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第17話 安宿。

夜に紛れて、カミロが帰っていった。何か連絡したいときは、この宿のディヤ宛に恋文でも書け、と言っておいた。


パヴァンの部屋から、自分の部屋に戻る。

なんか…疲れた。


サティシュの上着と自分の上着をハンガーにかけて、洗面器にお湯を貰ってきて、サティシュの顔料を落とす。塗りっぱなしでかぶれるといけないし。優しくごしごしする。

「お前、あの男と、距離が近すぎる。あと、手をよく洗っておけ。」

「ん?」


されるがままにされているサティシュの機嫌がどうも先ほどから悪いようだ。私の手が…汚かったかしら?


もう一度湯を替えて、綺麗に拭きあげる。


「しかも…恋文?冗談じゃない。」

「ん?いやいや、妥当な提案でしょ?業務連絡ってわけにはいかないんだし。」

「恋文が、か?あの男のことだ、本気で恋文を書いたらどうする?」

「あ?そんなわけないでしょ?カミロは私の遊び相手だったんだよ?」


「あ…遊び相手?」


おとなしく私に顔を拭かれていたサティシュが目を丸くする。


「そう。小さいころから一緒だった。フアナと3人で。勉強も、剣術も。カミロとは小さい時、お風呂も一緒に入って乳母に叱られたりしたなあ。はい。背中も拭こうか?」

「…風呂…?」


サティシュが私の手を取って無理やり洗面器に押し込む。

「背中はいいから、お前の手を洗え!」

ごしごしと私の手を湯の中で洗い始めた。


な…なに?




*****


いろいろあって疲れたのか、この国で自分の味方が見つかってほっとしたのか、横になるとすぐにディヤは寝息を立てた。


あの男…ディヤに抱き付きやがった。


しかも手当てを受けて、水まで飲ませてもらっていた。

…ディヤは…誰にでもするのか?


…しかも…風呂まで…一緒に?


挙句にあの男…ディヤの手に、キスをしやがった。


思い出すとイライラしてくるので、抱えて寝ているディヤの布団から出ている手を取って、口づける。右手も、左手も。


その上…恋文を書いてよこせ?だ?


…あの男が書いた恋文を、こいつはどんな顔で読むんだろうか?



ここを片づけて俺が帝国に帰ったら…あの男はディヤの側近に戻るのだろう。

そうしたら俺は…どこにいても、ディヤに手紙を書く…か?


ふと、出先のテントでディヤに手紙をしたためている自分の姿を思い浮かべて…いたたまれないほど寂しくなる。


仕方がないので、ディヤを抱えなおして、こいつの程よい胸を両手で覆って、髪に顔を埋めて大きく息を吐く。


とくっ、とくっ、とディヤの心の臓が打つのを感じる。


…とくっ、とくっ…


怒りに任せて捻りつぶしたらあっという間だろうこいつが、俺の腕の中で何をされても起きないのが…そんなことが嬉しい。


…とくっ、とくっ…


こいつは…俺が帝国に戻ったら、誰かの腕の中で、こうして眠るんだろうか…。


遠くで犬が吠える。


俺はぎゅっとディヤを抱きしめて、目を閉じる。












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