第20話 合流。
予定通り国境付近の領主館を借り受け、周囲を兵で囲ませてそのまま野営させる。
3月20日。
ビエイトがさっきから玄関先をうろうろしているのが見える。日にちの指定はあったが、時間までは書き込まれていなかった。
夜になって、訪問者があった。屋敷の周りは松明がたかれて結構明るい。
セヴィリアーノ様お一人かと思っていたら、護衛らしい男が2人と、女が一緒だった。みな、大きなショールで顔を覆っている。
「セヴィリアーノ様!!」
そうだろうな、とは思ったが、ビエイトが泣きながらしがみついていく。一歩遅れて、私も挨拶に出る。
「どうしてもっと早く連絡を下さらなかったんですか!!」
「しただろう?」
そんな会話が聞こえてきた。
「お疲れでございましょう。お部屋の準備ができております。…その女性は?」
まさか、女連れとは思わなかったので、部屋の確認をする。
「ああ、セリオ。こいつは俺の侍女だ。同じ部屋で良い。」
セヴィリアーノ様がそう言うと、深々と女がお辞儀をした。ショールで顔は良く見えない。護衛らしき男の一人は、褐色の肌をしている。レマ族のようだ。傭兵にはよくいる。
セヴィリアーノ様が玄関に入る前に、振り返ってショールを取って、屋敷を取り囲んでいた兵士に大きく手を振った。おおおおっ!と歓声が上がった。
…まったく…こいつらはいつもいつもうるさい。
ショールは火傷の跡を隠すためかと思っていたが、間近で見てもそうわからないほど、跡は残っていなかった。
領主の部屋にセヴィリアーノ様をご案内して…
「大変申し訳ございませんが、私に、あなたが本物のセヴィリアーノ様であると証明していただけますか?」
そう言うと、彼はめんどくさそうに、腰に下げた太刀を抜いた。
双竜の彫が入り、赤い石がはめ込まれた太刀。
冷ややかなその刃が、私の首筋に当てられる。
「お帰りなさいませ。皇帝の月であらせられるセヴィリアーノ様に栄光あれ!」
退室する際に、殿下の後ろに立つ侍女と目が合った。
背筋を伸ばして…臆することなくじっと私を見ている。




