かぼちゃのおばけ げんえい L00
「ディスク、フェルマータ、供給レベル、フォルテ!ディスク、スタッカート、供給レベルメゾフォルテ!」
皇女の影武者が目立って見つかるのがまずい。
取りあえずできることをするとしたら、もっと目立つもので気付かないよう気を引いておいて、あっちが動かなくなるよう、何とかしてもらうだけだ。
オーガ並みに巨大に設定して起動したフェルマータ、そして目立つように増やした浮かぶ針、スタッカート。
乗らなくてもある程度の命令はできるから、出来るなら掴んで壁の外までもっていくべきだ。
組みあっているままでは、薬屋の人も空間切断で巻きこんで切ったとき目も当てられない。
慎重にやるところはやりたいわけで。
「たのむ!」
光るよう、目立てるように、魔力の光が宿ったものも少し投げて装飾し、上空に飛び立たせる。
「なんだあれ!?」
「あれが、壊したのか!?」
「壊れたところの大きな人間じゃないのか!?なんだよあれ!」
注意は引いているな。
フェルマータをそのまま急降下でぶち当てて、戦う場所だけでも動かさせてもらう。
十分な距離を伴って質量を乗せた急降下突撃。
それは効くだろう。
二つとも吹っ飛んで、壁の近くの見張りの宿舎が見事に崩壊!
それまずい!さらに広域にすさまじい被害が!
やっちまった…。
たしかに注意はそっちに向くが…。
でも、明かりついてないから、街の見張りに呼び出されて無人だったらいいなと…思わずにいられない。
やること片付いたら人の確認と救出、絶対参加するからね…。
「フェルマータ!それ、もちあげてくれ!」
出来るかは別。
だが誰かいて救助するにも、戦場じゃお話にならない。
最低でも誘導するくらいの役割はしなくては。
そのつもりで、倒れたオーガを掴みに行く。
起こす手助けできるくらいの浮力はあり、ほっとするが、それで暴れだしても厄介だ。
スタッカートを打ち込んで砕けるかを試すが、何本かが刺さって行動を阻害できる程度。
歩き回ることには対処できなさそうなのと、薬屋さんのオーガが寄ってきつつあったので、邪魔化と思いスタッカートは解除した。
「押せ押せぇー!!」
意図を汲み取ってくれたのか、薬屋さんがフェルマータと一緒に壁の外に行く方に、相手のオーガを動かしてくれている。
いい調子だ、そのままだ。
が、ずっとそのままにはしてくれない。
相手のフィフティオーガ…だっけ、それも、振りほどいて、さらに暴れようとしている。
本当に、今度も怪獣大決戦だ。
「…いいもの見れたとでも、おもっていませんか老人」
「いやいや、さっきの剣を見せられては、他のものなど全てかすむというものでございますよ。悪くない楽しみは得ておりますが」
「そんなもんだよな、やっぱり」
おもには、押さえろという命令にずっと従っているのか、相手のオーガも薬屋さんのオーガを主に狙っているように見える。
そこに、横やりを入れるよう、門に向かうよう、フェルマータが上空から隙を見つつ体当たりで押す。
フェルマータ自体には火器みたいなものはないので、それしかない。
移動に主に使っているものであるので。
「よぉ~、たのしんでるかぁい?」
「地獄だよ!見た目も気分も」
「おや?そちらの方はいったい…」
「あぁ、あの村の襲撃の前に、あんたの手下っぽい二人死んでた傍にいたやつだったか…くらいしか俺、知らない」
まぁウソだが。
怪奇現象みたいな怪しいものが女の子になっちゃったんだ!なんて楽しげに解説できるほど、いまのぼくの余裕がない。
「あの近くで…あの前に死んだ…?かような報告は受けていませんが?」
「じゃあ野良なのか別の奴の配下なのかしらんけど、詳しいことは離す余裕ないよ」
「いえ、円卓のほかのものに、直前少し慌てていたものがいた記憶は…」
「僕の見えないところでしてくれ、そのお悩みだか、思わせぶりなのは」
「楽しいそうだけど~なにしてんのぉ?」
「あのオーガに、人の目をすべて向けないと、皇女の評判がやばいんで、一生懸命やってるの!かといってあの辺りに人が野次馬になって集まったら大惨事だし、大変なんだぞ!」
「へぇ~」
楽しそうに見える時点で、こいつはそのうち処すべき悪意の持ち主な気がしてしょうがないが、それはそれ。
「なら~、ボクが遊んでみんなをあそこに行かないようにできたら、役に立ったりする~?」
「…できるのか?」
「もうボク、そういうのが一番得意!まかせて~やっていいならできるよ~」
「ならすぐ頼む」
…その時。
この「こいつ」が、すごい笑いの表情をしていたのに、僕は暗いのもあって気付かなかった。
この時点での、おそらく最大のミスだと思うが、それを反省するのはかなり後だ。
「よしよし、楽しい祭りが来たなぁ~」
ふわり。
浮いた後、遠くの屋根の上に出現した「こいつ」。
ニヤニヤと笑った後、ふわっと気が抜けたように体を左右に揺らして、無表情になる。
あまり注目していないが、そう見えた。
その直後、あれが聞こえた。
最初に会ったときに感じた、強い声。
人よ、知るがいい
暗がりに恐怖があるのを、知るがいい
全ては滅び、世界には果てがあり、その先に待つのが闇であることを知るがいい
その先に、その果てに
あったものを知り、呼び起こすことそこ、最悪の恐怖であることを
…今、知るがいい
「ひ!?な、なんだ…この、ぼんやり浮いてる布!?」
「骨が!骨が寄ってくる!」
「カボチャに!カボチャにくわれるうううう!!!」
周囲に、急に聞こえてくる悲鳴。
知っていたり、不安になっていたものとは、何か違う悲鳴がする。
「たすけてくれ!死んだ爺ちゃんが大群で!」
「骨に足を掴まれてるよお!!!」
「死んだ人が…死体が行進してる!!」
なんだ?
何が周りでは見えているんだ?
そこで、はっとする。
あいつの得意技。
幻覚。
「あっ!!やべえ!?」
最初に会った時見たもの。
自分も一度見た気がするもの。
共にいたものを恐怖で殺すくらいの、おそらく知る限りの恐れを呼び起こす幻覚。
得意なものってそれじゃないか!
「ふっふっふ~…あはは~…これだけ人が多いと、楽しさも食いごたえも違うなぁ~」
こいつ、感情を食ったり人間の悪意や絶望、恐怖を楽しむやつだったか!?
「ちょっと!それやめ…あ…」
「なんだって~?」
「いや、いい…」
今解除しても、リスクが増えるだけだ。
「死人は出さない程度にできんかね!」
「りょ~か~い」
みんなには怖いながらも、ちょっとの間夢を見てもらう…。
すまない、街の人。
その間に全て片付けて、これも被害以外、すべて夢だったとしてもらうことにしよう。
そのためにも、いそがないと。
オーガに向かい、もう一度、身構えた。
頻度が減ってきていて、すいません




