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異世界転生主人公は、ラスダン近くの美少女だらけの村を勢い任せにハーレムにしてしまうかの岐路に常に立たされている  作者: くる


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マヌ=モケノケーナ むしょく L5

「…悲しみです…あいつを見失ったせいで収入の当てすらなくなってしまったのですよ…あいつのせいなのですよ…」


 彼女の名はマヌ。

 先日、リューオが村の警護の合間に一度この街に戻ったと際、そのリューオを暗殺すべく奔走していた獣人種である。

 アイーダとともにリューオが消えるところをしっかり目撃した、何気ない一件。

 アイーダはマリカとも知り合いであるから、何が起きたかの予測だけでも聞く線が存在したが…。

 彼女、マヌには、そういった伝手も、状況に関しての憶測もできない。

 つまり、その視点で行くと、目の前で犯行を見つかり逃げられた末に追跡の当てもない、という、相当に行動のレベルが低い暗殺者だけが残ることとなる。

 実際には、凶行に及ぼうとしたこと自体リューオはおろかアイーダにも気づかれていない程度なのだが、当人はそこにまず気付いていない。

 そういったことで。

 そのまま報告して最低の腕の悪い下っ端にしか見られようがないマヌ。

 バイトも失い、信用も失い、とりあえず仮住まいは今月中までならいられるものの生活費はなし。

 悲しみの暗殺者は、あてもなくふらふらと食事の当てはないかと、この数日、夜な夜な街をさまよっていた。


 ―――――――――――――――


「早く答えていただきますよ、ゴーカさんをまさか、キューブに…」

「勘違いで物騒なことを言わないで頂きたいですね?私は正しく、人間の側にあるよう保護を!しているのです」

「御託はいいんです、すぐに出してください!」


 極端に焦っていた。

 自分としても、ちょいちょい使っていたからでもある。

 集団戦というのは世の中よくあり、敵側の指揮系をいきなりキューブで収納するという手を、昔はよくやっていた。

 理由としては、空間操作の位置集約が難しいのと、一度に戦う数は減らしていきたいといった戦略もある。

 この間、街に帰還した時に取り出した、注意逸らしのための怪物はまさにそうだ。

 正確には、結構長くどこかのダンジョンでリーダーしていた化け物をしまった忘れていた。

 この収納にも慣れが必要で、内部を覗きながら行うということができないため、入れた時点で細切れになっていたり、空気が入っていなくて生物は死んでいたということもよくあった。

 時間停止に近い形で収納を行うのはしばらくは運で、無生物でも安定して収納できるようになったのは、ノウハウをかなり蓄積した成果である。

 つまりは。

 目の前のこいつが慣れたことができるか未知数で、最悪既に死んでいる可能性もあるということ。

 慌てるのも道理だろう。


「酷い方ですねえ、今すぐ死体を見せろなんて…」

「あなたが正しく使えていればそんなことになったりしませんがね!」

「あの方が、私の欲しかったあの剣を渡してくれないから、意識が飛んだ後に私が受け継ぐよう計らっただけですので…私は正しいことをしていると思いますよ?」

「ふざけるんじゃない!」

「強い存在が強いものを受け取って、敗者が従うのは、ただの摂理というのです、そうでしょうリューオさん」

「何度でも言いますが、その顔で言うのをやめてください、そして今すぐゴーカさんを出してもらう!」

「出来ていませんし、出来るはずはないですねえ、あなたには」


 言ったはいいものの、キューブを使ってもらう必要が出たということで、さらにあっさり殺せもしないというのが追加。

 もともとオーガにダメージを入れるのも要検証の段階…というのが重なり、たしかに、今は口だけだ。


「こう、何もかもが戯言になって勝利を確信できるって、なんて気分がいいのでしょうねえ!あとは念のために数日窒息を待ってゲイズオブロードスを取り出すだけで、こんなに簡単にあれもこれも私のものだなんて、都合のいいものが一気に転がり込んだものですわあ!」

