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049 オークダンジョン攻略

最短で階層を降りていき、五階層まで順調に辿り着いた。


「っと! 危なっ!?」


この階層から簡単な罠が設置され始め、アストは四苦八苦しながらゆっくりと探索を開始する。


今飛んできた矢をすんでのところで回避した。


当たってもアストの頑丈値であれば傷一つ負うことも無いのかもしれないがそれでも飛んでくる矢というのは怖い。


そんな理由からアストはビクビクしながらダンジョンを進んでいく。


「むむっ……よく見ると違和感発見」


高い器用値により五感が研ぎ澄まされているからか、僅かに段差のある床に気付く。


試しに離れた所から【インベントリ】に収納している石ころを放り投げて段差に乗せてみると、段差のある床に乗った瞬間壁から勢いよく矢が放たれ、反対方向の壁に弾かれるまで飛ぶ。


「矢が出た穴が消えてら」


罠が作動した時だけ穴が開くようだ。


「流石はダンジョン。何でもありだね」


ステータスを偏りのある振り方にしている冒険者によっては、この罠で即死する可能性を秘めている。


アストは石ころを回収し、手の中で弄びながら目を凝らしダンジョン内を隅々まで見渡す。


これ以上罠が無いと判断しゆっくりと歩き出した。




「なるほどねっ! これは凶悪だ!」


罠を警戒し思うように進めないアストの前に五匹のオークが出現し襲いかかる。


戦闘中は意識が敵に集中し、それ以外が疎かになる。


そんな時に罠が発動すればどうなるかは想像にかたくない。


その結果、アストは距離を取ったり大胆な動きが出来ずにこじんまりとした戦闘を強いられる。


図体がデカいオークに囲まれれば普通の冒険者ならビビって普段通りの動きが出来なくなる。


常に一体一の状況に持っていきつつ、一体づつ倒して行くことで何とかなったが、通常の戦闘の数倍の時間が掛かり、神経もすり減っていた。


「うぅ〜ん。罠はそこまで脅威じゃないけど、将来のことを考えるなら罠がある場での立ち回りとか考えといた方が良いよね」


いずれはステータスがいくら高くても即死するような罠などあるかもしれない。


その可能性をできる限り下げる為には、罠に対する嗅覚を研ぎ澄ませつつ魔物を倒せるようになる必要がある。


言わばこのダンジョンは罠に慣れるためのチュートリアルなのだ。


結局、その日は六階層に通じる階段を発見したところで帰還しリュック一つ分納品し、更に資金を増やしていく。




翌日は脳内マップにより最短で六階層に降り着き、探索を再開。


「罠が固定っぽいな……」


前日通った道のりでの罠配置に変化はなかった。


ランクが高いダンジョンはどうなるか分からないが、取り敢えず既知の道だけを通れば最低限の労力で探索が出来る。


そして就寝時の時に思い付いた戦法を試し、その手応えにガッツポーズをとる。


とてもシンプルなものだが、槍をひたすら投擲しオークが接近する前に殲滅するというものだ。


【インベントリ】に大量の武器を収納しているアストだから出来る戦法である。


罠が発生し始める五階層からガクンと冒険者を見かけなくなったことからこそ出来るやり方だ。


「見敵必殺! そーい!」


手馴れたもので視界に入ったオークの頭部には数秒後、槍のオブジェが飾られる。


倒した後は槍とドロップ品を回収する為に移動しないといけないが、基本的に進行方向先に現れる為、差程のデメリットではない。


そのお陰で、かなりの行進速度で探索する事ができ、その日は八階層まで踏破出来た。




更に翌日は九階層までマッハで駆け下り、九階層を難なくクリアし、十階層に辿り着く。


罠の量はかなり増えたが差程パターンが多くない為、今では軽く目の端に入り込むだけで違和感を感じ取れるようになった。


そうすると張り詰めてきた緊張感がほぐれ、リラックスして探索できるようになり普段通りの動きで戦闘を行う事も可能になった。


「ここがこのダンジョンのボス部屋かぁ」


そして程なくしてボス部屋を発見する。


ゴブリンダンジョンの扉よりかなり大きな扉であり、パーティーで挑む前提の難易度にも思えた。


アストは扉前で軽く食事をし、休憩を摂る。


久方ぶりの初見によるボス戦である。


否応なく気分が高揚し、闘気が滾る。


「これが最期の晩餐にならないように、頑張ろう」


一つ頷き、装備を改め、万全を期する為にリュックすらも【インベントリ】に収納して身軽になる。


腰には何時もの鋼の剣と鋼の短剣。


手には鋼の槍。


全身、黒革装備で固める。


考えうる最高装備。


アストは気負いなくボス部屋に突入した。


だだっ広い空間に黒い光の粒子が収束し、魔物が出現する。


「ははっ……こりゃあ、パーティー戦だわな」


アストは乾いた笑い声を出し、笑みを作る。


視界には三十匹はくだらないオークの群れが押し寄せてきた。


その最後尾には腕を組み佇む一匹の毛色の違うオーク。


全身赤い刺青みたいな模様を刻み、他のオークよりも引き締まった肉体。


その眼光には強者としての矜恃を感じさせた。


間違いなくこのダンジョンのボスであろう。


「まずは雑魚戦というわけだ!」


四方八方からリーチの長い熊の手や桑で攻撃を繰り出してくるオーク群に、アストは一旦ボスオークの事を思考の端に追いやり集中する。


鋼の槍を突き出し、先頭組の数匹の喉笛を立て続けに貫く。


「ぶぎゃ……!?」


絶命するまでに多少の時間は掛かるが、寧ろソレらがバリケードのように倒れ込むことで、後発組の足並みを乱す。


後ろに続いた後続が足を引っかけ体制を崩す間に、アストは鋼の槍を横に一閃。


「ぶひぃぃぃ!!?」


オーク達の眼球を切り裂き、失明させる。


(これで十匹はほぼ無力化完了)


残った二十匹が左右に分かれ迫ってくる。


槍はまだ熟練度が足りない為、迫ってきた一匹に投げつけ、その間に使い慣れた鋼の剣を抜刀ついでに切り付ける。


槍が突き刺さったオークと、胴体を切り裂かれたオークが即死する。


瞬く間に半数近くがやられたことでオーク達に動揺が走る。


「どうした? かかってきなよ……纏めて鏖殺してやる」


アストの半目から放たれる殺気に圧倒的な有利を誇るオーク達は半狂乱になりつつ襲ってきた。


理性を失って襲ってきたオーク達の間を【縮地】ですり抜け、その際に足の健を鋼の剣で切り裂く。


最後尾を抜けたところでクルリと振り向き、 最後尾に居たオークの首を刎ねる。


数匹が歩けなくなり倒れ、それに巻き込まれる形で無事だった数匹が下敷きになる。


一匹百キロはくだらないのだから、一番下になったオークは圧迫死か窒息死コースだろう。


(やっぱりコイツら知能が低いから判断が遅いね)


固まらずにある程度バラけるなり、リーチの差を活かして追い込みを掛けるなりすればアストとて無傷ではいられなかっただろう。


だが、オーク達は何も考えずに敵であるアストに一直線に向かってくる以外の事をしなかった結果、いいようにあしらわれてしまった。


「まあ、そのお陰で助かってるんですけどね」


でなければアストは今頃物量に押し潰されていたのかもしれないのだから。


(それにしてもボスさんは微動だにしないですね〜)


腕を組み、静かに戦いを見つめる眼光は恐ろしく鋭い。


ボスがいつ参戦するか分からない以上は、素早く殲滅するに限るとアストは被害から逃れたオークに突撃した。

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