人間達の闇と解けた呪い 下
繁忙期は終わりましたが、お話のストックが0なのでしばらく週1回、日曜の0時の更新になります。
レッカ達が帰ってから、サクラに俺がいなかった間の話を聞いて、この隠し部屋と獣人族の里の入口を閉じ最深部にあるダンジョンマスターの居室からしか出入出来ないように構造を変えた。
どうやら俺達が考えてたよりも今回の流行り病は酷そうだ、ダンジョン20階の薬草があまり効かないとは……ダンジョン内に生える薬草は外のものより高濃度の魔力を含み、それで作ったポーションはほとんどの病気を一度で治すはずだった。
この隠し部屋は俺が仕事をさぼって、しょっちゅう昼寝に使ってたから他の場所より魔力濃度が高い、ここに生えた薬草で作ったポーションだからこそ、人間の冒険者も獣人達もすぐに病気が治ったんだろう。
という事は、人間達が手に入れる事が出来るポーションや薬草ではこの病気にはあまり効果がなく、かなりの死人が出る、何時もならあのクソ女が何らかの能力を人間にやって病気を治めたんだろうが、もういないからな……
病気に対して何の解決策もない王家や神殿に、町の連中が騒ぎださないはずはなく、そんな時にもし獣人族や魔力無しのサクラが外の人間に見つかれば、病気の原因だと言いがかりをつけて殺し、王家や神殿は自分達の保身にはしるはずだ。
冗談じゃねえ!そんな事させるかよって事で、サクラにしばらく俺もこの家で一緒に暮らすと言ったんだが……まさかそれがサクラのペンダントを通じてレッカ達に筒抜けだったなんてorz
しかも一緒に暮らすって所だけかよ、はぁ……ブルーノのやつは
「ぎゃははは何だレオン、サクラはお前の番かよ。サクラ小っこいんだから手加減してやれよ」
なんてからかってくるし、レッカとブランは何も言ってこなかったが、こっちにいる時にこそこそサクラと話してニヤニヤした顔で俺の事見てたよな……サクラが俺の番?まさか……俺の番はアレだったはず……
確かにサクラからは何時も良い匂いがしてる、始めはサクラの作る料理の匂いかと思ってたがそうじゃねぇ、なんか甘くて頭がクラクラするような、抱え込んでずっと嗅いでいたくなるような……
うん?そういえば、何で俺ブルーノやブランがサクラに触っただけであんなに腹が立ったんだ?
あの時は、俺のもんに触るんじゃねえってぶちギレかけて、サクラ抱いたら妙に落ち着いて……くそっ頭が痛てえ…………何だこれ………………パリンッ
…………あのクソ女!!ふざけんなよ、くそっ!
「おいジジイ!話しがある。ちょっと此方に来いよ!」
「何じゃレオン、何か問題でも有ったか?それと、もう少し年寄りを敬わんか、儂、神じゃぞ」
はらわたが煮える思いでジジイを呼び出せば、神のジジイはのほほんとした顔で出てきた。
何が神だ、神だったら自分の弟子の管理位しておけよ。
「何か問題がじゃねえよ、あのクソ女が俺に自分が番だと思い込まさせる術をかけてたぞ、ふざけんなよ!こんなの、呪いじゃねえか」
「何じゃ今頃気が付いたのか。レオンお前おかしいと思わなかったのか、あれだけ嫌っていて迷惑を掛けられていたはずなのに、アレに呼ばれれば側に行かずにはいられない等異常だと」
はぁ?何言ってんだこのジジイ、気が付いていたのに放っておいたってのかよ
「だ・か・ら・それが!番だからだと……絶対認めてやるもんかと思ってたがな。ジジイ、この呪いに気が付いてたんなら何で放っといた」
「アレの暴走をレオンなら止められるかと思ってのう、レオンの番がこの世界にいない事は分かっていたし、何とか上手くやってくれればと思ったんじゃが……まさかその番をアレがこの世界に連れてきてしまうとはの……」
このジジイ、弟子の面倒位自分で見やがれってんだ。
「しかし術が解けるまで思ったより時間がかかったのう、レオンお前アレが番のはずと思っていたのにサクラちゃんに会ってすぐから惹かれてたじゃろ、でなければあれほど大きな魔力石をポンとは出せんはずじゃしの」
「ジジイ……まさか、術の事忘れてたとか言わないよな」
「本当にすまんかったレオン、儂がもう少しアレをしっかり見ていればよかったのじゃ。儂が放っておいたばかりにアレはやり過ぎた、今回の病気の事もそうじゃが色々とな……それに最近の人間達の行動も少々目に余るしの、人口が増えた事による環境の破壊、魔力量による偏見や差別、極端な人間至上主義で他の種族との共存も難しい……少し時間をくれんか、人間達がこの病気に対してどのように対処していくかを見てみたいのじゃ」
ジジイ、さすがにこの病気の事は気が付いていたのか。
「だが、世界が荒れるぞ。いいのかジジイ?世界が荒れれば、ジジイの力も減るのだろ」
「弟子のしでかした事は師匠の儂の責任じゃ、じゃが直ぐに人間達に助けの手を差しのべるのは、今まで人間達のしでかしてきた事を考えるとのう、ここらで膿を出しきるのも良いのかもしれん。人間達は儂が何とかするから、レオンはしばらく番を捕まえる事だけ考えていて良いぞ、うひひひ」
おいジジイ、せっかくちょっと見直したってのに何だその笑いかたは!
だいたい、あのクソ女じゃなくサクラが俺の番だっていうんだったら、悩むこたぁねえ絶対捕まえて俺のにするさ。
「まぁ頑張るんじゃな、サクラちゃんの世界では人間の恋愛対象は人間だけだったはずじゃからな、竜なんていなかったはずじゃしのう」
ちょっと待て、大問題じゃねえかそれ!
サクラ……番は人間以外嫌だなんて言わないよな、って言わせねぇ。
絶対俺のもんにする!
サクラ、好きだ……俺の事好きになってくれよ、一生お前だけを愛するから。
「……まぁ大丈夫じゃろ、地球のに聞いたらレオンはサクラちゃんの好みど真中らしいし、割と日本には異類婚の昔話があるらしいからな」
何!本当かジジイ?
なんて話しがレオンさんと神様の間でされていたなんて露知らず、私は獣人族の里用に大量のポーションを作った時に出来た薬草の絞りかすを菜にかに使えないか試行錯誤してました。
レオンさんがポーションを作る時には、布で濾さないでポーションに入れちゃうということは、食べても平気ですよね、元々お薬だし。
今までは、少量だったからピーちゃんとコッコちゃんのエサに混ぜてたけど、今回は大量だからね。
大半は小分けして冷凍庫に入れてピーちゃん達に食べてもらうにしても、私も食べられないかなぁ。
ポーション自体は、ちょっと苦味のあるお茶?って味だったけど、絞りかすはどんな味かな?
「……草餅用に茹でた蓬に似てる?つぶ餡まだ有ったよね、草餅と草団子にしちゃおう」
上新粉にお湯を入れてよく混ぜて、蒸し器で蒸してから、つきます。
草団子用に半分は砂糖を入れて、薬草の絞りかすも混ぜてから成形して出来上がり。
さてさて、お味はどんなかな?
「うん、草餅だ~。大成功」