「勝った気になっていますが、何一つ確実性がない準備段階でよく笑っていられますね!そんなことで継承などできるんでしょうか?」


 挑発しまくる。

 いまのところは。

 ならば見て見ろとゴーカさんを出してくれる棚ぼた待ちでもいい。

 勝ち誇って大味なミスをするくらい乗らせるか、怒りでミスを誘うかの二択なら、怒らせるほうを僕は選びたい。

 一瞬たりとも、媚びてたまるものか、という精神で。


「立場から見れば、私は力など使わずとも手に持っているだけで勝利ですし、そうなれば堂々公の場に出て皇女を偽物として処罰する芝居すらできる…それを想定できませんか?」

「あなたのその言動を素に出して、人を集められるような徳を周りが感じるはずがない、それは確信できますね!」

「どっちであろうと、あなたがそれを見ることはないですがね!お死になさい!ドリルスプラッシャーパンチ!」


 早い!内心キレているにしろ実力に訴えるの、早い!

 内心焦って逃げに移ろうとする。

 が。


「まってましたぁ!」


 目の前に、オーガが立ちはだかる。

 もう一体の、薬屋さんの乗っているオーガだ。


「私のほうからも暴言の一つでも吐いてみようかと思ってたけど、こんな簡単に出してくれるなんて、待ってみるものね!」

「何のマネを!?」


 薬屋さんのオーガが、神業かというほど上手に飛んだ腕をつかみ、押さえつけ、守ってくれた。

 かなり傷が多いが、こっちを気にするくらいには落ち着いて戦えていたようで、よかった。


「もらっとくね!」


 そして、失っていた左の腕でにそのまま装着。

 …できるんだ?


「大きさはともかく、しっかり動くねぇ、やってみるもんだ」

「「そんな、バカな!?」」


 影武者の人だけでなく、魔族の人も思わず叫ぶ。

 共通規格で普通にできる設計とか、そういうんじゃないんだ?

 じゃあなんだ…なんなんだそれ。


「じゃあ、整ったところで、今度は私からも力づくでゴーカさんを返してもらえるまで攻め続けてあげようか!」


 殴り掛かる薬屋さんのオーガ。

 そうさせまいと、ほかの3体と、さっきまで戦っていたらしい背後の1体も、殴り掛かって止めにかかる。


「バーナッコゥ!!」


 が、なにか戦闘にしては隙の多いポーズをしながら薬屋さんのオーガが殴り。


「ザンレツケン!」


 密接からの謎の拳の連打。


「メェガスマァーッシュ!」


 手前に両手をクロスさせて攻撃。

 光のようなものが見えたのは気のせいだろう。


「サーティが、なんで押してるんですか…つよいんですか…」

「調子に乗って好き勝手に!」


 驚いてポカーンとしている魔族の人に、僕以上にうまく挑発…または攻撃している薬屋の人。

 ずいぶんと攻めているように見えるが…。


「…やっぱり、あんまり、削れてないね」

「全員でやっておしまい!」


 やはり数の暴力。

 号令でそろって攻められては、さすがに元々のスペックにも差があるのがあることもあり、辛い展開なのが見える。


「これだとあとは…これしかないか」


 割とその時、躊躇いなく薬屋の人が、とあるボタンを押したのを僕は知らない。

 今でも、知らないままやった事故だと思っている。

 少し下がり、相手の場所を図るように動く、薬屋さんのオーガ。

 そして、両手で防御の姿勢に移る。


 ちなみに、その最中、中の薬屋さんの人は…。


「私に、降りろって言うのかいオーガくん…」


 意図しないで、急に足元に空いた穴に困惑し、独り言を言った。

 らしい。

 シートも移動し、それが脱出口であるのを即座に理解する。


「ありがとう…私のオーガくん…」


 その脱出口を使って外に出た直後、味方のほうのオーガはできるだけ相手が動かないよう、外側の相手を掴んで離れられないようにしたのだろうか、そんな動きをした。


「…離れますよ低能の間男さん」


 ずいぶん小声で魔族の人が言った。

 なぜか、走ってくる薬屋の人も見えた。


「…えっと…はぁ?」

「あの人も殺したくないなら連れて、早く」


 理解しないまま、縮地の空間操作で、思いっきり遠ざかる。

 何が…と説明を求めようとした、その瞬間、だった!

