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時代の組み立て方  作者: 雪ノ音
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真の世界

何十か持っている物語の原案の一つです。

要望などがあれば、続きを書いていくかもしれませんがメインで進めて行く予定はございません。

もう一つの<< ミッション「プリンセス」 >>の方をメインにする予定です。

1章 プロローグ


 

 世界は、いつも人間が壊してきた。


 20世紀の第一次第二次世界大戦。

 21世紀の疑似核戦争。

 22世紀の生物代理戦争。

 23世紀の時代にも戦争の影は迫る。


 人間は歴史を学ばない。

 人間は歴史を忘れる。

 人間は歴史を繰り返す。


 地球の滅亡が先なのか?

 人間の滅亡が先なのか?


 どちらにしても人間の歴史にだって最後は訪れる。

 しかし、人間は抗い、足掻いて、這いずり、延長を求めていく。

 そして歴史を作り出す。

 過去の学者は言う。


「今の歴史は人類が作ってきた。しかし必ずしも人類のみが許された特権ではない。」と


 1 真の世界


「陽神。ようじん? ヨウジン!」


 呼ぶ声に3回繰り返されるまで気付かなかった。

 寝ていたわけではない。

 陽神? そう自分が「陽神 切那」つまりは自分が呼ばれていると言うことだ。 

 幼い頃から中性的と言われてきた容姿もあり、教官としても怒りやすいタイプの僕に注意が飛んできたのは、同時に周りに対する意味も含まれているのだろう。そんな事に利用される人間の気にもなってほしいものである。


 太陽の光で蒼にも碧にもみえる瞳で、自身を呼び続けた教官に視線だけで聞いていますよと言う返事だけは返しておいた。その様子に「大丈夫かこいつは?」という雰囲気が教官から滲み出ているのは教室にいる誰もが感じ取っていたであろう。


 そんな周りの様子にも気にもせず、切那は再度、意識を自分の世界へと傾けた。

 今、受けている授業は歴史の授業だ。

 もちろん、自分たちの生まれる前の現実味のない戦争の歴史。

 何度も何度も聞かされてきた、人類の無駄な予習と、覚える気のない過ち。

 ただ、破壊が更なる生命力を生み出すことも歴史が証明している。


(僕たちは最悪の時代に生まれてきたのだろうか……)


 昔から興味あり、趣味から歴史を調べていくうちに授業は聞く価値を見出すことは出来なくなるほどに、自身の深い見解も持つようになっていた。

 切那が悩んでいる事は、一個人が悩んだ所で解決するような問題ではないが、ついつい考え込んでしまう。


「なぜ、ここまで世界は歪んでしまったのか。」


 今、この世界に生きている人間ならば、ほとんどの者が知っている事と曖昧に隠されているであろう知らない歴史。本来ならば学ぶ事も、思い出す事さえもを放棄したくなる歴史。


 21世紀中ごろ


 核兵器保有国は反撃と言う事を恐れ、保有していながらも直接使用する事は実質不可能であった。

 ただし、これを他の国に隠れて輸出する国は多からず存在していた。

 これがある程度の国家に輸送されるのであれば、実際は大した問題にはならなかったのだ。

 しかし、力のあったはずの保有国が破綻すると状況は一変した。

 厳密に扱われるはずの物が管理するはずの人間と消える事件が発生していたのだ。

 なぜ、過去形なのか?それは一定以上の混乱は大きな事件すらも情報として伝達する事が不可能になってしまうからである。


 世界はそれが使用される時を順調に進めて行った。

 更に、それを使用された場所が悪かった。当時の世界人口の40%が密集するアジアの2つ川の源流近くで使用されたのだ。

 これで下流域30億人の住民と地域が汚染。

 大量の死者が発生した。いや、少なかったとも言うかもしれない。

 この時点では、まだ世界は楽観的だったのだ。問題はこの後だった。

 汚染は思った以上に広がり、その地域からの難民が発生する事は避けられなかった。

 これが一般的には始まりの最悪と言われる歴史を生み出す。

 この時点での死者は1億人をこえていた。


 もし、ここで被害地域の人間が全滅していれば……と、なかった歴史をたらればで言ってもしょうがないが、その方がよかったと言わざる負えない。


 残りの29億人の食糧や治療を行える国が地球のどこにあるというのだろう。受け入れる事は自身の国の破滅である。世界中の殆どの国が徹底した受け入れ拒否を貫いた。一部の手を差し出した慈悲深くも愚かな国は、19億人難民の仲間入りしただけであった。


