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異世界転生主人公は、ラスダン近くの美少女だらけの村を勢い任せにハーレムにしてしまうかの岐路に常に立たされている  作者: くる


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きんいろのかたまり

「…あれ?…えっ…?」


 ムカは、危ないだろうからという理由で近寄れなかった。

 ゆえに、遠すぎて何か状況を理解できないでいた。


「血…?」


 もはや人型かどうかも怪しい、動く瓦礫の持ち上げた腕に、暗いながらもしっかりと血がついて、滴っているのも。


「あの…侯爵…あの男…死んだようなのですが…」

「まぁまぁ、そんなはずはあるまい」

「いえ死にましたが」

「ふむ…本当なら、それは大変だな」


 リューオが向かう前に一応、魔王お付きの存在、ウノに手渡しておいた水晶玉に話しかける、その声。

 ウノと水晶玉から聞こえる声だけの侯爵は、さほど深刻っぽくは受け止めず。


「…え…今なんて…いったかな…リューオ…なんだけど…」

「今潰されたんじゃないですか?あんなに切れていた体を治すのにも散々苦労したのに、繰り返すように、なんとも不注意な…」

「何が起きたの…?」

「あ、なるほど…割と、心神喪失するほど、大切に思う方だったんですかね」

「ウノ、お前にとっても、この私の指示を完遂できない大事なのではないかという可愛げは生まれんのか…」

「侯爵、お言葉ですが、あるじは先日、旅の途中で魔力を開放して使えるさまを、このウノ確認しておりますればですね…もはや我があるじさまは、後援にすがる立場にはないのです。言い忘れましたが、ね」


