表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

第一話:はじまり

「はああ……」


 これで何度目だろうか。セシリアは鏡に映る、美しく飾り付けられた自分自身にため息をついた。

 いい香りのする香水、豪華なネックレス、きらびやかな淡いピンクのドレス。

 女性なら喜びそうなものを全て身につけていても、セシリアの心はこれっぽっちも晴れなかった。


「セシリア様」


 ノックの音に気づかなかったらしいセシリアは、ビクリと肩を跳ねさせた。


「ドリー」


 黒いメイド服を着た茶色い髪の彼女は、暗い顔で近寄っていく。


「ご気分は如何ですか」


 彼女はセシリアの肩に乗せ、その心を案じるように撫でた。鏡越しに合っていた目線をぎこちなくそらす。


「だ、大丈夫! お父様がお亡くなりになって、お母様があのような病気で。だからもうこれは、仕方ないわ!」


 それはどこか、彼女自身を慰めているかのようであった。


「陛下に気に入られて、あの方の妃になれば。今や名前だけになってしまったこのアディソン家も復興する。そうでしょう、ドリー?」


 それは病床に伏せる母親が、何度も何度も涙ながらに訴えたことだった。それをオウムのようにドリーに告げる。


「セシリア様。私は分かっております。あなたはアディソン家のことではなく、奥様の身を案じられているのだと」


 まるで姉妹のように育ったドリーには、セシリアの心がよく分かっているようであった。


「でなければ、あのような冷酷なお方の元へなど……」


 そこでドリーはハッと口をつぐみ、「出すぎたマネを」と頭を下げた。


「いいの。こうなったら、なるようになる! いいえ、やってみせるわ!」


 明るくそう返すセシリアに、ドリーは、


「ええ、セシリア様ならきっとよいお紀様になられましょう!」


 と鼻息を荒くした。

あとがき

 他にも後宮ものを書いていますが、あっちがシリアスなもので、むしょーにほんわかしたものが書きたなりました……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