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異世界転生主人公は、ラスダン近くの美少女だらけの村を勢い任せにハーレムにしてしまうかの岐路に常に立たされている  作者: くる


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弱酸性対放射線外壁充填仕様ゲルスライム いでんしくみかえせいぶつ L36

「あら?何もしなくても、リューオが来るなんて」

「ど、どうもみなさん…」

「無事ですか?」

「足、ちゃんとついてるか見せてもらっていい?平気?」

「順調なのです」


 口々に心配や喜びの声が来る。

 村から来たみなさん。

 なお、陽動をやったマヨイは今も別途行動中、実計画には参加しない魔王とお付きの人の二名はすでに壁の外だ。


「集団で止められそうなトラブルがあれば、ここからすぐ出るつもりで信号を待っていたんですが、こうなるということは…」

「…まぁ、誰も来ませんでした」


 いくら多重に人が減ったり、他の場所に割かざるを得ない仕込みをしたとして、そこまで見張り全てがいなくなるものなのか?

 おそらく参加している全員から見てなお、予定外すぎた。

 そして、それとは別に。

 リューオは今ここでやっと、街で新しく騒動を起こしたうえに立場を危うくしそうなレベルでアイーダまで扇動して危ない事をさせたのが、この人たちということを知る。

 その視点からすると、お小言ではすまない程には、いくつか、言わないといけないことがある。

 あるが……。


「…みなさん、つまり…しっかり調整し終わったんですね…ディスク…」


 言えない。

 状況確認するくらいしかできない。

 力を得たとたんやることがこれか!

 …くらいは言うべきと、一瞬思った。

 が、彼女たちからみれば囚われの仲間を救う真剣な気持ちなのだろう。

 そう思ってくれたというのが嬉しくもあり、それを裏切るようなことを言えようものでもない。

 なにより、今言葉よりも証明されている彼女たちの笑顔の前で、何が必要なのか。

 そう、思える気持ちが、ひとかけらあるならば。


「おめでとうございます、そして、ありがとう…」


 これしかない。

 言いようがない空気…とも、いう。


「いーえいーえ!」

「これで私たちも、守る側になれますよね!」

「期待していいですよ!」


(…したくないなぁ…)


 可能な限り作り笑いしたリューオが、ひとまずうなづく。


「それで、いかがでした?あの騎士様とは笑顔でお別れできそうでしたか?」

「…え?」


 不意なゴーカの切り出しにリューオの表情は、作り笑いのまま固まる。


「あのお店で顔を合わせてから、あの騎士さんとさほど深くお話はしませんでしたが……お互い好意はあったのでしょう?」

「…な、何か不穏な方向、あり…ます?」

「包み隠さずおっしゃっていただいて結構ですわよリューオ」


 どうも、薄暗い中で空気がちょっとピリッとしている気がしてたまらない。


「わざわざ付け加えている意味くらいは、そりゃ理解できますわよね…?」


 つらい。

 リューオの追い込まれている空気は、実際肌に刺さる感触すら感じる。

 本当に、さっきあれほど、心に迫る感動シーンっぽいものを体感した直後か、これは。


「えー…アイーダさんだけがあの時来た理由がつまり…」

「騒ぎがさらに起きれば、もう会えなくなることも覚悟すべきであるのは、あの騎士様が言い出したことですので」

「…それはまぁ、確かにアイーダさんの考え通りでしょうね…」

「つまるところ、感じ入るものはあったので、そこを汲んでお邪魔しないように気を利かせた全員に、そりゃ、感謝の気持ち…忘れませんように、ということです」

「…あ、ありがとうございます…」


 言わされている感しかない。


「で、嘘はいけませんわよ?…ご関係は?」

「いや、あの…ご飯食べたくらいで…深くは…」

「「「本当にです?」」」

「…本当です…本当です…」


 いろいろ半年ありましたけど、言えるわけないですね!

 詰め寄られるように取り囲まれ、精一杯逃げを打つリューオ。

 たぶん、ウソであることは一人残らずに筒抜けである。


「まぁ、時間はありますから、今はそれでいいでしょう」


 わかっているぞと言いたげなゴーカの眼光が怖い。


「親交深めるのもいいがな!早くここ出るぞあんたら!」

「あの方は……?」

「この街の知り合いですわ、お菓子が得意だとか言う…」

「この騒ぎで、よく協力者なんていましたね」

「リューオのファンかもしれませんから、大事にして差し上げたらいいですわ」

「さすがにまさか…」


 パティシエをしていて道案内してくれる協力者にいつの間にかなっていたフミさん。

 少しばかり距離を置いて、たぶん行くべき方角に先に立って誘導してくれている。

 リューオは初見なので、彼女をいいとも悪いとも言えない。

 ただ、この状況で何があるのか謎すぎではある。

 そう一拍ふと考えているところで。


「それとは別になのですが、リューオさん」

「な、なんでしょう?次は何でしょうか?」


 今度はステラ。

 追い打ちがあるのかとリューオは怯えている。


「前に入ったときも、今回もなんですが…変なスライム、ここ、いません…?」

「いますよ?」


 ステラの疑問に、さも当然ですという対応。

 え?そんな?