 すさまじい爆発と熱量の風が、こちらに向かってくる。


「えっ嘘でしょ!?自爆とかしました!?」

「オーガくん…無駄死にではないぞ、君が敵を引き付けてくれたから新型を撃破できたんだ…立派な散り様だったぞ…」

「浸ってる場合じゃないです!!」


 これで影武者の人死んでいたら、取り出す方法がないとか酷い事態なんですが!

 ゴーカさんどうするんですかと!

 責めたりは絶対しないですが!

 そういったわけで、多少の暑さはしょうがない。

 熱が収まるまで待って、寸前まで辛うじてご存命でしたと言われるのが一番納得がいかないだろうし、そのまま突っ込む。

 赤熱して過剰に周囲を熱くしている破片は一時的に僕のキューブの領域に押し込んで、早いところ温度が下がるように小手先程度のあがきはする。

 周囲で火事が起きていないのは、少し幸運だった。

 森林に近かったら、わりと最悪だった。


「生きてますか!?生きていたら救助します!返事をしてください!」


 気持ちとしては、そのままどうにかなってしまって欲しい気はなくもない。

 しかし、ゴーカさんも一緒にという話で、そんな考えが優先されるはずもない。


「しかし、結構とんでもないな…カエルを吹っ飛ばしていたから爆発物があるくらいは認識してたけど…」


 どう考えても、この被害が一番でかい。

 ほっといたらどうなっていたか、という比較は今もう出来ないが、爆風などは空いた穴から壁の中にも直接入っているだろう。

 見たくない…やってしまった、この末路…。

 でもまあ、動いている敵のオーガもいない。

 満足な戦闘力がない程度には、どれも吹き飛んでいるように見える。

 さすがにすごい。


「いますか!?死んではいないのでしょう!?僕ならここにいますから、出てきてください!」


 影武者の人に呼び掛ける。

 ちょっとでも生きていて声が出せるなら、おそらくまた補充できたポッドで回復はできるだろう、たぶん。

 そう思い、反応があって欲しいと叫び続ける。


「…なら、そこで他のデカブツ兵器とともに死ぬべきですね!リューオさん!」

「無事なのか!?」


 瓦礫と思っていたものの中から、辛うじて腕が動くような程度なのか、オーガらしいものがはい出してくる。


「こいつらを出来る限り、とっさに盾にしてもこんななんて、ずいぶんなものを隠していただいて…お礼をします!」


 生きているならいい、あとはディスクをいくらでも出して寄せ集めてでも…。


「リューオだ!見つけましたのですよ!おまえのおかげで!!!」


 だれ?

 このタイミングで壁の側のほうから、その声、だれ?

 見ると、壁の側から凄い速さで駆け寄ってくる女性?

 ああ、よく行くお店のウェイトレスの人。

 …言ってる場合じゃない。


「今は近寄っちゃいけないですよ!」

「この気持ち、晴らさず置くべきですか!あなたのおかげでですねえ!」


 会えてうれしい気持ちとか、いろいろあるだろうけど、今じゃないでしょ!?

 怖い破片とか、下手すると死んでいたような熱がまだくすぶっているは場所であるとか、考えないと!

 死んじゃいますって!


「こんなでも、まだあなたを倒すくらいはわけはないです!」


 その間に、辛うじて起き上がったのだろうか、いびつな何かが片手を振り上げて、叩きつけようとしているのが見えた。

 キューブでの移動を、まず優先して…。


「…あ!?移動から空間固定で封じて…!?」

「死になさい!」

「ぷんすかですよ!あなたのせいでえ!」


 しかたない!

 影響を受けていない、彼女の近くだけをまず空間移動で…。


「あえ?」


 遠くに、走っても間に合わないように、置く。

 これで大丈夫かもしれない。

 その、安心した瞬間。

 その何かの拳は、僕を含んで地面の感触を味わうよう、叩きつけられた。

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