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058 【SR】ランクの剣

「ユメミ! おかえり。また会えるなんて嬉しいよぉ」


もう会えないとすら思っていたユメミとの再会により、アストは涙目になってしまう。


「その美しい蝶は……」


ジュラは言葉をなくしユメミに見蕩れ、マルクもユメミから視線を離せない。


アストは誇らしげに指先に止まったユメミを紹介する。


「さっき仲間になったばかりの宝石蝶? のユメミさんです」


外見のみでの判断の為、少し疑問符を加えながらユメミを紹介する。


「宝石蝶!? 伝説に出てくる幸運の道標」

「ユメミ。君はやっぱり凄いやつだったんだねぇ〜」


Aランク冒険者であるマルクですらお目にかかるのは初めてであり、言葉通り伝説級の希少な魔物である。


「アスト君……君は一体何者なんだい?」

「僕か? 知りたけりゃあ、教えてやる」


アストは不敵な笑みを浮かべ、マルクとジュラはゴクリと唾を飲み込む。


「数多の秘宝を探しに旅を続ける流浪の旅人……Dランク冒険者アストでございます!」

「いや、そういうことを聞いてるんじゃ……」

「そんなもん、どの冒険者でも一緒じゃん」


マルクとジュラはずっこけそうになる。


「いやだって僕は至って普通の冒険者だし。ユメミにはついさっき出会ったばかりだし」

「なら最初からそう言えよ」

「あはは……でも、凄いよ。そんな伝説の魔物に君は懐かれているんだ。これだけでも、グラン様に会わせる理由になる」


ユメミの存在はアストの思っていた以上に凄いもので、マルクですらおとぎ話で度々出てくるぐらいしか情報が無い。


「おとぎ話では、宝石蝶は不幸な人物の前にふらっと現れ、鱗粉を振り撒くそうだよ。その鱗粉を浴びた人に幸運が訪れるとされているんだ」

「アタイも似たようなもんを聞いたなぁ〜。なあ! 試しに鱗粉とやらを出してみてくれよ!」

「ちょっと、待ってよ。それはおとぎ話の話でしょ? この子にそう言う力があるかなんて分からないよ」


距離を詰めてくるジュラにアストは我が子を守るようにユメミを庇う。


「ジュラさん。君の気持ちも分かるけど、無理強いしてはいけないよ。ほら、おとぎ話にも宝石蝶を捕らえようと躍起になった強欲な王様が不幸のどん底に落ちる物語があるだろう?」

「ぐっ、お、おう」


マルクの正論と、ジュラの肩に乗せられた手に顔を赤くしコクコクと頷く。


「でも、宝石蝶の話はそこまで知れ渡っている訳じゃないけど、知っている人が見れば一目瞭然だ。あまり人前に出さないように気を付けてね」

「うん、分かったよ」


マルクのありがたい忠告に素直に頷く。


話が一段落したところでアストは少しソワソワしながらマルクにお願いを言う。


「そのぉ……良かったらで良いんだけど、その剣見せてもらっても良いかな?」


ずっと気になって仕方がない【SR】ランクの剣。


そのスペックが如何程のものか知りたくて仕方がない。


だが拒否されても仕方ないと思われていたお願いは、呆気なく受理された。


「構わないよ……ほら」


鞘ごと差し出された『頂きの長剣』をアストは受け取る。


「良いのかよ。それで斬り掛かられたらたまったもんじゃないぞ」


ジュラの言っているのはもっともな話である。


普通は親兄弟にすら預けないものだ。


それだけレアな武器は大切なものである。


そんなポンポン他人にあずけていいわけがない。


「構わないよ。例えアスト君がいきなり僕達を襲ってきても……問題ないから」


マルクの温和な笑みの裏に隠れた絶対的な自信に、ジュラは身震いする。


「流石はAランク冒険者『閃練』のマルク様だな」

「『神業』の師匠には遠く及ばないよ」

「Sランク冒険者の剣聖と比べてどうすんだよ」


比べる対象が悪すぎると呆れ気味にボヤくジュラ。


二人のやり取りなど耳に入らないぐらいアストは手に持った『頂きの長剣』のスペックに圧倒されていた。


【SR】頂きの長剣

[攻撃力950 耐久値900]

[【高山地帯】 【自動修復・中】 【軽量化】]

[体力+550 気力+ 800 腕力+50 頑丈+20 器用+150 敏捷+170]


「なにこれ……えっぐ」


アストの呟きに所持者本人であるマルクは苦笑いを浮かべる。


「この剣はね、僕の家に古くから伝わる家宝なんだ。僕の師匠であるグラン様曰く、【SR】ランクの武器の中でも上位に位置する性能らしいよ」

「アタイにもちょいと貸してみ……うっわぁ……」


マルクが頷き、アストがジュラに手渡して直ぐにドン引きしたような呻きを上げる。


Cランク冒険者であるジュラでさえ、凄まじい性能だと理解しているようだ。


「そういうジュラさんの大剣もかなりの業物だよね?」

「あ、あぁ……正直、コレを手に入れた時は誰にも負けないとすら思えたんだがな」


そう言って背負っていた大剣をマルクに渡す。


アストも便乗し、性能を見させてもらう。


【R】丈夫な鋼鉄の大剣

[攻撃力400 耐久値546]

[【耐久値増加・中】]

[体力+1000 腕力+130 頑丈+50]


「おっも……これ担いで走るのは結構大変だね」


百キロはくだらないだろう重量であり、今のアストですら振り回せば少しぐらつく。


「はっはっはー! そりぁあアタイですら手こずるじゃじゃ馬だかんな!」


返した大剣を手足のように振り回すジュラの動きは確かに無駄が無い。


「大剣のような重量がある武器は扱うのにコツがいるからね。例え、腕力がいくらあっても振り回した時の慣性による抵抗は無くならない」


(空気抵抗みたいなやつかな)


アストなりの解釈で納得し、二人に礼を言う。


「ありがとう。お陰で僕もやる気が出たよ。絶対に、君達に負けないぐらい凄いレア装備を手に入れてやる!」

「おう! その意気だ! 期待してるぜ!」

「それでは僕とジュラさんはこのまま王都に向かう事にするよ。豚祭りの時にでもまた会いに来るね」


遥か格上の二人と別れ、アストはユメミを引き連れてウルフダンジョンに向かう。


「僕は僕のペースで強くなればいい」


あれほどの実力差を見せ付けられると焦ってしまう気持ちはあるが、アストにだって生活がある。


無理をして妹のハフや受付嬢のフェイルを悲しませるような事はしたくない。

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