悪魔シェアリング(ハートフル・学園・恋愛)
都内某所のアパート。それが今日、一人の少年に宛がわれた。
少年の後見人が、まだ幼い彼と一緒に暮らすという手段を取らなかったのは、その少年が不幸を撒き散らすからである。
彼と遊んでいた子供達が怪我をするなんていうのは良くある事。彼と仲の良かった子は交通事故に遭った。幸い、一命は取り留めたが、その子が再び少年の前に現れる事は無かった。
終いには、少年の家族全員が急死。
その日、少年が風邪をひいて床に就いていた。買い物に行った母とそれに着いて行った弟が工事現場の近くを通った時、上から大量の鉄骨が振って来て、その下敷きになったのだ。
それを聞き、病院に駆け付けようとした父も、職場と駅の間で車に撥ねられた。
そんな少年の後見人になる事さえ、始めは渋ったのだが、周りから強制的にこの立場に就かされた。
この様な経緯があって、少年は七畳半のアパートの一室で膝を抱えて座っている。彼は顔を伏せている為、表情が分からない。
彼はもうかれこれ数時間はこうしていた。彼は絶望を感じているのだろうか?それとも、もはや何も感じていないのか。
少年が再び動き出したのは、疲れ果て、上半身を倒し、背を下の畳に着けた時だった。
生気を感じる事が叶わない、光を失った彼の瞳。それが本棚の一番下に一冊だけ残された黒く分厚い本を捉える。
少年は導かれるように手をその本に伸ばす。手に取ると、本の重みがずっしりと手にのしかかった。
本の表紙には、何か大きな模様と日本語で無い文字が書かれている。
表紙に書かれている事が理解できなかった少年は本に対する興味が失せ……いや、最初から興味という感情があったかすら疑わしい。
本が手から離れ、下に落ちる。それに遅れて、少年の手が、落ちた拍子に開かれた本の上に降って来た。
本が落ちた時に紙で切れたのか、少年の手から薄らと出血している。その血が本のページに付着した次の瞬間、そのページに描かれていた表紙の物と同じ模様が赤く光り、部屋全体に広がった。
少年はそんな超常現象に興味を示す気力すら残されてはいなかったが、そのまま暫くすると、少年の部屋のインターホンがなった。
「……えっと…入りますよ?」
少年が反応しなかったので、少し戸惑いながらも、来客者は扉を開け、中に入った。
「…えっと、こんにちは」
そう少年に挨拶したのは、真っ直ぐな金髪を腰まで伸ばした女の子だった。彼女は少年の元に歩み寄り、畳に腰を下ろし、その優しげな紅眼で彼を見つめる。
「私は悪魔序列五百七十三位のテナと申します。本題に入る前に少しだけ失礼しますね」
テナと名乗る女の子はそう言うと、右手を少年にかざす。すると、その右手が光りだし、それと同じ光が少年を包み、その光は弾けるように部屋を光で満たした。
光が晴れると、テナは目を細めて、口を開いた。
「あなたに纏わり付いていた瘴気を払いました。それでは、本題に入ります。あなたの死後の魂と引き換えに願いをお申し付け下さい、マスター」
これが、少年と悪魔の少女の出会いである。
「……やはり、私は君の事が嫌いだよ」
主人公のクラスメイトにドジっ娘エクソシストがいます。
彼女がテナに初めて会った時、テナを討伐しようとするのですが、ドジっ娘エクソシストは呪文詠唱に失敗し、攻撃しようとして自爆します。
ちなみに、その現場には主人公も居合わせます。
目指すは、小島あきら作の「まほらば」です。
最後の言葉ですが、それにはラストの展開を語る必要があります。
主人公とテナは結ばれるのですが、テナは不老不死。最終話で主人公の再起を見取り、そして、テナは主人公が死んでも尚、彼との契約を果たします。
ちなみに、契約内容は、「ずっとそばに居て…」
死の直後、主人公から魂が抜けだします(魂の見た目は光る球体)。テナも自分も肉体を放棄し、主人公と同じ、魂だけの状態になり、主人公の魂に寄り添う。
その二つの魂を、テナの父親が回収します。
その時に、テナの父が呟いた言葉が「……やはり、私は君の事が嫌いだよ」
勿論、彼は魂は糧にせず、二人がずっと寄り添っていられるように保管します。