038 再会のリトライ
幼なじみであるロザリーの情報をかき集める二人だが、めぼしい情報が無いことにそろそろ疲れが出てくる。
二日目もそろそろ夕暮れとき。
「はぁ……もうガセとしか思えないモノばっか集まるな」
「だねー。多分、情報の精度無視で銀貨を貰うためだけに話してるよ」
アスト達が街中を歩き回り情報をかき集めていることが知れ渡っているのか、全く無関係の情報を渡してくる人ばかりになった。
「知らないよね〜どこそこの浮気話どかさ」
「俺……その人知ってるから、困る」
「うわ〜ご愁傷さまです」
時にはグラムの知り合いの暴露話が舞い込んできたりともはや情報収集の体をなしていない。
「実はまだ行っていない場所があるんだ……」
だが、この程度で諦められるならストーカーになっていないグラムは苦虫を噛み潰したような顔で言葉を絞り出す。
「ま、まさか……」
アストも無意識に避けていたであろう場所を思い浮かべゴクリと唾を飲み込む。
「繁華街に行こうと思うんだ」
「こ、この時間帯の繁華街は危険が危ないよ!!」
身をもって知っているアストはグラムに警告する。
グラムは少しだけ疲れた笑顔を浮かべる。
「さすがにさ……疑いたくは無いよ? でも、ここまでして見つからないんだ。もうさ……そういうお店しかねえんじゃねぇーかなぁ!?」
血の涙を流さんばかりに叫ぶグラムに、アストはやるせない表情を浮かべる。
その内心と言えば。
(真っ先にそういうお仕事だと疑ってごめんなさい!!)
聞いて真っ先に浮かべ、実際に居るのか確かめに行ったアストは懺悔するように心の中で詫びた。
アストはグラムの肩に手を乗せ、覚悟を決めたように頷く。
「アスト……ああ。行こう!」
グラムも覚悟を決めた表情で頷き、繁華街へ向かって歩き出す。
傍から見たら大人の繁華街に初デビューしようと意気込む若者二人に見えるだろう。
仕事帰りに寄っていく人が多い時間帯ということもあり、完全なアウェイの中、不安そうに二人は歩く。
「と、取り敢えず……どうする?」
「う、うん……そうだなぁ〜客引きしている人に聞いて回ろうか」
それは前回早々に断念した作戦であった。
あの時は一人だった。
だが、二人になった今ならば成し遂げられるとアストは信じる。
(二人は最強のプリ〇ュア!)
訳が分からないよと言われそうなことを思い浮かべながらも近くの客引きに近付く。
「あ、あの〜」
アストは一歩後ろに立って客引きに話し掛けるグラムにエールを送る。
お金を出すのがアストの役割であり、話しかけるのはグラムの役目である。
(役目でしょ、はやくして)
そういうこともあり今回は余裕がある。
「おや? この前の若い子じゃないか」
「えっ……あっ!?」
そんな余裕もグラムがチキって話し掛けた男性の客引きを見て無くなる。
前回話し掛けた際にからかってきた男性であった。
相変わらず胸元フルオープンな服装である。
「もしかしてまだ探しているのかい? その女の子」
どういう事だ? とグラムはアストに圧を感じさせる眼力を飛ばす。
アストは汗をダラダラ流しながら白状した。
色気ある男性は笑い、グラムは複雑そうな表情を浮かべた。
「そうかい。友達の恋人の行方が知りたかったわけだね」
「恋人じゃないですよ……まだ」
グラムが若干病んでいる気がしなくもないがここはスルーする。
「そういう事なら、僕の知り合いの知り合いに情報屋みたいな人が居るから聞いてあげようか? もちろん、仲介料と依頼料は必要だけどね」
「そ、それは……」
非常に魅力的な提案であった。
素人二人がいくら足で探そうがやはり限界はある。
それをプロが代わりにしてくれるのだから非常に助かる。
「いくらですか?」
それはすなわち高額になるということ。
グラムが言い淀む中、アストはキッパリと言い放つ。
「金貨三枚ぐらいかな」
「なっ!?」
それは一般人にとって二、三ヶ月に相当する稼ぎであった。
「それじゃ、……これでお願いします」
アストはグラムが何かを言い出す前に金貨三枚取り出し、色気ある男性に渡す。
「受け取ったからには必ず調べるよ。安心してね」
「ん? ……はい。お願いします」
その言い方に少し引っ掛かりを覚えたが素直に頭を下げてお願いする。
グラムも遅れて同じように頭を下げる。
色気ある男性は手をヒラヒラさせて立ち去る。
どうやら直ぐに動いてくれるようだ。
「アスト……」
「お金はいつでも稼げるけど、情報は集められる時に集めないとね。たいむいずまねーだよ」
「ああ。本当にありがとう」
申し訳なさそうにグラムはまた頭を下げた。
アストは律儀だなぁと苦笑する。
「どうする? プロに任せた以上、僕達の出番は無いも同然だけど?」
これ以上の捜索はそこまで効果的ではないと尋ねるアストにグラムは頷く。
「ここまでしてくれたんだ。あとは、あの人に任せたい」
「そっか。そんじゃ美味い飯で「確保〜」……も!?」
唐突に後ろから抱き締められたアストはパニくる。
「この前はどうして逃げたの〜?」
アストを抱き締めたのはおむね様であった。
背中に圧倒的な質量と柔らかさを備えた二つのクッションにアストは顔が真っ赤になる。
「お、お前……常連だったのか?」
グラムは同胞だと思っていたアストが思ったよりプレイボーイだったことにショックを受ける。
「ご、誤解だよぉ!?」
拘束を解こうにも、一般人相手に暴れて怪我させる訳にもいかない為大人しくされるがままである。
それが余計に受け入れているように見える為、グラムの目がどんどん濁っていく。
「お友達も一緒なんだね。それじゃあ、お二人様ご案内〜」
「了解〜」
「えっ、ちょ!?」
おむね様の仲間が現れるやいなやグラムも同じように拘束され連行されてしまった。




