いのですが、お布団でも大丈夫ですか?」
家の中にレオンさんが入ってきた気配がしたので、振り返ろうとしたら後ろから抱き締められていました。
「はぁ、良い匂いだ。何でこれで分かんなかったんだ俺?」
しかも首筋に顔を寄せて、クンクン匂いを嗅いでるんですけど……
「レオンさん?ちょっと恥ずかしいです、放してください」
「ん?何でだ?俺は恥ずかしくないぞ、サクラは良い匂いするしな」
いやいや、私が恥ずかしいんですが……家族以外の男の人に抱き締められたことなんてほとんどないん
ですから。
情けない話ですが、中学高校と女子校だったうえに大学時代に初めて付き合った人には1回目のデートの後で『上野さんって、なんか思ってたのと違うんだよね。彼女っていうより母親?』って言われ直ぐに振られてしまい、結局その後誰とも付き合ってないという……
「レオンさん私が恥ずかしいんで、放してください……だいたい急にどうしたんですか?今までこんなことしなかったですよね」
「あぁ、あのクソ女を俺の番だと思い込むような術をかけられてたみてぇでな、ついさっきそれに気付いて術が解けたんだ、ありゃあ術っつうより呪いだぜまったく」
やっとレオンさんの腕の中から脱出に成功……だけどあの美少女、本当に色々やらかしてたのね。
「あのクソ女が俺の番だなんて絶対認めたくねえのに、アイツの側にいると俺の意思に反して体が動いちまって、やっぱり番なのかってけっこう投げやりになってたんだ……だが、術が解けたんで本物の番が分かった」
「本物の番?」
「あぁ、サクラ好きだ。俺の番、俺と一緒に生きてくれ」
「えぇ~、私?え?え?レッカさんの言ってたのって本当だったの?」
今度は正面からレオンさんに抱き締められてしまい、かーっと顔が赤くなり胸の鼓動が暴れだす。
「やっぱりサクラは人間以外の番は嫌か?俺のこと嫌いか?」
なんて、しゅんとした声で言われて慌てて顔を上げると、真剣な顔をしたレオンさんと目が合って思わず
「私もレオンさんが好き」
ぽろりと私の本音がとびだしたとたん、レオンさんの右手が私の顎をくいっとあげ、顔中にキスの雨が降ってきました。
「はぁ、サクラ好きだ……ん……っちゅ……ちゅっ」
始めは触れるだけだったキスは次第に深くなり、私の口内で暴れ回っていたレオンさんの舌が出ていく頃には、酸欠でふらふらになってました。
その後、番大好きな竜の本能全開にしたレオンさんに客間に敷いたお布団に連れ込まれ、3日後にブランさんが
「ちょっとレオン大変よ!色ぼけてる場合じゃないわよ、出てきなさい」
と家のドアを叩くまで放してもらえませんでした……
この3日間は、食事はレオンさんの膝の上か布団の上で体を支えられながら、家の中は抱っこ移動、勿論お風呂は一緒とラノベでのドラゴン種の溺愛っぷりは本当だったのねと実感した生活でした。
今もレッカさん達が来て、何か大事なお話をしているようですがレオンさんに
「そんな色っぽい顔であいつらの前に出たらダメだ、ゆっくり休んでろ」
なんて言われて、実際体力的に限界が近いので休ませていただいてます。
いつの間にか眠っていたようで、気が付いたらレッカさん達が来てから3時間以上たってました。
居間の方ではまだ話し声がしている、本当に大変なんだな……私では何の力にもなれないけど、昼寝のおかげで体力も戻ったし何か食べる物でも用意しようかな。
う~ん、今からご飯炊いてると遅くなるよね……あ、前に商店街の福引で当てたインスタントラーメンが有ったはず、塩味だから野菜炒めを上にのせればボリュームもでるけど、レオンさんとブルーノさんには物足りないかな?