 という周囲の空気にむしろ困惑するリューオ。


「人がこれだけ集まって生活排水の問題は出るのがむしろ当然ですからね。処理層と浄化槽をどうするか思案の末、上に登る防止策を付けて、こいつらを増やすことで解決したんですよ」

「…えぇ…?」

「あと、最下層にある研究施設の動力炉からの発熱の蒸気で、定期的に、ほら、ここの穴からあいつらを減らす熱を出して調節もします」

「…いや、そのスライム…もう普通に避けるように動いて増え続けているように見えたんですけど…」

「…というか、地味にえげつないことたまに発案するよねリューオくんさ…」


 下水処理に関しての周辺への最終的な排水と浄化の対策。

 こういったものが細かく考えられるようになったのは、実のところ現実の世界でも古くから徹底されていたわけではない。

 沈殿槽などを作成して一部除去、分別する例はあれど、環境への配慮などを目的として行うのは、さらに後になる。

 それを、人からも周囲環境からも望まれることもなく最初から念頭に入れて小難しくしたのがリューオだった。

 上水道に混じらなければ、そのまま川に流すか地面に吸わせていいんじゃないの、くらいがこの世界の一般だったということである。

 うまい具合に、遠くで発見した汚水を栄養にしそうな貪欲なスライムがいたので地下に放ち、定期的に減らす自動の装置があればいいだろう…。

 と、いうのは、必要性を鑑みると、この世界の常識からでは、いわば論外になる。

 それでも、リューオにとっては、下水を処理して初期の想定よりはるかに浄化された最終工程に行きつく機構を譲れなかった。

 衛生の概念、伝染病などの先んじての対処としてそれは正しくはあるが、それに使う危険性を差し引いて必要性も感じないものを徹底する考えは、誰も付いていくレベルではなかったということだ。

 当然、そこは、ここの皆さんもである。


「地下施設の全開稼働時には、火炎の直接放射などもしますから、必要以上に増えることはたぶんない、とても自然に優しい下水道ですよこれ」

「そんなことしたらここの空気や臭い、一気に上がっていくよね…」

「そこまで匂いや汚れで無理…となってないのは、まぁ、スライムのせいなのでしょうけどね…」

「その時は一応、横のほうに下水から直接空気が逃げる仕組みもありますから、考えがないわけでも…」

「…あの、上にびっしりスライム張り付いてるあそこのこと言ってる?余裕で一部逃げてないかな…」

「そ、そんなことは…」


 初めてこの中で色々指摘されているものと思われるが、何にせよ、こう相次ぐと、普通に穴だらけですねと言わざるを得ない。


「まぁ、何でそんな事するのと言われたりして、マリカさんと建造時に大げんかしたりした原因になったりはしたんですが…」

「…たぶん絶対、それらが仕組みに適応して危険なダンジョンになるのを見越してたからだと思うのです…脅威なのです…」


 大勢の意見としては、圧倒的にマリカのほうが正しいと判断する様子。

 リューオからすれば、この上なく不本意な流れではあるが、言い争う必要があるわけでもないし、飲み込むしかない。


「ま、うちの村と近いわけですらない話で、そこまで細かく計画を評価する必要などありませんし、この辺にしますが…これ、実際のところ、危ないやつなんですの?」

「食欲は旺盛で増えやすいようですけど、すぐ溶けるような強烈な酸や溶解させる特性は無いものが運よく見つかったんで、そういう種類ですよ?」

「えっと…つまり?」

「…一般的なものより危険性はかなり低いです。普通のは腕や足が飲まれたらすぐ形がなくなりますから」

「物言いがえぐい!?」

「これでもかなりいいものが見つかったと思うんですが…生物もレンガなどの構造物も強く侵食しないなんて、都合がよすぎると思うくらいです」

「じゃあ…あれらは、何を食べて…」

「ここでいう汚水を吸収しやすいのはわかっていて、分解そのものはここのレンガなど無機物を侵食しない、そして生物を直接捕食する強酸性でないのを最初に確認していますので、安全性は保障できます、僕が」

