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060 幸運の鱗粉

ボス部屋と思われる鳥居の前で休憩をして、装備を改めいざ参らんと踏み出そうとした時、ユメミがアストの前をバタバタと羽ばたき、その羽から鱗粉を撒き散らす。


「うえっ!?」


金色が混じった青い鱗粉がアストに掛かると、驚くことが起きた。


『【幸運の鱗粉】が発動しました』

『一定時間幸運の最終値が200%に増加します』


久々のアナウンス。


そしてアストの幸運値は1680から3360へと倍増していた。


ステータスの画面には見慣れぬ、〖付与〗という項目に[【幸運の鱗粉】59:50]と残り時間が表示。


そしてやりきった感を醸し出すユメミの姿は、出会ったばかりの透き通ったアイオライトのような色合いに戻っていた。


「幸運の道標……本当だったんだ」


ドクンと心臓が高鳴る。


この時アストは本当の意味でユメミが伝説の魔物である宝石蝶だと認識したのだ。


「もしかして魔力をチャージして、それを鱗粉にしてるのかい?」


バタバタバタバタ。


そう。正解。当たり。と、言わんばかりに普段より多めに羽ばたく。


「食事も兼ねてるんだね。……リチャージにどれぐらい時間が掛かるか分からないけど、最高のタイミングだよ! ありがとうユメミ」


ボスに挑まんとする最高のタイミングでの支援にアストは指先に止まったユメミ事クルクル回る。


「っし! 制限時間がある事ですし……ぱぱっとボスを処しに行くとしますかー!」


ウルフダンジョンでの初のボス戦というのに、アストは一切の気負いなくボス部屋に足を踏み入れた。


相手がボスオークと同等の相手なら、さらに強くなったアストの相手ではない。


鳥居を潜れば、蔦が鳥居の隙間を埋めつくさんばかりに生えてきて戻れなくなる。


退路は絶たれた。


「ユメミ。いつも通り少し離れていてね」


素早く鋼の剣を抜き去り、軽く腰を落とし構えを取るアストからユメミはバタバタと羽ばたき遠ざかる。


黒い光の粒子が集束し、形を作る。


「へぇ〜今回も集団戦というわけですか」


散々戦ってきたウルフ達が出現し、背後には倍近い大きさの一匹のウルフが鋭い眼光をアストに向ける。


(数はボスオークの時より少ないね)


ボスオークの時は三十匹ほどだったのに、ウルフ達は十匹程度だ。


それらが一斉に飛びかかってくる。


「ふっ! 大旋風! ……なんちゃって」


剣を振り回し、瞬く間にウルフ達を斬り伏せる。


「ごめんね。強くなり過ぎたみたい」


前座があっさり終わってしまった事にちょっぴり物足りなさを感じつつボスウルフに向かって歩き出すアスト。


そんな彼に構わずボスウルフは空に向かって遠吠え。


「アオーーーン!!!」


ダダダダ!


「「「ガウガウ!」」」


どこからともなく十匹のウルフ達が出現。


「リアルで“仲間を呼ぶ“を体験出来るとは!」


どうやら一筋縄では行かない様だと、アストは笑みを深めた。


それからは幾度なく襲いかかってくるウルフ達を鎧袖一触。


討伐数が三桁超えた辺りでアストはある予感が脳裏に走った。


「もしかして無限湧き!?」


その予感は当たり、三百匹超えた辺りでアストは確信に変わった。


【幸運の鱗粉】の効果時間は既に三分を切ろうとしていた。


無限湧き。


それはゲーマーにとってめんどくさいギミックの代表格。


それが体力に限りがあるリアルで起きればたまったものではないだろう。


だがアストは違った。


彼は──笑っていた。


「間違いない! ここは序盤の経験値稼ぎポイントだ!」


そう。


無限湧きとはめんどくさいギミックと同時に、ゲーマーにとっての経験値稼ぎの場になったりする。


(リミットは二分ちょいか……)


「今回はこれで終いにするけど……次は倍ぐらい狩ってやるぞ!」


アストの脳内で次の挑戦時に如何に無駄なく倒し続けられるかのシュミレーションが始まった。


迫ってきた新たなウルフ達を斬り伏せるなり、今まで放置していたボスウルフに【縮地】を使い一気に迫る。


通常のウルフの敏捷値が100超えないぐらいだろうが、そのボスなら敏捷値200以上はあるだろう。


もしAランク冒険者であるマルクと出会い戦わなかったら敏捷値が195だったアストはかなり苦戦を強いられていたかもしれない。


だが100近い差がある今、アストの踏み込みからの振り下ろしにボスウルフはほとんど反応出来ずに頭部がスパッ! と斬り飛ばされてしまう。


「やっぱり敏捷寄りだったから耐久面はカスだったね」


耐久寄りのボスオークですら以前のアストからの奇襲でほぼ瀕死に追い込めるのだ。それより遥かに耐久面が貧弱なボスウルフでは腕力値が180になったアストの攻撃はオーバーキルレベルであろう。


『レベルが22に上がりました。SPを60獲得しました』


「おっ。そろそろだったからね」


『レベルが23に上がりました。SPを60獲得しました』


「ふぁっ!? い、いいっきに2レベル上昇!?」


レベルの上がりづらさは身に染みているアストだからこその驚きっぷりである。


「どうして!? そ、そりゃあ、このボス戦だけで三百匹は狩ったけども……もしやウルフさん達は経験値がうまい?」


もしそうなら暫くはここに篭ろうかなと本気で検討しはじめる。

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