とある高校の何でもない放課後の一幕
ある日の放課後。僕は、いつも通り「現代文化研究会」の部室に来てインスタントコーヒーを飲んで空を見ていた。
静かな部屋、コーヒーの苦み。僕は、渋い大人になっていた。
(いいな、この感じ。まさにモダンな雰囲気のある個人の喫茶店の、ダンディなオーナーみたいじゃないか)
内心そう悦に浸っていると、ガラスが割れそうな勢いで部室の扉が開かれた。
「ああ~ムカつくムカつくムカつく~。なんだってあんなに、上から目線なんだい!同級生の誼というのはないのかね。あの冷血女はっ!」
部長が、その小さい体を大きく動かし不満をぶちまけながら、部室に帰ってきた。
「全く、常識に凝り固まった。あの石頭め!こっちが何もできないと思っているのかね!堅物めっ!アシスタント君、コーヒー!」
部長は、愚痴をこぼしながら椅子に座って、コーヒーをリクエストしてきた。
「また、会長からのお説教ですか?」
僕は、部長の怒りを背に受けながらコーヒーの準備をする。シュガースティックはいつもは3本だけど、怒りモードの時は倍の6本。
「これに、ミルクとガムシロップも入れてっと……はい、どうぞ。いつもの部長スペシャルですよ」
部長の前に激アマコーヒーが入ったマグカップを置く。
「ああ、ありがとう」
部長は、美味しそうにコーヒー“という名の”甘い飲み物を飲む。
プハーっと、大きく息を吐き出した。
「いつもながら、君の入れてくれるコーヒーは美味しいねぇ」
「お粗末様です」
直球過ぎる、賛辞に僕は口元がにやけるのを隠すようにカップを口元に運んだ。
コーヒーを飲みほした、部長の口元に不敵な笑みが浮かんだ。
「くくく、さあて。あの女狐は、今度の即売会で成人向けの相手役として世の男性諸君のオカズにしてあげようではないか。それとも、彼氏を寝取られる彼女役でもいいな」
部長が、悪い顔をして不穏なことを口走っている
「部長……肖像権の侵害ですよ。」
「なんだい、君はあの女狐の肩を持つのかい!?」
部長が憤慨する。
「肩を持つというか、そんな事しなくても生徒会長をオカズにしてる男子はいますよ」
「…………ぇ!?」
僕の一言に固まってしまう部長。
「まさか、君もかい?」
上目遣いで、僕を見てくる部長にドキッとしてしまう。
「う、うん」
咳払いをして、仕切りなおす。
「僕は、違いますよ。それに部長の作品を個人的な報復にしてほしくないです」
部長の目を見て、真摯に答える。
言葉は別に嘘ではない。部長の作品は面白いし、プロの編集の人が担当についてもらっている位部長は凄い人だ。
だから、そんな人が個人的な私怨で作品を書いてほしくなかった。僕のエゴだけど、書くなら部長は楽しんで作品を書いてほしいと思う。
「………ふん、君がそこまで言うなら今回はやめておいてあげようじゃないかっ!但し!君の要求を呑むのだから、何か対価を寄こすのが筋じゃあないかな~?」
部長が顔を背け、こちらを下から覗き込むように近づいてくる。
「では、新作のクッキーが有るのでそれで許してもらえますか?」
僕は、鞄の近くに置いていた。保冷バッグから小ぶりな箱を取り出した。
「まあ。それで手を打とうじゃないか。さあ、早く準備したまえ」
渋々納得したといった言葉だが、足は期待に揺れる小さい子供のように揺れていた。
(もう、部長の機嫌は直ったかな?)
「すぐに、準備しますね」
「~~♪」
部長の鼻唄を聞きながら、僕はコーヒーの入れ直しとお茶請けの準備を始めるのだった。
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