 少し含んだ感じに、口元に笑みを作ってウノが報告する。

 この状況のなかでその顔はよっぽどだが、魔王の立場と勢力図が一気に変わる転機と思うならば、悲願とも言うべき臣下の喜び。

 感動をかみしめるのも、少しはやむを得なくはある。


「…それが本当なら、私からも賛辞を贈りたいが…仮にそうなら、魔力がおさえられないほどに、また漏れ出して、その都市などにいられないのではないのか…?」

「ですが、確認はしていますよ?素晴らしい回復術を披露されておりました」

「ふむ…」


 が、結論を言うと、驚くほどの勘違いだ。

 ポッドの魔力そのものが魔王、オーマのものとして使われたものではないし、その引き金となったものも、ステラの吸収あったからこそである。

 とはいうものの、そんなことを今は知る由もない。

 誰もこの場では、ポッドの機能すら理解しきれるものがいないのであるし。


「そ、そうだ、あのときと同じように使えれば…いそが…ないと…」


 ムカが、急に思い出したような大声を出して、そのそばから声がしぼんでいったり。

 そう、内心ではもう絶望に近い気持ちが渦巻いている。

 状況が信じられないし、見るのも怖い。知るのも怖い。

 こんな気持ち、ムカが感じたことはない。

 自分が出来ることが、もう何もないことを、結論付けて自覚したくない。

 ちょっと前に普通に話していた、その人について。

 そんな入り組んだ感情だけがあり、ムカは泣くこともできなかった。


「立場上、私の口出しそれ自体言うべきでないことを承知して言いますが…行かないでくださいね、あそこに今は」

「何か…ひとつでもいいの…何か…いま何かしないといけなくて…」

「なら、生きてください。オーガを動かしていたアレはもう、全員の後始末など出来なくて引き下がるしかないのです」


 実際は、どう傷ついているかの状況次第とはいえ、帰ったら勝ち確となり相手が笑うだけ。

 それは理解しつつ、だからと言って手出ししても藪蛇だろうし、魔族の視点としては成り行きを見るべき。

 ただの合理的な判断でしかない。

 だが、気休めは必要だと思った。

 ウノといえど、染まり切った人類の敵という心持ちでは、実のところ無いので。

 リューオに対して、魔王の相手にふさわしいかを見る視点の関係で、感情を含めないだけなのだ。

 今はただ、敵がこちらに向かってくるかが未知数であるので、少々身を隠しながら、基本逃げの体制だけをしておく。

 動けないムカを背負い、ウノが細かく出方を見る形で、この場はまとまるようだった。


「もし、今の話が嘘でもなんでもなかったら、リューオをあの子が助けられたり…するのかな…」

「全ては、ここから帰り着けたら、その後です」


 気休めと思えど、諦めろというよりはそういう方が静かにしてくれる。

 それだけなのか、彼女をそれなりに心配して出た言葉なのか、ウノとしても、口から出たものの真実は計りかねた。


 一方。

 影武者、リリカの周辺はというと。


「…あの場所…今見たところから急に離れたような…わからないのです…そしてあの場所に…あいつが…」


 とっさに空間位置をずらされているのに、おおよそ理解できないマヌ。

 今回の街の外壁その他の破壊に関しては、全く関係はない。

 ただし、底の底。

 皇女やリューオを生かしておくべきではないと結論付けた何者か。

 そこには、ある程度のつながりがあることを、双方現場で知ることはない。

 つまりは。

 大きな見方としては、今、共同で仕事を完遂した瞬間なのだが…。


「あの魔族の動きは、侯爵殿が後から対処してくれるのでしょうが…あとは、今の目撃者の、あなただけしか問題になりそうなものはない、と」

「なんですかアナタは…この大きなものも、リューオも…どうなって…」

「私がわからない?まぁ、いいでしょう。それでも憂いは断ちます」


 誰が見てもわかるわけはない。

 半壊のオーガから顔をのぞかせるリリカは、火傷もひどく、皇女そのものと認識するにはあまりに変わりすぎた。

 そして、見た目が変わるほどなら相当な痛みを伴うはずだが、影武者、リリカは、ものともせずに状況を見定めて行動している。

 名家に生まれた人間であるという前提が、もしかしすると崩れていることを示す根拠ともなりうるものであるが、マヌが知るはずはない。

 何かしら伝えられていれば味方であったろう認識の二人は、現場判断でに狩るものと狩られるものの関係となっていた。


「早めに移動したいので、あの方と同じ扱いにしてあげますわ。光栄に思ってください」


 魔力そのものはゴーカとの戦闘で損耗しているのか、実は口に出さないだけでダメージが大きいのかはわからないが、オーガからゆっくりと出てきてキューブを取り出すリリカ。

 やろうとしているのは、当然、別空間にアイテムのように閉じ込める手である。


「たっ、立ち眩みして…きま…!?」

「これで終わり」


 あっさりと完了。

 送った先の空間がどうであるか、送る途中に安定した万全のものを保存できているか、そういったことは関係ない。

 取り出すまで数日ほっとけば死んでいるはず。

 その程度の認識の行動に過ぎない。

 が。


「痛っ!?」


 リリカが、右手を硬直させる。

 見ると、右手の手のひらのあたりに光があった。

 謎の痛み。

 外傷によるものと違う、痛み。


「何が…?」


 見るが、浮かんでいるような光に心当たりはない。

 その時気付く。

 マヌを閉じ込めたあたり、暗いが確認できる場所。

 わずかな光が、そこにもある。

 光…いや、違う。

 漏れている何か。

 そこをじっくり見ると、そこには、ヒビのようなものが見えていたはずだ。

 ただし、地面でも、その近くのオーガの破片らしいものでもない。

 空中にだ。

 そこにリリカが気付いたのは、それを見た時ではない。


「まさか…この力に抗う…そんな存在が…いや!?」


 気付きかけたリリカが、キューブを手のひらに呼び出したとき。

 それは既に大きくかけており、見てすぐに崩壊した。

 バリンと、とても大きな音が響き渡る。

 マヌが少し前にいた、その場所…いや空間には、鏡が割れたような断裂がある。

 そして。


「助かりましたわ!首飾りの光だけではあてにできなかったのに、そっち側から入り口を見せてくれるのですから、そんなサービスは生かさないといけませんわよねえ!?」

「ゴーカ…様…!」


 空間をしっかり、その力でぶち破った神業の剣の持ち主。

 ゴーカ、その人の所業。

 出来るわけがないことをさらりとやったことを、本人は特に自覚してはいない。


「さぁて…望むべきではなかった罪なる欲をわたくしに向けてくれたその大罪…正しく償っていただきましょうかしら?」

「う、うそだ…」

「ぽあ…なんなんです…」


 ゴーカの肩に担がれて空間の移動に酔いのような症状を受けているマヌ。

 信じられないものを見ているリリカ。

 そして、わりと万全に、余裕の笑みを見せて、物体も空間も破壊して見せたゴーカ。


「で…出てきたところで、それならこいつの圧倒的な物理で潰してしまえばいいのです!リューオさんと同じように殺してあげます!」

「リューオを殺した?そんな簡単にあの人が…?」


 ふらりふらりと、またオーガに戻るリリカ。

 また、手を振り上げて動き出す半壊のオーガ。

 そこについた血に、さすがにちょっとゴーカも驚きをみせたが。


「まあ、あの人だし何かしら手は打っていると思いますが…それでも、傷つけたとしたら、もう一段階許しませんよ」

「出来るはずのないことを!」

「一応、あの人を心ならずも愛しているので!想い人を傷つけたというのなら!殺しても飽き足りないということを先に言わせていただきますわ!」


 はっきり。

 当人には言わない、言うことの無さそうなことをはっきりとぶちまけた。


「残念ですね!伝えることが出来なくて!」

「わたくしがこうして出てきたのに、すぐ声をかけないということは、どこか機会を伺うか逃げているのでしょう?その間にしっかり、お仕置きしてあげます!」


 よどみはない。

 状況がわからずとも、死んでいるなどあるはずがない。

 そういう確信がゴーカにあった。

 だから、一切の迷いも、よどみも、不安もない。

 剣をかざし、なにひとつの躊躇なく相手を睨んだ。


「…気持ちが…気分が…悪イ…」

「あれ、あいつの声がしますのですね…」

「あら、ほんとう?」


 かすかに聞こえた程度だったが、その時、マヌの一言でゴーカが止まった。


「見えるものが…ユガンデ…気持ちが…ワルい…もうなくなったと思ったノに…」

「リューオなんですか?」

「わからない…」


 こえは、たしかにリューオっぽくはあるが…。

 やがて、ほんの少しの時間をおいて、剣を向けていた先から少し、ゴーカから見て左のほうにリューオらしい人影が見える。


「……え…?…リュー……オ?」


 その姿。

 それに、ゴーカは少し戸惑う。

 髪など、リューオと思しきパーツはある。

 しかし、肌の大半は、金色のうろこを肌に張り付けたような、形容しがたい存在。

 それが、何らかの声を発していたのだ。

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