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ダンジョンの隠し部屋でのんびり生活  作者: 泪
神様の弟子の置き土産
14/54

会合と春の味覚 下

「クスクス、可愛いねぇ。何か困ったらコレで私と話せるから連絡しておいで。ブラン、ブルーノ帰るよ」

「あ~レッカだけずるい、私もあげる。何時でも連絡してね」 

 レッカさんから赤い石の付いたペンダントをもらっていたら、ブランさんからも白い石の付いたペンダントトップをいただいてしまいました。

「ふむ、二人が渡すのなら俺もコレを。食材が切れたら何時でも連絡して……がっ、痛ってえ何しやがるレオン!」

 ブルーノさんは青い石の付いた指輪をくれようとしてたのですが、レオンさんに殴られてます……こちらの世界でも指輪は特別なのでしょうか?

「あいつ馬鹿なの?いくら脳筋でも指輪は無いでしょ……」

「困ったもんだねぇ……ほら二人共お止め、ブランもブルーノもそれを貸しな、私のと一緒に1つにしてしまおう」

 レッカさんが3つを手に握ると、その手が光り赤白青の3つの葉があるクローバー型のペンダントが出来てました。

「何かあったら、話したい人の色の石に触りながら喋れば私達に声が届くからね」


「素敵、ありがとうございます皆さん。あの、せっかく来ていただいたのですから、たいした物は作れませんが夕飯ご一緒にいかがですか?」

「サクラいいのか?無理しなくていいんだぞ、こいつらが勝手に押しかけて来たんだから」

 なんてレオンさんは言ってるけど、顔が嬉しそうですよ、食事は大勢で食べた方が美味しいですからね。

「大丈夫ですよ、でも何品か作り置きのおかずになってしまうので申し訳ないんですが」

「きゃあ、サクラちゃん良い子!異世界の料理楽しみ~」

 そう言った途端、ブランさんに抱きしめられて頭撫でられちゃいました。

 く、く、苦しい、身長差のせいで顔がお胸に……ギブ、ギブです、誰か助けて~


「おいブラン、サクラを離せ!お前の胸でサクラが息出来てねえ」

 レオンさん、助けていただいて何ですが……何で今度はレオンさんが私を抱きしめてるんですか?

 苦しくはないですよ、苦しくはないですが、レオンさんの体温とか鍛え上げられた筋肉とかがですね、おまけに頭撫でられたら……うあ~顔が熱い。


 ……ブルーノさん、そんなニヤニヤした顔でどこ見てんですか?

「わははは、女の胸で窒息なんて男なら1度は体験してみたいもんだがなあ、ブランの胸はデカイから気持ち良さそうだしな」

「うぎゃあっ何しやがるんだって、ちょっと待てブランそれはちょっと待て……ぎゃ~」

 ブルーノさんセクハラオヤジですよそれじゃ、ブランさんが怒って当然です。


「サクラ、あの二人はこっちで見とくから料理頼んでいいか?ブルーノの所から持ってきたのは、冷蔵庫の中に転移させておいたから好きに使えよ、入りきらなかった分は後でな」

 さすがレオンさん、仕事が早い。

 ては、料理してきます♪

 冷蔵庫の中に入ってた鱚に似た魚をおろして、大きな車エビの下処理を終えたら、デスホーンの肉入り肉じゃがを大皿に移してレンジで温めている間に、天つゆと新玉ねぎとジャガイモのお味噌汁の準備を……


「サクラちゃん私も何か手伝おうかね」

 なんてレッカさんが言いながら台所に来てくれたので、ありがたく小皿に盛った蕗の薹味噌と小鉢の菜の花の辛子あえを、どんな料理か簡単に説明してからテーブルに運んでもらう。

 その間にお味噌汁を注いで、炊きたてご飯はレオンさんとブルーノさんは丼で良いよね、レッカさんとブランさんはお茶碗でいいかな?

「サクラちゃん私も手伝うわ、あら?この白い粒々はなあに?」

「ブランさんありがとうございます。これは米という植物を炊いた、私の故郷の主食でご飯というのですが、ブランさんとレッカさんはこちらの小さい器で食べますか?」

「そうね、私とレッカはレオン達ほどは食べないから、小さい方でお願い。異世界ではパンは食べないの?」

 ブランさんはご飯を珍しそうに見て、匂いを嗅いでる。こっちの世界には無いのかな?

「パンはありますよ、私の故郷ではこのご飯が主食でしたけど、パンが主食国もありましたし、私の故郷でも普通に売ってました」

「教えてくれてありがと、じゃあこれ持って行くわね」

 ブランさんと話しながら天ぷらの衣の準備をして、天つゆとお塩、取り皿を用意していたら戻ってきたレッカさんが肉じゃがの大皿と一緒に運んでくれました。


「すいませんお待たせしました、今から天ぷらを揚げていきますので先にそちらのおかずで食べ始め。ください、天ぷらは揚げたてをお持ちしますね」

 テーブルに着いた皆さんにそう言って台所に向かうと、後ろの方で皆さんが食べ始めた気配が……

 さぁ、天ぷら揚げますよ!


