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002 ステータスというのは素晴らしい

稲田明日人は晴れ渡る草原のど真ん中で目を覚ました。


明日人の格好は布の服と簡素なズボンを身に付けており、皮の靴を履いている。如何にも平民か村人の格好だ。


草原に寝っ転がる明日人の瞼はほとんど開かれておらず、未だに夢心地。


しばらくぼけーっとした明日人はようやく頭が回り始める。


(うぅ〜ん? ここどこだっけ?)


何故、自分がこのような草原で寝っ転がっているのか思い出すことが出来ない。


むくりと上半身だけ起こした明日人は胡座をかき、腕を組んで首を傾げる。


「なんか大切な約束をしたような……なんだろう」


優しい風が明日人の肌を撫でる。


良い区切りとなったのか、明日人は分からんと言わんばかりにまた寝っ転がる。


「普通に考えたらここは異世界だったりする? なら、僕は死んだの? 死因すら思い出せないけど……何だか死んだ気がするんだよね〜」


何となく自分は死んだと確信している為か、慌てたりせずマイペースに青空を見上げる。


「死後、の世界じゃないのかなぁ……天国っぽい気もするし、そうじゃない気もする。なら、オタク脳的に異世界転生したと考えても良いのかな?」


都合良く考えるならば、オタクならば誰しもそういう結論に至るであろう。否、至りたいのだ。


「異世界……存在したんだ……んふふっ」


どうやら自分が死んだ事も、ここにいる理由もどうでも良くて、夢にまで見た“異世界“という非現実的な現実にこれ以上ないほど興奮している様子。


「ならさ、出る可能性あるよね。ステータスみたいなの」


明日人は目をつぶり、RPGのステータス画面を思い浮かべながら目を開いた。


そして何の音もなく、突如半透明なUIが現れたのだ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


個体名 アスト 種族 人間 性別 男 年齢 15


レベル 1

体力 100 (230)

魔力 100 (230)

気力 100 (230)

腕力 10 (15)

頑丈 10 (15)

知力 10 (15)

精神 10 (15)

器用 10 (15)

敏捷 10 (15)

幸運 10 (210)

SP 20


〖LR〗

【幸運な転生者】

[幸運+1000% 幸運系スキル獲得]


〖UR〗

【宝石蝶】

[幸運+600% 幸運ステータス低下無効]


〖SSR〗

【天賦の才】

[獲得SP+100% 全ステータス+30%]

【天運】

[幸運+250% 幸運ステータス低下軽減]

【インベントリ】

[時間経過しない亜空間の物入れ]


〖SR〗

【超体】

[体力+100% 回復速度+100%]

【超魔】

[魔力+100% 回復速度+100%]

【超気】

[気力+100% 回復速度+100%]

【超運】

[幸運+100%]


〖R〗

【剛力】

[腕力+20%]

【剛健】

[頑丈+20%]

【知恵】

[知力+20%]

【冷静】

[精神+20%]

【技術】

[器用+20%]

【俊敏】

[敏捷+20%]

【強運】

[幸運+20%]


〖N〗

【共通言語】

[アファステーゼの共通言語を理解し、発音出来る]

【最下級体術】

[身体を動かす動作が滑らかになる]

【最下級剣術】

[剣などを操る技術が向上する]

【我慢】

[ダメージによる行動阻害が軽減される]


