表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/40

転生悪役令嬢の事情聴取①ー子爵家従者

6/25 分割しました。

内容は変わっておりません。

改めて対面に座るキリルをみると、やはり緊張しているようだ。


こんなちびっこでも、貴族令嬢だしね


思わずふふっと笑いを漏らすと、それでまたキリルは戸惑うように目を瞬かせた。


「彼女の様子を聞きたいだけだから、それほど時間はとらせないわ」

「は、はい」

「…それで?聞いても良いのかしら」


彼を見ていたいところだけれど、そういうわけにはいかないから、早速本題に入る事にする。


「そちらから知らせは寄せて下さっているとは思うのだけれど、私の執事の練習相手なのだし、ダンゼルク邸で体調をくずされたのですもの。子爵家の方から直接聞きたかったの」


そう言われて、キリルは何故か驚いた目をアルリックに向けたが、続いた私の言葉に視線を戻した。


「……お気にかけて下さるとは……。ありがとうございます。私にわかる範囲でお話しさせて頂きますが、診断して頂きました通り、特に目立った外傷もなく、今は体を休めているようです。ただ…」


キリルはふっと表情を暗くさせる。


「これまでに色々と体に無理させていたようで、もうしばらく体を休める必要があるとの事pです」

「まあ…やはり、私のせいね。執事の相手をお願いしたから」

「っ!…いいえ、いいえっ!そうではありません。セリーヌさ……彼女は、そもそも身の丈以上に励むところがございまして」


セリーヌの呼び名を改めたところを見ると、何らかの事情で彼女がダンゼルク家で侍女だと称している事は知っているようだ。


あ。あの時に連れ帰っているのだから、知っているに決まっているわよね。


「溜まっていたそれらが、出てしまったようです。…私共も、現在彼女が身を置いている職場でも、いつかこうなるのではと思っていたところもございまして、この機にしっかりと体を休めた方がよいと判断したようでございます。決して、今回の事が原因ではございません」

「彼女は頑張りやさんでしたのね。お会いできないのは残念ですけれど、確かにしっかりと直した方がよろしいわ」

「重ね重ね、お優しいお言葉、感謝申し上げます。…私ごときが申し上げる事ではございませんが、……彼女の体調が調いました後、また助力させていただけたら、幸いでこざいます」

「もちろんよ」


にっこり微笑んで返せば、キリルはほっとした表情になる。


……先程から思っていたのだけれど、彼はセリーヌにずいぶんと同情しているのね。


一喜一憂といったように、表情を変えるキリルを見つめてしまう。

私はあのとき、セリーヌが彼に抱かれて浮かべていた表情を思い出した。


側仕え同士なら、気安いような打ち解けたような雰囲気はわかるのだけれど、主従の関係……のはずよね?

でも、あの時、彼に抱えられていた彼女も笑顔だった。

………………ふむ。


「あの……お嬢様?他になにか知りたい事がおありですか?」

「お嬢様」


じっと観察している事にアルリックも嗜めるように声をかけてくる。


ーそうだわ。


「ねえ。アルリック。私、彼女のお見舞いにいきたいわ」

「えっ!」


驚きの声をあげたのは、キリル。

アルリックは無言のまま、しかし「了承できるわけないだろう」とばかりに、眉間にシワを寄せた。


「お嬢様。…彼は、彼女について事情は心得ていると思われますが、子爵家としてはいかがなものでしょうか」

「え?」


アルリックはちらりとキリルを見て口を開く。


「…失礼ながら、彼女は子爵令息ケビン様の侍女です。彼女へのお見舞いは、許されません。…お嬢様が強く願えば叶うでしょうが、その場合、叱責を受けるのは彼女の方でしょう」


私はくるくると思考を巡らせる。

つまり、身分のある者が他家の「ただの」侍女に見舞いに行くなんていうのは、あり得ないのか。

なら、身分がある同士なら?


「……じゃあ、ケビン様お見舞いに行くという理由はどう?」


キリルはぎょっとした表情になる。

アルリックは、そんな私とキリルを見て小さくため息をついた。


「お嬢様の練習のお相手は子爵令息であるケヴィン様ですので、子爵家に訪れる理由は成り立ちます。お嬢様が行くと先触れを出せば、子爵は歓迎して下さいましょう。ですが、まず、婚約者でもない異性の方の屋敷に出入りする事は、旦那様もお許しにならないでしょう」

「こ、婚約者?」

「お嬢様のお年でも、早いということはないのです。旦那様もすでにお考えになっていらっしゃるでしょう」


婚約者、か。

「乙女ゲーム」では、第二王子の7歳の生誕パーティーで彼に会い、「ルゼナ」が彼に一目惚れして、強引に婚約者になるのだったかしら。

だから、今後はそうなる可能性があって、ちょっと不安になっていたけれど、まだ時間があると思っていたわ。

だけど、「ルゼナ」が言い出したから、王子の婚約者として直ぐに決定したわけではないだろう。

王妃の第1子である事と彼を取り巻く権力者たちの動きを見ながら、婚約候補のリストアップは前から行われていたはずだ。

そう考えたら、すでに始まっているかもしれない。

だとしたら、お父様も色々動いているかもしれないわね。

ーできれば、その候補から外すべく動いてくれると良いのだけれど。


ちょっと考え事が逸れてしまったのに気づいたのか、アルリックに「お嬢様」と声をかけられる。


「……その話はさておき、…現時点では、お嬢様の願いは難しいと存じます」

「そう…残念ね」


納得したから、渋々前言撤回する。

だけど、アルリックに止められた私に対して、ほっとした表情を見せたキリルをちょっとむうっとなる。


つまんないわ。

もう少し、キリル……とセリーヌについて聞きたかったのに。


まあ、セリーヌが復帰したら、聞いてみよう。


これ以上は聞く事も話す事もないので、改めて彼女へのお見舞いを言い、キリルを解放することにしたのだった。


セリーヌへのお見舞いは却下されてしまいましたが、ルゼナは諦めません。


※3/17 19:14※

キャラ紹介に、ルトヘル、アリス、キリルの項目を追加しました。

この回に書かれていない、裏の設定をちょっとネタバレしていま

す。


※6/25、キリル編、アリス編と分割しました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