迷子と生姜湯 下
獣人族の里で病気が流行っているので、ポーションが欲しいとシバさんが来たのが昨日。
バイクさんの件もあるし、感染力の高いインフルエンザみたいなものかしら?
今までレオンさんが、獣人の里にポーションを作ってあげてたらしいけど、病気も治ったし何か仕事がしたいから、私が代わりにポーションを作って野菜と交換でシバさんに渡したらいいんじゃないかな?なんて思いながらポーションの瓶詰めをしてたら
「「コッコッコ、コケッ」」
あ、シバさんが来たかな?ピーちゃんとコッコちゃんは、今では大型犬サイズ迄成長し、来客があれば鳴いて知らせてくれる、番犬ならぬ番鶏になっています……見知らぬ人には攻撃もしちゃいますが……
玄関のドアを開けると、アインさんが両手に猫獣人をぶら下げて立ってました。
「……アインさん、いらっしゃい。あの~、その子達は?」
「すいませんサクラさん、獣人の里で病気が流行っているようで、ポーションを分けていただけませんか?」
「はい、用意してますよ。シバさんが今日来てくれる事になっていたのですが」
「シバも病気になったにゃ~、だからニャニャ達が来たにゃ」
「みんな熱と咳で苦しそうみゃ、助けてみゃ」
「だからと言って、誰にも言わずに里を出てはいけません!」
三毛の子の耳がぺしゃんってなっちゃった……
はっ、今頃里は大騒ぎなんじゃ。
「アインさん、ポーションの瓶詰めがまだ途中なんです、二人の事を先に里に連絡してあげてくれませんか?」
「その方が良いですね、多分大騒ぎになっているはずですから。あなた達はサクラさんを手伝っていなさい、後でポーションと一緒に里まで送ってあげます」
アインさんは、ため息をついて獣人の里に転移していきました。
「はじめまして、私は桜よ。二人共お手伝いよろしくね」
「ニャニャにゃ、よろしくにゃ」
「ニャタロウみゃ、よろしくみゃ」
きゃ~可愛い~、にゃって、みゃって。
「ニャニャニャちゃんとニャタロウ君ね、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「ち~が~う~、ニャニャ!」
わぁ、尻尾がぶわって膨らんじゃった。
「ご免なさい。ニャニャちゃんね」
「そうにゃ、それで何が知りたいにゃ」
「あのね、ポーションって怪我にも病気にも効くの?普通の風邪の時にもポーションを飲むのかな?」
三人でポーションの瓶詰めをしながら、不思議に思っていたことを聞いてみる。
「風邪の時は暖かくして休んでいれば治るにゃ、ポーションは怪我には良く効くけど病気には効きにくいにゃ、でも今回みたいな高熱がでた時はポーションが必要にゃ」
「ポーション飲んで熱が下がっても、次の日又熱がでる事が多いみゃ、それに治らない怪我や病気もあるみゃ」
う~ん、解熱剤代わりなのかな?ウィルスを殺したりする効果はなさそう……
「ニャニャちゃん、ニャタロウ君、この野菜は里で作ってないかな?」
冷蔵庫から生姜を出してきて、二人に聞いてみる。
「ジンガにゃ、ピリッと辛い味がするからニャニャは嫌いにゃ」
「そう、里には砂糖か蜂蜜みたいな甘い物はあるかしら?」
「蜂蜜があるにゃ、里の端っこでキラービーを飼って蜂蜜を売る人がいるにゃ」
良かった、咳止めや風邪予防に生姜湯が効くのよね、里にある物で作れるわ。
「そんなの聞いて、どうするにゃ?」
「風邪予防に効果的で美味しい飲み物が作れるかなと思ってね」
「美味しい物にゃ?飲みたいにゃ」
「美味しい物で、風邪予防になるみゃ?」
ふふふ、二人共興味津々ね。
「瓶詰めも終わったし、今から作るね」
よく水洗いして皮のついたまま薄切りにして、乾燥させた生姜をフードプロセッサーで粉状にしたものと蜂蜜をカップに入れて、ぬるめのお湯で溶いたら、生姜湯の出来上がり。
テーブルに運んで、さあ召し上がれ。
「ふーふー、甘~いにゃ。ちょっとピリッとするけど美味しいにゃ」
「うん、美味しいみゃ。サクラちゃん、これで風邪予防になるみゃ?」
猫獣人はやっぱり猫舌なのか、ぬるめの生姜湯をふーふーしながら飲んでる、でも気に入ってくれたみたいね。
「そうよ、夜寝る前に飲むと体がポカポカしてぐっすり眠れるし、咳止めや風邪予防になるの。でも、いっぱい飲むと、かえってお腹が痛くなったりするから1日1杯で良いのよ」
「さあ二人共、里に帰りますよ。サクラさん、ポーションありがとうございました、この生姜湯の素も里の獣人達に試させますね」
「サクラちゃん又にゃ」
「サクラちゃん、ありがとうみゃ」
アインさんが来て、二人とポーションを獣人族の里に持って行ってくれました……生姜湯が効いてくれると良いなぁ。
ニャニャちゃんとニャタロウ君、アインさんと里の大人達に回りを囲まれて、お説教されたらしいです……それを見たシバさんが、あれはヤバイとガクブルするくらい怖かったって……
次は2月14日、バレンタインデー小話の予定です。