表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/44

008 器用な人は長生き出来そう

アストの器用値は補正込みで30。


防戦一方だった斬り合いから、少しだけ余裕が生まれる。


だがそれでもまだ足りない。


アストは更に思い切って20器用に追加投入。


補正込み60。SP残り50。


圧倒的だった技術差は目に見えて埋まり、剣の扱いがこの短期間で飛躍的に上手くなる。


「おいおい! なんだそれは! お前SPを使い切ってなかったのか!?」


俄然ブルタの方が技術は上だが、彼の表情からは焦りが見える。


アストの剣術がブルタの剣術を捉えたのだ。


『【見切り】獲得。【縮地】獲得』


そしてそれを表すようにスキルを獲得した。


【見切り】

[相手との器用差が少なければ動作からの予測が付きやすくなる]


【縮地】

[踏み込むときの軸のブレが減り、体力の消費が減る]


両方【N】ランクのスキルだがこの二つのスキルのお陰で、アストは格段に戦いやすくなっていた。


【見切り】はこの戦闘で格上のブルタの動きを見続けた上で器用が上がったのがトリガーだろう。


【縮地】はこの三日間、ゴブリンとの接敵の時に意識して強く踏み込むようにしていた経験が今スキルに昇華したのだ。


逆に言えば、【N】ランクのスキルとて、習得するのにはかなりの苦労が必要になるということ。


〖SSR〗ランクの【天賦の才】が激レア扱いなのも頷ける。


(器用をもうちょい振れば拮抗出来そう)


アストは更に20器用に振る。


結果、拮抗し始めた。


器用が補正込みで90になってやっとの拮抗。


武器はこちらの方が攻撃力が少しだけ高いため押し負けはしないが、短剣二本の速さの前に攻めあぐねる。


(残りSP30。腕力と敏捷に10ずつ振るか……体力の消費が加速するね。残ったSP10は温存)


腕力もあればあるほど一度に込められるエネルギー量が増え、体力の消費も増すと予測し、今まで振らなかったがこの拮抗状態を崩さなければ、結局こっちの方が先にバテるだろう。


アストはSPを振り終える。


結果、アストの上がったステータスはこうなった。


腕力30補正込み45。

敏捷90補正込み135。

器用60補正込み90。


そして戦いながら推測するブルタのステータスはこちら。


腕力50オーバー。

敏捷140オーバー。

器用90程度。


仮にスキルバフを抜きにして全てをSP換算したら最低SP250。だが、腕力と敏捷を上げれば上げるほど体力の消費も激しくなる為、アストの体力をもとに考え、ブルタの方が余裕あることからプラス60は体力に振らなければならないだろう。合計SP310。


あと振ってありそうなのは頑丈ぐらいだろうか。


さすがにDランク冒険者が一般人並の紙装甲とは考えづらい。最低でも10は振っていると仮定して合計SP320。


アストは当初、レベル一つにつきSP10獲得すると仮定。だがその場合、レベル22と公言するブルタの合計SPは220になる。


(可能性があるとすればブルタ氏が嘘つきか、僕みたいにバフスキルがあるかだよね)


もしくは【天賦の才】以外にもSP取得量を増やすスキルがあるかもしれないが、ブルタの言い方からして持っていないと考えていい。


持っていたら拮抗するまでもなくアストはのされている筈だからだ。


アストは息切れになりつつブルタに問いかけた。


「最後のお願いだよ。教えておくれ。もしかしてレベルによって手に入るSPは変わるのかな!?」


焦りを見せながらも堅実に攻撃の手を止めなかったブルタはアストが限界なのだと判断し、口が軽くなる。


「そうだ。増えるぜ? 一定のレベル事にな……だがそんな時間はねぇーだろ? ここで坊ちゃんは終いだからよ」


ゾクリとアストは背筋が凍りつき、無意識に残ったSPを頑丈に振る。


次の瞬間、ブルタが消えアストが吹き飛ばされていた。


「がはっ……な、なに今の……?」


全身打撲で転がるアストの前に、息が荒れたブルタが拳を振り抜いた姿勢を元に戻す。


「ふぅ〜今のは俺が唯一持つ【R】スキルだ。気力の消費が激しいから滅多に使えないけどな」


既に勝利を確信したブルタは呆気なく答える。


「こ、効果は?」


吹き飛ばされたときに手放した鋼の剣をブルタに拾われ手ぶらで立ち上がるアスト。


もはや勝負は付いたとばかりにブルタは親切に教えてくれる。


「【加速】。瞬間的に敏捷を倍にするスキルだな」

「ずっる」

「坊ちゃんが言うなよ。まさかレベルを誤魔化していたとは思わなかったぜ。お陰でヒヤリとしたよ。まあ、もうお終いだがな」


鋼の剣を突き付けられアストは崩れ落ちる。


両手を地面に付き顔を伏せる。


「ほら、大人しくしろよ」


ブルタは腰のポーチから縄を取り出そうとする。


「今度はぐるぐる巻きにしてやるから、逃れられねぇーぞ」


視線が一瞬ポーチに向いたその瞬間、アストは行動を起こした。


「スキあり!」

「なっ!?」


密かにクラウチングスタートのポーズを取っていたアストは【縮地】を活用し、瞬間的に加速しブルタの脇をくぐり抜けた。


組み伏せるという選択肢もあったが、上手くいく保証がない。ましてやほぼ全てのステータスが負けているのだからリスクしかない。


それにまだ勝てる可能性が高そうな選択肢が残っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