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マリカ=モッカー  ぎし L72

「…レベル8いぃぃぃ!?」


 カウンター越しの大声に、そりゃそうだよな、と苦笑い。


「他人のことなんぞ知らん言うとった小僧が、恋人の危機でもなしに何しでかしとんの!!!」


 言われると思った。

 僕の使う生命用付与アイテム、ポッドのエネルギーは、充填に最適な技術や方法がまだ得られていない。

 過去には使い捨てと思われていたこれに、様々な手段で機能追加などを試みてきたのが、目の前にいる彼女である。

 多分冒険にかかわる部分では、僕と一番付き合いが長い人間で、ひたすらに世話になってきた。

 金などの現実にシビアな方で、僕もその辺多少影響は受けているかもしれない。

 しかし、そうでなくてはこの魔道具研究の技師という職はできないのだという。

 あらゆる研究、装置に気の遠くなる桁の金がかかりまくるからである。

 僕が使うときに一瞬迷ったのも、死にかけだけの傷ならレベル4程度で死なないくらいにはもっていけるらだ。

 大体なんでも回復くらいの出力にして、充填にどこまで金がかかるのを知る奴が見栄だけで食いつぶす。

 それは、怒る。


「それ以外に無茶な使い方しとらんやろうねえ?」

「マリカさんの基準と違うんで、僕なりにとしか言えませんが、ま、それなりに…」

「ほれ、なら見たるよって出しぃ」 

「そいじゃ、キューブ、アンロック……ゼロ」


 言葉とともに、ぞろぞろと落ちる異文明くさいアイテムたち。


 〇がディスク。 このまま変形と縮小や巨大化して動くロボたち。

 △がポッド。 ピラミッド状の範囲を作り、内部にエネルギーを開放して生物のバフデバフを操作する。

 □はキューブ。 空間制御でアイテム類を収納し、後から敷居を設定すれば番号で個別に呼び出せるアイテム。


 キューブのゼロ指定はキューブそのものを入れる領域であり、空間を指定する場所なので特殊な意味合いがある。

 キューブの内部と同時に呼び出せるように、意識下だけで動かせる調整をすることで今のようにキューブを出し入れできるのと。

 空間を入れるという特性なので、集中だけで相手との距離を空間ごと広げたり縮めたりができる。

 また、一部をゆがめて固定、開放を瞬時に繰り返すことで、断裂面を形成。

 硬さに関係なく物質であれば、空間のズレでうまれた断面に従って、別の場所の物質として現実解釈で「切れている」状態となる。

 街中の魔物を細切れにしたものの正体は、これだ。

 この三種類のアイテムと、補給、補充してくれるマリカさんの存在。

 これで、僕は今のところ、この世界の当たり前を無視した無敵のチート野郎であるわけだ。


「ディスク、たらんねぇ、あんた」

「ちょっと今、穴をふさぐのに必要なので一枚使ってます…」

「無駄な使い方!」

「すす、すいません!!」

「まぁまぁ、リューオ様は、近くの方の不幸を見過ごせないお方ですし、お考えあってなのだと思いますわ」


 横でちょいちょい笑っていたアイーダが、するりとフォローに入る。


「ま、捨てたんでも、壊したんでもないなら一度は見逃したるわ」

「助かります」


 変な魔物が亡国の国宝を食べてもっと変になったのでフタに使っています、とは、さすがに言えない。


「ダメージ食らってるのはなさそうやね、なら、補充やっとくわ」

「たのみます」

「あとな、ディスクで新しく手に入れたもんもあるから、いるうちに調整やりや」

「マリカさんにお時間があるなら、今がいいんですが」

「ま、ええけど」

「アイーダさん、お忙しいでしょうし、あとは自分だけでも…」

「いえ、むしろこれを見るために…いえいえ、私の仕事ですので」


 ニヤニヤしてないかな、アイーダ。

 マリカとの掛け合いが楽しい、そういう趣向なのだろうか。

 仕事中にずっと引き延ばすのに、少し申し訳なく思いながら、マリカさんの店の地下に。

 知人のよしみ等では値引きその他は絶対しないマリカさんが、タダ同然でこれらのメンテをしてくれる理由も、そこにある。

 遺跡から運んだ研究棟。

 さらに稼働させるエネルギー施設など、この街の地下は半分がマリカさんの使える大規模機械の集積体で、各地の使えるものをキューブに入れて集め、僕とマリカさんで整備したからだ。

 地下水脈で冷却するのに、かなり深めなのと、外壁など施設が出来るよりは前に埋めたので、詳しく知る人間は少ない。

 この街が形になってからこれを教えたのは、アイーダくらいなので、マリカさん自体がこれだけのものを持っていても小さな店の店主くらいとしか認識されていない。

 そこまでしたのと、今の環境が気に入ったらしいので、金を得る手段などは今は独自に得て、サービスに励んでくれている。

 いまだに他の国や街からエネルギー再生についての話など聞いたことがないから、それでえげつない商売してそうだと思う節はある。

 

「ほな、脱げ脱げぇ!うら若き女子どもの前でなあ」

「言い方なんなんですか、ほんと」


 何をするか、というと、感応する波長をディスクなどのアイテムに設定する作業。

 自分の精神などに変化が起きるかもしれないため、こまめに測定しやすくする水の中で波長を抜き出す必要もあるという。

 少し意識が途切れてたりする怖さも最初あったが、いい加減慣れた。

 その一方、慣れないことは、その水。

 どうして水槽のような入れ物なのか、そこはいつか改善してほしい。


「いやあ、この景色を見るために生きている感じがします」

「せなろぉせやろぉ」

「あぁ、かわいいです、この、このへん!」

「この鎖骨周りのラインとか、うちはけっこう好きやねん」

「いいですねぇ…ああ、もう髪の毛とか、食べたい!今食べたい!」


 …稀にそんなのを意識の切れかけに聞いていた気がするが……気のせいなんだと、思う。

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