「「「…そっかぁ…」」」


 そこらに関しては、早くも一切の信頼感が失われた様子が各員の目にも声のトーンにもありありと出ている。


「反応が、あまりいい感じじゃないですね、やっぱり」

「……だってほら、今も一人その物体に一人襲われてますし…」

「つよい!こいつすごいつよいです!私の武器が!武器!!!!」

「「タマあぁぁ!!!」」


 何気なく落としたナイフだろうものを取ろうと段差から降りたタマ・ニンイーが、ふと見れば頭からスライムに包まれていた。

 ステラとムカが慌てて助けに入っているが、足にちょっと触れられるくらいで、ほぼ何もできない。


「高難易度ダンジョンなのです…おそろしいのです…」

「やっぱりこの施設、無理がありますわよね…」

「いや…こいつらの性質を選んだこと自体は…なんとか及第点いただけませんかね…」

「どうしましょうねえ」


 ゴーカがこの状況のわりに無邪気にクスリと微笑んだ。

 命が奪われるまでではないことまでは、リューオを信じている表れとも取れるが、ただ楽しんでいるだけの可能性もなくはない。


「ひゃっ!?」


 その間に、ステラの手にスライムらしいものが伸びてきて、同じように包み込もうと試みる気配が見て取れる。


「離れなさいステラ!」


 ムカのほうは、危険度に強く警戒しているようで、即座にタマからステラを引きはがそうとステラをつかむ。

 が。

 スライムはそれからすぐ、タマの体のほうに引っ込んでいく。

 いや、タマからも離れ、縮んで消えるように水のある溝に引っ込んでいく。


「ほ、ほら、結構聞き分けいいでしょう?」

「そんな知能があるのは今知ったようですけど」

「そ、それはですね…」


 と、いうより、リューオの知るような挙動でこんなのは見た記憶などない。


「いやあ、助かりましたおふたりとも!」


 ニコニコのタマで万事片付いたような空気が流れるものの、リューオにとっては、そちらのほうが頭に残る。

 ひっぺがす方法を奥から一応考えながら、タマだし死なないようにできている気がするという、なぜかの安心感も多少はあったが。


「リューオ殿もご帰還大変おめでたいです!」


 おめでたいの君だけだけど…とは言わない。

 そもそもどこに帰ったわけでもなく逃走中なわけでもあり…。


「では、行きましょうか」

「あんまりゆっくりしたくないから、早くおいでー!」


 先導するフミからの声もあり、そこからは足早に行くべき場所に向かって歩き出す。

 誰も今いないからと言って、衛兵が絶対来ない場所というわけでもないのだ。


「ゴーカさんやステラさんは、あの方がどうして協力してくれるのか、知っているのです?」

「あの店にいたからまぁ、誰かが呼んだんだと思いますが何か?」

「普通に、いいかただと思いますよ」


 微妙に論点が。

 そして、マリカが近所のなじみで呼んだのだとしたら、村住人サイドは単純に知らないかもしれないし、長々聞くより本人に聞くほうがよほど早い。

 初対面でずかずか踏み入るのもリューオにすると遠慮したいところだが、状況的に仕方あるまい。

 ちょっとだけ速足で、先導する彼女に寄っていく。


「その、は、はじめまして」

「おやおや、英雄さんが話しかけてくれるなんてどうしたね、道が違っていたりした?」

「い、いえ、街の空気からして、僕を助ける人がいるなんて率直に言える人、今本当にいるのかなと少し不安なんかが……」


 元、とはいえ英雄扱いでもてはやされたことを最初に出していけるのは街のそこそこ長い住人ぽいと感じさせるに足りる。


「証拠があるからと一面塗りつぶされてるけど、リューオ様個人を信じてるって住人も、本当は多いと思うんだけどね…自信もって胸張ったほうがいいよ?やることやっての評価なんだから」

「とは言われましても…というか、リューオ様…?」

「ま、呼び方は別にいいさ、私にはちゃんとあんたら全員を助けたい理由がある、そこの心配はいらないよ」


 言わずとも、信頼におけるか疑問があることは、即時に汲み取ってくれる。

 さばさばしている以上に、キレる人だ、たぶん。


「でも、そういえば確かに、そこ隠していても意味はないね…私は…」


 そうフミが言いかけた時。

 近くに、ばしゃーんと、この地下水路で聞くにはあまりの音が響き渡った。

 反響も含め、急にこれを聞かされて驚かないでというのは無理だ。


「「「「きゃあぁぁぁぁぁ!!」」」」


 水音に負けない悲鳴もまた、響いた。


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