シバさん用に残していた唐揚げ温めて出せば足りるかな……シバさんゴメン。
台所で野菜炒めの準備をしていたら、居間の会話が聞こえてきたのですが……
「だから、あんな小っちゃいサクラちゃんにエロエロな本能全開で襲い掛かっちゃダメでしょって言ってるの、体力も体格も差があるんだから怖がらせたらどうすんの?」
「……いや、サクラも嫌がってはいなかったと……」
「ぎゃははは、やり過ぎて番を早死にさせたなんてしゃれにならんからなぁ」
「本当にサクラちゃんに無理させてないと言えるのかい、竜族の雄が番を見つけた直後は色ボケてまともな判断なんて出来ないはずだしねぇ、皆心配してんだよ折角見つけた番に嫌われたり逃げられたりしたらって」
きゃー皆さんなんて話をしてんですか……動揺して思わず人参を落としてしまうと、その音に気付いたレオンさんが顔を出した。
「サクラ?休んでろって言ったろ」
「しっかり休んだから大丈夫ですよ、レオンさん達が大変そうだから何か食べる物でも用意しようかと思って」
「あいつらの事なんて気にするな、俺達は食べなくても死なないんだから。それより顔が赤いぞ熱があるんじゃないのか?」
なんて言いながら首筋さわさわするのは止めてくださいレオンさん、ブルーノさんがニヤニヤして覗いてますよ。
「折角サクラが飯を用意してくれるって言ってんだから止めるなよ、俺は何でも食うぞ」
「そうそう私も何か食べたいわ、サクラちゃん何か手伝おうか?」
「折角だし私も何かいただきたいね、この前の料理も美味しかったし。さあ男共は邪魔だよそっちで待ってな」
なんて全員こっちに来ちゃったけど、
「レッカさんとブランさんも運ぶのだけ手伝ってくださったら十分です、休んでてくださいね」
ということで、大鍋でお湯を沸かして麺を茹でながら野菜炒め用のキャベツ、人参、もやしを刻んで、麺が茹だってきたら粉末スープを入れて少し煮てから丼へ、野菜炒めもタイミングよく炒め終わったから麺の上にのせて完成。
「チンッ」唐揚げも温まったようですね。
「レッカさん、ブランさん運ぶの手伝っていただけますか?」
いそいそと二人が来て、手伝ってくれます。
「いい匂いだねえ、野菜炒めが汁に浸かっているのかい?」
「レッカさん、これはラーメンといって野菜炒めの下に小麦でできた麺があるんですよ、この麺をスープと一緒に啜って食べるんですが、こちらではお行儀の悪い食べ方でしょうか?」
「初めて聞く食べ方だね、まぁ私等は行儀作法なんて気にしないから大丈夫、美味しければいいのさ」
「そうそう、それより早く食べましょ」
麺がのびないように、急いでテーブルに野菜炒めのせラーメンと唐揚げを並べて
「さぁ召し上がれ」
なぜ私はレオンさんの膝の上でラーメンを食べさせてもらってるのだろうか……はい、ブランさんとレッカさんの間に座って食べようとしていたら、レオンさんに捕獲されました。
皆さん何も見なかったふりして無言で食事に集中してます、ブルーノさんなんて丼を手に持って流しこむように、この食べっぷりは気に入ってもらえたかな……
生暖かい目をした皆さんが帰った後で、レオンさんのが教えてくれたのは、このノースダンジョン以外のダンジョンに人間達が病人を捨てに来ているという信じたくない話でした。
まだ生きている病人を老若男女関係なしで……しかし、本来なら真っ先にそういう事をしそうなこのダンジョンのある国だけが、そうしないのが何だか不気味だと……
「きゃーかあしゃま、かあしゃま」
「ええい忌々しい忌み子め、騒ぐでないわ!さっさと連れて行け」
「こほっこほっ……陛下、レイティアを何処に連れて行かれるのです……はぁはぁ……レイティ……」
あぁレイティア、誰かあの子を助けて……
「ふん、王妃は気を失ったか。魔術師長、今のうちに王妃に忘却の術をかけるのだ、病気で弱っている今ならあの忌み子の事を忘れさせることが出来るであろう」
嫌……嫌です……可愛い我が子を忘れるなんて……い……や……
「勿論忌み子本人には、全てを忘れるよう念入りに術をかけよ、自分がどこの誰かも分からぬようにな」
……私はこの国の王妃です。今、国中に蔓延している病にかかり生死の境をさまよった為に命は助かったものの、この5年間の記憶を無くしてしまいました。
そんな私にも、陛下は優しいお言葉をかけてくださいます……私は幸せ者です……なのに何故でしょう、胸の奥が痛むのです、何か大切なものを無くしたかのように……この身が引き裂かれそうな程の悲しみが……