〖装備〗

【武器】 なし

【頭】 なし

【上体】 【N】布の服

【下体】 【N】布のズボン

【腕】 なし

【足】 【N】皮の靴

【装飾①】 なし

【装飾②】 なし


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「ガチじゃん……」


本音を言えば半分ぐらいは夢オチだと思っていた明日人はこの結果に皿のような半目を見開く。


「名前はゲームをやる時によく使っていたやつだ」


ゲームで名前をいちいち変えることに面倒くささを感じて以来、明日人をもじって“アスト“に統一していたが、まさか異世界での名前になるとは思うわけがない。


少し落ち着いたのかまたしても皿のような半目に戻る明日人ことアスト。どうやら半目が彼のデフォルトのようだ。


「それに若がってますねぇ」


年齢が十五歳に若返っており、何故か思い出せない社会人だった筈の自分の顔をベタベタ触る。


「モチモチしてる〜」


ぴよーんと頬っぺを伸ばし遊ぶ。


二十代になると途端に肌がカサカサしだしていた為、こんなに潤っている自分の肌に感動を覚える。


「ふむ……黒髪だね。なら、目も黒いのかな? まんま若返った感じか。キャラエディットさせてくれたらイケメンにするのに」


自分の髪を何本かちぎって手のひらに乗せ確認を取る。


どうやらアストの容姿は若い頃の稲田明日人本人。


「さて、ステータスの方も確認しようかな!」


ウッキウキで再度ステータスの画面に注視する。


「なんかチートと呼ぶにはイマイチ効果が分からんね? やたら幸運がインフレ気味以外は」


ステータスの中でスキル補正込みで210もある幸運以外は少し補正が掛かっているぐらいのステータスだ。


「でもこの【天賦の才】というやつは成長チートと呼ばれる類いだよね? このSPとやらの獲得量を倍にしてくれるわけだし……神様かなんかがくれたチート枠なのかな?」


【天賦の才】はスキルに変換される前から彼、稲田明日人だった頃に保有していた素質そのものだ。


残念ながらものぐさでオタク気質だったアストはスポーツの道に進路を定めなかったが為に、ついには気付かれること無く腐っていた才能であった。


「【幸運な転生者】は間違いなくチート枠確定です。そして、やはり転生確定です。ありがとうございます、名も知らぬ神様」


幸運がどういう効果を発揮するか現段階では分からないが使えないわけが無いだろうと、この力をくれた暫定神に感謝を捧げる。


次にアストが目を向けたのはSPであった。


「普通に考えてスキルポイントだよね?」


定番のスキルポイントならば、この先スキルをバンバン獲得して無双も出来るのだろうかと思いを馳せる。


試しにSPの部分に指を触れようとするもすり抜けてしまう為、どうしたものかと悩むアストの脳裏にSPを使用するかの有無を問う無機質な声が聞こえた。


『SPを使用しますか?』

「えっと……イエス」

『どのステータスにポイントを振り分けますか?』

「あ、これステータスポイントなんだ」


そっちかよと一瞬思ったが、アストはニヤける口元を抑えられない。


彼はステータスを割り振るのが大好きなゲーマーだったからだ。


某死にゲーではひたすらマラソンをして、ステータスをカンストするまで経験値を貯めたものだ。


かのゲームにおいて全ステータス99。それはアストにとってのやり込みの到達点。


レベル上限を150やら200やらに縛っている対人特化の人種とは正反対のプレイスタイルであった。


「1ポイントだけ振ってみようかな?」


試しに腐らないだろう体力に意識を向けると無機質な声が再び聞こえた。


『体力の値が110に上昇します……よろしいですか?』

「1ポイントで10上がるのか! じゃあ、腕力は?」

『腕力の値が11に上昇します……よろしいですか?』

「この感じ……体力と魔力、気力は1ポイントで10上昇し、それ以外が1上昇とみた」


試しに他のステータスを割り振るように試すと予想通りの結果になった。


「決定しなければSPは消費されないから助かった〜」


お陰で無駄遣いせずにSPを温存出来てご満悦なアスト。いずれ振るだろうが要所要所で振れなくて詰む可能性もなくも無い現状では虎の子のSPなのだ。


「レベルが上がってSPが確保出来ればバンバン強くなれるね!」


早くもレベルを上げたくて仕方なくなったアストは立ち上がり、稲田明日人の頃では視力が下がりまくって霞んで見えなかっただろう遠くにある外壁に囲まれた街を発見する。


どうやら視力も2.0はあるようだ。


アストは街に向けて歩き出す。


彼の表情は幸福に満ち溢れていた。

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