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3.ブックマークを規定する“パレートの法則”について

 書き手が最も気にしているのは「ブックマーク」についてだと思います。自作品のブックマークができるかぎり増えて欲しい。そしておそらく「ブックマークによって生じる格差はどうすれば無くなるのか?」という問題意識のもと、このテキストを読んでいるものと思います。


 その足がかりとして、まずは下の散布図(図1)をご覧ください。


 挿絵(By みてみん)


 調査した時期は2014年9月のものです。この図1は「累計ランキングトップ50作品のブックマーク数」を示したものです。縦軸が「ブックマーク数」、横軸は「順位」となっています。


 では次に、下の散布図(図2)をご覧ください。


 挿絵(By みてみん)


 先ほどと形は似ていますが、今度は「ファンタジージャンルにおける、完結済み連載小説トップ50作品のブックマーク数」を示しています。これもまた縦軸が「ブックマーク数」、横軸は「順位」となっています。


 累計ランキングそのものは完結済みかそうでないかを区別していません。そのため、この図2は、累計ランキング上位作品の中から「ファンタジー」のジャンルで、かつ「完結済み連載小説」であるものを抽出して並べた図である、と捉えることができます。


 さて、二つの図に示された点の軌跡を見比べてみてください。いずれの点も異なった条件によって集められているはずなのに、両方の図からわかる特徴は共通しています。


 整理すると、


①1~10位の作品が、特にブックマーク数で傑出している。

②そして1~10位までのブックマーク数を見ても、1位は傑出している。また、5位以上と6位以下とでは差がある。

③11位以下は、それほど目立った差がない。


 という特徴を述べることができそうです。


 このような特徴は、他のジャンル、他の種別についても確認できるはずです。1位の作品と2位の作品のブックマークの差と、49位の作品と50位の作品のブックマークの差には、驚くほどの隔たりが存在します。


――……


 能書きはこれくらいにして、話を「小説家になろう」から外しましょう。『日本物理学会誌』(Vol.66,p.60)において、久保田創氏が以下のような式を論考しています。


 本の売り上げ部数=1位の本の売り上げ部数*順位^-0.6


 この式により、本の売り上げ部数と1位の本の売り上げ部数とがきれいに関連づけられるそうです。


 この式を「小説家になろう」にも当てはめてみましょう。「本の売り上げ部数」を「ある作品のブックマーク数」、「1位の本の売り上げ部数」を「累計1位の作品のブックマーク数」に置き換え、順位に掛かっている累乗(上の式では-0.6)を求めます。


 2014年9月のデータで求めた場合、累乗の値は-0.3121となりました。


「それがどうした?」という声が聞こえてきそうなので、ここで上記の式について種明かしをします。


 P(x)=A*x^-α


 という式は、パレートの法則というものにちなんでいます。詳細は割愛しますが、αの値とこの法則が成立しうる「パレート分布」が、重要な意味を帯びています。


 このα(“パレート”係数と呼びます)が小さければ小さいほど、その分布には強力な不平等が生じていることを示します。


 そしてαが1以下の値をとるとき、その分布(この場合はパレート分布)の平均と分散は無限大に発散するのです。


 要約すれば、次のようになります;


①「ブックマークの分布には格差があるが、法則である以上是正できない」

②「平均が発散してしまうため、『平均的なブックマークの小説』などというものは存在しない」


 この二つの意味は、ブックマークが増えない書き手の人びとにとって、大きな衝撃を与えるものと思います。


 第一に、「今の作品のブックマークが極小である以上、それが大幅に増える見込みは無い」ということ。


 そして第二に「ブックマーク○○以上ならば人気作品、といった内規が通用しなくなる」ということ。


 この二つのことを理解することができるわけです。

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