 そして、事件から2か月が経過するころには限界がを迎えた難民たちと、それを拒否し続けた世界とで生き残るための戦争の導火線が火点した。


 始まってしまえば1週間を待たずして、2億人以上血が流れ2億個以上の生ゴミが積み重ねられた。一度ついた火は2億人程度の血で消せる勢いではなかった。掛けられる血をその業火で蒸発させ続けて世界は燃え続け壊れ続けて行った。

 

 およそ、30年経過した頃、世界の総人口が10億人を切るのを数える頃に、流された血が業火を消火する為の量に足りたのだった。


 これが核による戦争ではなく、それが発端の疑似核戦争と後に言われる歴史である。

 ただし、あまりにスムーズな戦争への流れに違和感を感じ得ないと刹那は思ってしまうのだ。


「汚染範囲が広すぎる」

「発生地点が出来過ぎている」

「戦争の拡大スピード」


 多くないにしても「噂」だけで終わらせるには無理を感じる人間はいるだろう。

 もちろん、そんな証拠になるような歴史書はなく、授業で教えてもらう事も当然ない。

 いずれは知る機会がある事を期待はしているが、「噂」以上の事は聞けないだろう。


 ただ、一時的にしても戦争が終わった事だけは間違いがない事実だった。

 戦後に、少ないながらも国として残ったのは島国だった。それは陸続きでなかった事で移動手段の少ない難民との争いにならなかった事が大きな幸運だったと、殆どの人間が感じた事だろう。


 ひどい戦争と言われているが切那としては、飽和状態だった地球の状況を考えれば結果的に人類の歴史の延長に繋がる戦争だったとも思っている。


 ビィ――

 授業の終わりの合図か。


「授業はここまでだっ! 次の時には今日の事を質問するぞ。よ~く復習しておけよ、お前ら――」


 熱のこもった声と視線は、主に僕に向いたまま教室を出て行った。

 どうやら聞いているかいないか分からない僕への当てつけようだ。

 まあ、他の奴に聞けば大体は解決である。気にすることもない。


「まった~、考え事してただろ? 切那。」


 僕の前に座ったままブリッジをするように振り返った、その声の主は銀髪に焦げ茶のたれ目の瞳もつ、俺以上にやる気がない男「十 一二三」と書いてモゲキ ヒフミと言う変わった名前だが、あだ名は名前の数字を足した数の合計である「イチロー(16)」と誰がつけたのか絶妙すぎて、教官たちですらそう呼ぶ。


「俺が聞いてないんだからさ。お前が聞いてないと次の時たいへんじゃん?」

「……。他の奴に聞いてくれ。」

「……ま、だよな。でも、次は頼むぜ?」

「頼まれる覚えがないよ。」


 会話が耳に入った周りの視線が冷たい。

 馬鹿仲間と思われているのだろう。

 気のせいだといいのだが。


「イチローは得だよな。ある意味、諦められている部分あるだろ?」

「うらやましいか?」

「そう思える、お前の頭の中が心配だよ。」

「うっはー。心配ありがとうよっ!」


 もちろん、感謝される覚えのない心配ではあるのだが、この男には理解できないのだ。


「常にみんなに気にされている俺は幸せだな~~~~っと!」


 その後も意味のないイチローからの一方的な話と、陽神の適当な相槌は授業の開始まで続けられるのだった。


(世界は平和なのかもしれない)


