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056 剣豪の襲撃

SP160。


(何もかも足りない。でも一番不味いのはその威力と速さ)


さして力を込めたように思えなかったのに、かなり吹き飛ばされた事から、相手の腕力は倍以上の差はあるだろう。


そして踏み込みの瞬間も同じように認識出来なかったうえに、【見切り】が全く働かなかった事からも器用は天と地程の差がある。


(最近こんなんばっかだよ!)


SPを貯めたら何かしらの襲撃に遭い、SPを枯渇させる。


自分の不運に悪態をつきたくなる。


(くっ……手がジンジンする。頑丈にも振らないと)


幸運に振らずに貯めておいて良かったと心底思いながら、SPを振り終える。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


個体名 アスト 種族 人間 性別 男 年齢 15


レベル 21

体力 1000 (2300)

魔力 200 (460)

気力 200 (460)

腕力 120 (180)

頑丈 120 (180)

知力 20 (30)

精神 20 (30)

器用 100 (150)

敏捷 200 (300)

幸運 80(1680)

SP 0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


腕力値と頑丈値に40。器用値に10。


そして、思いきって敏捷値に70。


多く器用値に振ったところで今回の相手からしたら誤差と判断し最低限の10。


相手の初動を逃さないように敏捷に多く振った。


今のアストなら正面からボスオークと殴り合えるステータスだ。


(だけど敏捷値に振り過ぎたから、体力はそんなに持たないかも)


短期決戦で倒さなければならない。


そんなプレッシャーを感じながら立ち上がり剣を構える。


「ユメミ。君は離れていて」


パタパタとユメミはアストの言う通りに羽ばたき離れていく。


せっかく出来た仲間と早くも離れないといけないのは寂しいが、そんなことを考えている余裕などない。


「気は引き締まったかい? ……では、ここからが本番だよ」


追撃せずに待ってくれていたのはどうやら親切心からでは無い様子。


むしろ喝を入れる為に強烈な初撃をお見舞したようだ。


男性の言う通り、先程よりも鋭く濃い殺気がアストに襲いかかる。


「しっ!」


震える身体を叱咤するように、300になった敏捷値と【縮地】による最速の初動から先手を打つべく突きを繰り出す。


殺らねば殺られる。それは理解しているがどうしても人を殺めるという行為を忌避してしまい、狙った矛先は男性の脇腹。


「遠慮することは無い。本気で殺しに来なさい。でなければ意味が無い」

「訳の分からぬ事をっ!」


高まった動体視力からかろうじて男性がアストの突きを躱したのを見やる。そして男性が反撃と言わんばかりに美しい長剣で斬り上げてきた。


それを上体を後ろに倒すように躱すが、僅かに眉が斬られてしまい血が目に入ってくる。


「くっ!」


片目が血により見えなくなり、慌ててそのままバク転をし距離を取る。


「くらえっ!」


バク転の最中に、アストは腰に差してあった鋼の短剣を【投擲】の助けも借りて、男性の眉間目掛けて投げ付ける。


地味に上がった器用値のお陰で過去一の精度で短剣は男性に飛んでいく。


「おっと」

「なにそれ、かっこいい!」


アクション映画などでよく見る飛んできた物を指で挟むを体現する男性に、敵である事を一瞬だけ忘れて賞賛してしまう。


(でも追撃を阻止できた)


安全に着地し、再度【縮地】を併用した踏み込みからの連撃をお見舞いする。


絶え間ない連撃だが、男性は涼しげな表情のまま捌き続ける。


(あぁ……耐久値が)


鋼の剣が目に見えてボロボロになりもう時期砕け散るだろう。


それはある意味ピンチであり、チャンスに転用出来るタイミングであった。


「どうする? このままでは君は……失格だ」


失格イコール死の方程式が脳裏に過り、アストは出し惜しみせずに上段からから思いっきり鋼の剣を振り下ろす。


男性は緩やかに見える動作で振り下ろされてくる剣を迎え撃つ。


(今だっ!)


鋼の剣が男性の剣に触れる直前に、アストは鋼の剣を手放し、しゃがみこむ。


両手は腰の横に構え、まるで見えない剣を持ってるが如く水平切り。


男性の胴体に触れる手前で、【インベントリ】から新品の鋼の剣を手の中に出現させることで、威力と速度が乗った最高の一撃になる。


「っ! …………なっ」


決まった! そう思ったアストが握っていた新品の筈の鋼の剣は剣身の根本付近から先が消失していた。


スローモーションに感じる時間の中、真っ二つになる筈の男性は健在で、いつの間にか上段の対応に使われていた筈の美しい剣が脇腹に沿うように構えられていた。


(あの一瞬で、ガードに間に合うとかわけがわからないよ)


次の手を考えねばと思考を巡らせようとした次の瞬間。


「ごほっ!……ごほっごほっ」


視界が霞み、息がまともに吸えなくなる。


(もう限界がっ!? 早いっ早すぎるよ!?)


酸素が供給されないアストの身体はその場に崩れ落ち、いくら息を吸おうとも気分が良くならない。


「すまない。君が思っていたより素早かったから、この()が真価を発揮してしまった」


思考が纏まらなく、男性の言っていることが理解できなくなっているアストはそれでも立ち上がろうとする。


「ごっ……ほっ……ぐっ!」


霞む視界で男性を睨みつけるアストに、男性は敬意を称するように微笑み、美しい長剣を鞘に収める。


すると、先程まで吸えなかった空気がアストの身体に帰ってくる。


「はぁ……はぁ……なに、それ」


呼吸が出来る喜びより先に、この不可解な現象にアストは怪訝な表情を浮かべる。


「それはね、この剣に備えられたスキルの効果だよ」


先程の殺気は霧散し、まるで友人のように接する男性は再度、美しい長剣を抜く。


「この剣の名は『頂きの長剣』。そして保有するスキル……【高山地帯】により敵対する相手のみを低酸素状態にするんだ」

「そ、そうなんだ……レアリティいくつよ?」


なんだそのえげつないスキルは、とアストはドン引きながら次の疑問を尋ねる。


「レアリティはね……【SR】だよ」

「ごほっごほっ!?」

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