表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/45

第24話 出立の予定。

セリオはセヴィリアーノ様に用意された貴賓室に向かっている。


とんでもない結末で終わった生誕祭から、もう5日たっていた。


あの後すぐに貴族院が開催され、アインゲル殿下改め、アイーダ王女殿下が全員の賛同を得て、女王となった。

翌日には戴冠式を行い、その日のうちに彼女の叔父であるガイスカ将軍と内政を整え始めた。この3年のうちに失脚させられたり、解任された役人が呼び戻された。


グルツ候の持っていた爵位は取り上げられ、国預かりになった。

拘束された3人は、事情聴取に応じているらしい。まあ、いずれにしても処刑だろうが。

小耳にはさんだところによると…フールの王女は正妃になれなかったことに憤っていた。挙句に、子も出来なかった。親ほど年の違うグルツに、子どもさえできればいいと手籠めにされて…まあ…権力者の子に産まれるというのは…中々、難儀なものだな。


グルツ候の息のかかった奴らも沢山拘束されたようだ。みな国政の中心に置かれていたから、これから新王は腕の見せ所だな。


造幣部の役人にはあの護衛をしていたカミロという男が選ばれて、早速、セヴィリアーノ様に新規格のビダル国金貨の発行と、帝国の国庫内の金貨の順次取り換えを提案して来た。セヴィリアーノ様に目配せされて、私が先方の用意した誓約書にセレドニオ様のサインを入れた。


とりあえず、お祝いに持ってきた偽金貨分は、もれなく金で支払うらしい。なかなか頭の柔らかい、いい人材のようだ。


もう一人のレマ族の男は、いつもセヴィリアーノ様の部屋の前で警備していたが、今日はいなかった。替わりにビダル兵が2名、警備している。


まあ、確かに、内政さえ落ち着いてくれて、フールの影響力が及ばないのであれば、今まで通り、ビダル国の存続を容認しても帝国は問題は生じなさそうだ。


…セレドニオ様は、ビダルを取って来るのかと思っているのだろうが、軍事力が分散することを考えれば、セヴィリアーノ様の考えの方が正論だと思われる。

しかも、今回の件で、ビダル国とは友好な関係を築けそうだし。まあ、恩を売ったというか…。


部屋に入って、どこから手に入れてきたのか…ビダルの金鉱の採掘状況表を眺めていたセヴィリアーノ様に声をかける。


「セヴィリアーノ様、出立は何時になさいますか?」


「ああ。今、フールの兵がその辺に潜んでいないか、うちとビダル軍が協力して国内を調べている。あと、3日もしたら終わるかな。」

「左様でございますか…それでは、兵を一日休ませて、5日後の出立の予定で。」


「ああ。」


書類から目も離さずに、セヴィリアーノ様が答えた。



*****


今日、パヴァンが俺のところに挨拶に来た。

ヴァミばあさんのところに報告に寄ってから、旅に戻るのだそうだ。


いろいろとすっかりお世話になったので…俺の剣も磨いて保管しておいてくれたし…礼をしようとすると、

「サティシュ、あなたの旅は、まだ終わっておりません。」

と、断られた。俺の旅が終わったら、ヴァミばあさんからお願いがあるらしい。


レマの民と一緒で…俺の旅など、俺が死ぬまで終わりはしない。


「俺のできることなら、何でも。」

そう答えると、パヴァンは満足そうに笑って、部屋を出て行った。



入れ替わりで入ってきたセリオに、出立は5日後、と告げられる。



そう言えばパヴァンはこの男のことを、タルシット、だと言っていた。どんな意味だと尋ねたら、<見る・人>と答えた。なるほど。よく人となりを観察しているものだと感心した。


セリオは、兄上の<目>だ。

俺にセリオが付いていなければ、こんなふうに兵を動かしたり、金貨を100枚用意しろということもできはしない。

俺は、将軍とは本当に名ばかりの、兄上の駒でしかでしかない。


「月が輝くのは、太陽があってのものだと忘れるな!」


俺と同じ顔が…冷ややかな目を俺に向ける。



俺はまた5日後には…あの生活に戻る。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