 次の生体学の授業は22世紀の生物代理戦争が主な内容だった。

 人間同士の戦争ではなく、生物兵器による戦争の始まりだった。

 だがこれも、ほとんどの人間が知って問題のない事しか話さない。

 捻じ曲げようとする言葉の力が加わった授業。

 よって聞くつもりは毛頭ない。

 僕の知っている歴史は……。


22世紀初頭


 世界は10億まで減少した人口から増加はしていなかった。

 疑似核戦争は多くの施設と人を奪った。その被害は核施設すらも例外ではなかった。施設の損傷、管理者達の逃走が引き金になり、管理の行き届かなくなった「核」は簡単に制御に失ったのだ。


<<メルトダウン>>


 核エネルギーに頼っていた先進国は、これにより戦争以上の被害が出たとも言われている。

 当然ながら、土地は汚染され汚染外区域は「3割程度」しか残らなかった。

 更に砂漠や気候の問題から住むのに適さない区域を除くと生存可能区域は地球上の「2割程度」となった。


 人によっては、汚染により住めなくなった土地から逃れるための戦争、これは「疑似核戦争」の長期化の原因だという者までいるくらいだ。


 そして、この汚染こそが「生物代理戦争」の引き金である。


 22世紀に入り、人類が考えた事は汚染区域への進出。

 これが人間が目指す新たな繁栄への目標になっていたのだ。

 ここまでは考えても当然とも思うだろう。

 ただ、その方法が人類を更なる崩壊へと導いてしまった。


「「「汚染区域に住めないのであれば、住めるように進化すればよい。」」」


 通常の生物進化を待たずに、自らの科学による方法で進化を早めようとしたのだ。

 過去に何度、この選択で間違いを起こしてきたのであろう。

 今度も人類は神の領域に手を出してしまった。

 考え辿りついた先が、同じだった国が多かっただったのだろう。

 各国が汚染地域への「進出」から汚染区域の「領土化」に傾くのは人類の歴史の繰り返しだろうか。

 そうなれば、「領土化」に動き出す行動は他国との争いへと発展する事は避けられず、当初は動物の「環境適応キメラ化」による実験だったものも、「戦闘用キメラ化」へと目的が変わっていってしまった。

 ただ、その時点で終われば、まだよかったのだ。


 キメラの知能上昇と「キメラ」達を率いるリーダー的な知能は汚染地域を調査していく上でも必要事項だった。

 人間に限りなく近くも人間未満の知能などと言う、都合の良い結果が簡単に成功するはずもなかった。

 しかし、もはや動き出しだ人間の暴走は簡単には止まらなかった。

 当然の流れと言っても良いかもしれないが、その研究は更なる流れへ。

 

 つまりは人間へのキメラ細胞投与「凶人」計画が始まったのだ。

 その研究の結果が利益と民族の繁栄に繋がると言う考えの元に、研究は加熱の一途を辿り始めたのだ。

 我が国の研究成果があれば、世界を変えまとめて行くことが可能である。

 我が国が一番正しい方向に向かっている。

 我が国こそが世界の支配者にふさわしいと。

 それが単なる強欲である事を誤魔化し、当時「凶人」と言われるモノ達の小競り合いが始まり、それが大きな争いに発展するまでに時間はかからなかった。

 その力は強大だった。

 汚染区域は「キメラ」と「凶人」が入り乱れ、汚染よりも死臭が戦場を埋め尽くしていた。

 状況を現地見れないだけに結果だけを知り、結果だけを求める研究者たちは更なる死臭を作り出す作業に没頭していった。

 

 しかし、その時はやってきた。

 均衡は簡単に破れるものだ。

 それまで長く続いた均衡こそが奇跡的だった。

 汚染地域での戦闘に勝利した者が、次に求める事は相手の国の占領。

 ついにその力が人々の頭上に向けられた時に、それまでの愚かな行為が自分たちの身を焼く事になったのだ。


 一旦、町に入られてしまえば人間などは「キメラ」の餌であり、「凶人」達の敵にさえなりえなかった。


 空も大地も、翼の持ち、角を持ち、牙を持つ、新たな人類「凶人」に蹂躙されていった。


 この時に「キメラ」「凶人」「人間」の中で真の支配者と喰われるものの立場が、それぞれの心に刻み込まれたのだ。


 こうして世界は人類のから離れて行った。

 これが刹那の知る歴史だった。

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