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029 薬師ーズが仲間になりたそうにこちらを見ている

料理に関してはボサボサ頭の女性と数人の女性冒険者たちにより、ステーキとして焼かれていった。


それを美味い美味いと泣きながら頬張る冒険者たち。


アストもご馳走になる。


(家族と食べに行った焼肉並に美味いね)


前世の記憶で一番新しいのは、家族全員で食べに行った焼肉だ。


ステーキソースもポン酢もないシンプルな味付けだが、とても美味しく感じた。


「明日もよろしく〜」


「「「「「「おー!」」」」」」


アストの気の抜けた掛け声に、力いっぱい返事を返す。


どうやら、懐柔に成功したようだ。


翌日、コボルトダンジョンを一陣の風ならぬ、アストが疾走しコボルト狩りに精を出していた。


昨日と同じ時間帯に集まる冒険者。


総勢五十名。


「うん。なぜ増えてるし」


アストが歩み寄ると、昨日からの参加メンバーは直立不動で整列する。


「おすおーす! 今日もよろしく〜」


「「「「「おっす!」」」」」


何故か体育会系のノリで挨拶してくる。


「こんばんは」

「あ、薬師さん、こんばんは〜どうしたんです?」

「お手伝いに参りましたよ」

「何故に?」

「生産ギルドのギルドマスターが恩を売ってこいとのことですね」

「僕のこと知ってるんですか?」

「プチ有名人ですよ。将来有望だからゴマをスっとけど、二十名ばかりで参戦ですね」


「「「「「よろしくお願いしま〜す」」」」」


のんびりとした人達である。


薬師二十名が追加されて、アストは異世界で初めてお財布の残高を心配した。


「もしかしなくても、生産ギルドにマークされてる……?」

「もしかしなくてもそうですよ。幸運に多くのSPを振ってなお、将来有望とされているので当然かと」


既にアストが幸運極振り気味な冒険者だということは知れ渡っているらしい。


その上で、Dランク冒険者であるブルタを下す戦闘力も備えているというのだから、大勢から注目されている大型新人である。


「近々、二つ名みたいなのが付くかもしれないですね」


他人事のように言う薬師に、アストはなんとも言えない表情を浮かべた。


(そういうのはBランクぐらいに上がってからのイベントでは?)


もう少しのんびりすれば良かったかと後悔しそうになるが、娯楽の少ないこの世界でダンジョンに潜る以外にやる事がないアストは結局こういう道を辿る運命なのだ。


行き当たりばったりな行いがこういう自体を招いたのだから本人が悪い。


「さすがに勝手に押しかけてきて同額貰うつもりはないので、皆さんの半額でいいですよ」

「それで良いのならいいんですが」


「「「「「問題ないで〜す」」」」」


本当に緩いな! とツッコミたくなる緩さである。


そういうことになり、深夜帯なのにダンジョン内は雑魚狩りの冒険者組と、薬草採取の薬師組で大賑わいである。


「わ〜凄い。倒しても倒しても湧いてくる〜」


ボスを倒したら、一回はボス部屋から出ないとリポップされないのでそれを繰り返す。


それを高速に行うことで、一時間で十五体ものボスを倒すことに成功した。


それを六時間ほど行い、日が昇る時刻にダンジョン前に全員集合する。


彼らの視線はアストの背後に積まれたドロップ品の山に向かわれた。


さすがに【インベントリ】に仕舞うのは不味そうなので、今日から全て収めずに積むことにする。


その際に、見張りを二人ほど置くことにした。


「それでは今日も残れる人は残ってくださ〜い。美味しいお肉もいっぱいドロップしたので沢山食べても大丈夫で〜す」


「「「「「よっしゃー!!」」」」」


昨日の料理を思い出し歓声を上げる冒険者たち。


そんな姿を横目に薬師がアストに歩み寄る。


「お裾分けのハーブはいかが?」

「美味しくなる?」

「多分に」

「採用」

「参加しても?」

「愚問。うぇるかむ。大歓迎」


「「「「「ゴチになりま〜す」」」」」


総勢五十一名による食事会である。


冒険者の中には子樽に入れてきた酒を片手に調理された美味しいお肉を頬張る。


「今日は肉のスープとステーキか」

「仕込みに時間をくれるなら更に美味しく出来るよ」


ボサボサ頭の女性冒険者が自信を持って言う。


「それじゃあ、明日は数名料理に回そうかな」


既に周回に必要な人員は足りてるので、数名が抜けても大差無い。


ハーブにより旨みを増した料理に舌鼓を打つ。


そうして二日目は過ぎていった。


最終日に纏めて納品は普通に考えて無理と判断。


早朝にまとめ役みたいになっている中年冒険者と、腕力にSPを振っている冒険者数名を引き連れて冒険者ギルドに納品しに行く。


そこでかなり大騒ぎになったが無事に納品を済ませ、これから寝る中年冒険者たちと別れ、ホクホク顔でコボルトダンジョンに向かう。


日が沈み、ホーンラビットダンジョンに向かえば、予想通りの結果が見えてくる。


「やったね、仲間が増えたよ」

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