「うぎゃっ何だこれは、鼻が痛い……こんなもん食えんぞ」

「それはキバナの辛子あえだよ。キバナの蕾を茹でて辛子という辛い調味料を使ったタレであえてあるそうだよ。ブルーノ、お前はいっぺんに頬張るからそんな事になるんだよ、少しづつ食べれば美味しいよ」

「この茶色い汁も美味しいわ、オニルの甘味とポテポテの食感も汁の塩気と合わさってとても良いわ」

「ブラン、味噌汁は飯と一緒に食うともっと美味いぞ。後この茶色い塊、少しづつ飯と一緒に食べるとほろ苦さがくせになりそうな味だ」

「それはサクラちゃんが蕗の薹味噌と言ってたよ、ニガバナを灰汁ぬきしてこの汁に使った味噌と砂糖なんかを合わせてあるらしいね、これはドワーフの作る火酒にあいそうだね」

「ニガバナ?あんなもん食えるのか?……うわっ、しょっぱくてやっぱり苦いぞ」

「ブルーノ、いっぺんに頬張るなって言ったわよね!文句ばっかり言ってないで少しづつこのご飯と一緒に食べてみなさいよ」

「う、うむ……このご飯というものは美味いな、噛んでると甘味が出てくるが、あまり味が無いからこの肉とポテポテを煮た物とよくあう」


「お待たせしました、タラの芽と蕗の薹の天ぷらです。タラの芽はトゲノメ、蕗の薹はニガバナの事ですよ、塩を振って食べてみて下さい。まだまだ他の種類の天ぷらも揚がりますからね、お楽しみに♪」

 先ずはタラの芽と蕗の薹の天ぷらを熱々のうちに出して、次は新玉ねぎと小エビのかき揚げですよ。


「トゲノメとニガバナ?異世界ではこんな物まで食わなければ他に食うものが無いのか……それでサクラはあんなに小っちゃいのか、可哀想に」

「いや、あの世界はこちらよりかなり進んでるぞ、あのクソ女が菓子を盗もうとする位だからな、こちらより食糧は豊だと思うんだが……」

「あら?これも美味しいわよ。衣を着けて油で揚げてあるからか、苦味をあまり感じないし」


「次はオニルと小エビのかき揚げですよ、お好みで塩でも、こちらの天つゆをつけても美味しいと思います、熱々のうちにどうぞ」

 レオンさんとブルーノさんが二人で話しこんでるみたいなので、レッカさんとブランさんにかき揚げをすすめる。

「じゃあ私は塩で……サクッ、はふっ熱っ美味しい!サクサクの衣とオニルの甘味とエビの旨味が絶妙ね」

「ブラン、この天つゆも美味しいよ。ちょっと酸味のある出汁で柔かくなった衣がオニルとエビ絡んで美味しいんだよ」


「さぁ、最後は海老と鱚の天ぷらですよ、ご飯のおかわりはいかがですか?天ぷらをご飯に乗せてタレをかけて天丼にしても美味しいですよ、女性には出汁をかけてあっさり天茶漬けがいいかな?」

「サクラこんなに沢山疲れただろ、ありがとな。後悪りぃんだが、おかわり天丼で頼む」

 レオンさんが労ってくれながらも丼を出すと、他の皆さんも丼やお茶碗が……ちょっとお待ち下さいね。

「サクラちゃん手伝うわ、ブルーノ!あんたそこにあるの全部食べちゃわないでよ、私も食べたいんだから」

 海老天を3本まとめてフォークに刺してたブルーノさんの後頭部に、レオンさんのチョップがささる。「何しやがるレオン、このプリプリの海老天は俺の物だ」

「一人で全部食うなって言ってんだよ、レッカお前も魚の天ぷらごっそり取ってくな!」

 あぁぁ、まずい足りなかったかも?ちょっと追加しよう、ブランさんの分が無くなってしまいそうだし。


 あれから、海老天とワイルドコッコの胸肉を使った鳥天を追加したものの、競い合うように食べる皆さんの胃袋に瞬く間に消え、〆の天丼と天茶漬けも

 綺麗に平らげて竜族の皆さんは帰って行きました。

「お疲れさんサクラ、俺が居ない間何か変わった事はなかったか?」

 ニコニコと私の頭を撫でながらそう聞いたレオンさんに、病気の人間の冒険者が此処に来た事と獣人族の里でも同じ病気が流行った事等を話すと、だんだんレオンさんが難しい顔になっていった。

「まずいな、この病気はどうもあのクソ女が流行らせたみたいなんだが、普通のポーションがあんまり効かねぇらしくてな、おかげで外の人間共は大騒ぎだ。何かあるか分からねぇから、しばらく俺もこの家に一緒に住んでもいいか?」

 真剣な顔でそう言ったレオンさんに、私も妙な胸騒ぎがして思わず胸元のペンダントを握り締めていた……

 まさか、それが原因でレオンさんの「俺もこの家に一緒に住んでもいいか?」の台詞だけが竜族の皆さんに聞こえていたなんて思いもよりませんでした。

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