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方言カレシ  作者: 七瀬 シオン
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*デビュー初日* 出会い

太陽が優しく緑を照らし、春風が頬を優しくなびく今日この頃。

今は、卒業シーズン。

そして、


「入学式。」


部活に明け暮れた中学時代を過ごしたあたしは、放課後、友達とゲームセンターに行ったり、ご飯を食べに行ったり、映画を観に行ったり、好きな人とデートに行ったり、そんなごく普通の青春を未だ味わっていなかった。

勉強は中の下。運動も得意な方ではなかったけれど、“面倒見が良い”と、バレー部のコーチに、

中学2年の秋から主将を任された。その事もあり、中学時代の思い出は、ほぼバレーの事しかない。

バレーは好きだったし、それなりに青春は出来たと思うけど、周りの友達は好きな人の話とか、彼氏とかの話で盛り上がっていた。

正直、羨ましかった。


だから、高校生では、好きな人を見つけて、素敵な人と恋に落ちて、デートをして、そんな事を友達と話したりして、今まで出来なかった事をしたいんだ!


そう、いわゆるこれがあたしの目標!


「高校デビューなのだ!!!」



* デビュー 1日目  【出会い】*


新しい学校。新しい制服。新しい友達。

今日からあたしは東京都内のこの城東高校の新一年生。門の前で勢いよくガッツポーズをし、胸のリボンを強く結んだ。


入学式は校舎の二階にあるとてつもなく大きな体育館で行われた。こんなに人がいるなんて。正直驚いた。通っていた中学もそれなりに生徒数は多かったけど、さすが高校。規模が違う。


どうしよう。緊張してきた。・・・

隣の男の子、髪の毛金髪だし、周りの女の子はなんか今どきJK。・・・

あたし、手汗半端ない・・・

ともちん(中学時代の友達)達と一緒の高校にすれば良かったかなあ・・・

正直あたし、結構人見知りなんだよね。

いやいや、そんな性格も直そうと誰も志望しなかったここを選んだんじゃない!!新しい自分になるんだ!

新しい環境で、いっぱい友達作って、最高な青春ラブライフを送るんだ!!




「・・・君たちは今日からこの学び舎で同じ時間を過ごし・・・」



こういう行事恒例の校長先生の話はどこに行っても長い。そしてその重低音に眠気を誘われる生徒も少なからずいた。


どうしよう・・・なんかお腹痛い・・・この後新入生呼名があるのに・・・

とにかく耐えろ。今は耐えろ!!。

こんな緊張から来る痛みなんて、あの試合に負けた後のワンマンよりマシよ!!!


「おい、あんた大丈夫か?」

「友達100人・・・ワンマン・・・友達・・・ワンマン・・・」

「・・・・152番、藍澤千秋」

「友達は・・・ワンマン・・・」

「藍澤千秋さん?」

「おい・・・藍澤ってあんたの事じゃねえの?」

「藍澤さん?」


先生が3回目にあたしの名前を呼んだ時だった。

はっ っと、ようやく自分の名前が呼ばれた事に気付いた。周りの先生達もざわざわしている。早く、早く返事をしなくちゃ・・・


「は・・・は・・・ぃ」


だめだ。お腹と頭の中がぐるぐるして・・・


足の力が一気に抜けた瞬間だった。身体がのけ反るようにして天を向く。

ああ、体育館の照明って、こんなに明るかったのね。

入学式早々、一番大事な時に、わたしは倒れてしまうのね。この・・・ヘタレ・・・

最悪な新学期の始まりを覚悟したあたしはそっと目を閉じた。

その瞬間、ドサっと誰かがあたしの背中を支えた。


薄らと細くなる視界には、あたしを抱える一人の男の子。

照明が破壊力あり過ぎて、顔は陰って見えなかった。


「藍澤千秋さん!?」

「 はい。 」

四回目のあたしの呼名。誰かが返事をした。


そこからの記憶は正直ない。

気づけば保健室のベッドの上。もう夕方だった。


「あら、ようやく起きたのね。体調はどう?」

「あ、あの・・・入学式は?」

「あなたよほど緊張してたのね。大丈夫よ。軽い貧血だから。」


高校名物の綺麗な保健の先生。長い黒髪で唇は真っ赤に実ったさくらんぼみたいなプルプルツヤツヤ先生。


「あの・・・」

「そうだ、式の途中であなたをここまで運んでくれた子がいたわよ。いい子ね。あんな大勢の中、先生でさえもあなたの事に気付けなかったのに。」

「えっ・・・そ、その人の名前なんて言いますか?」

「えっと・・・確か式の時の呼名では・・・藍澤君?だったかしら」

「藍澤??・・・あたしと一緒の名字だ・・・」

「あら、偶然ね。じゃあおなじクラスじゃないかしら?お礼ちゃんと言っておくのよ。」


にこりと笑った先生の笑顔はまるで絵に描いたように綺麗で、思わずぽっと頬を染めてしまった。


「紹介が遅くなったわね。私は保健医の南優子よ。これからよろしくね。」

「は、はい!藍澤千秋です!よ、よろしくお願いします!!」


藍澤君には明日学校でお礼を言おう。

どんな人かな?・・・なんて始め話しかけよう・・・それより顔、分かるかな・・・

でも、あたしを助けてくれた・・・きっと優しい人なんだろうなあ・・・


次の日出会うその人の事ばかりを思いながら、もしかしたらこれは恋の始まりかも?!なんてうかれていたあたしは、次の日、悪夢を見るのだ・・・・


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