キューブ 同軸空間連結操作ユニット
オーガの上に立っている人影。
器用に立って、こちらを挑発してくる人影。
皇女の姿にもぱっと見で見えるが、そんなはずはない。
あの、皇女の影武者だ。
魔族と内通して立場としても上のほうにいて、皇女暗殺に関しても躊躇いがなさそうな存在。
なるほど、たしかにつじつまは合う。
理由や経緯は考えないとするならば、だが。
「僕の部屋に一度来ましたね?」
「そうですね、中に二人いるのも見えていましたけど」
確定か。
隠すことも考えていないようだ。
しかし、だからと言って、ひたすらアピールするように罵るわけにもいかない。
一般の皆さんに影武者がいるなどという話は広まっていないのだから。
そう、下手をしたら、本当に皇女が暴れたという話にするための行動なのかもしれない。
当人は、そのまま姿を変えるだけで安全であろう立場として。
と、いうことは、目立つ位置で何かしようとするなら、あれは真っ先に目立たないよう始末すべきなのである。
まったく、迷惑極まるやつだ。
しかし、一撃で何とかする手は、なぜか効いていない。
向こうは衆目を集める気なのか、僕が間合いを詰めるのをやめてからは、むしろ休み休み余裕を見て攻撃する気でいる気配。
なにか…なにか手はないのかと、考える。
「…ちょうどよく、役に立てそうね…」
「ひ!?」
「…まぁまぁ、こっち向かないでいいから、オーガくん出してオーガくん」
手を考えているその時に、不意に声が足元からきて軽く凍り付く。
ちらりと見ると、この街の整備でかなり力を入れた自慢の設備、下水道のマンホールから、人がのぞいている。
そして、知った人間が声をかけてきている。
なんでだ?どうしてそんなスタイルを?
「…あぶないですよ…!……それといきなりその出方、怖いです…」
「…皇女が来たからって街だと今日から専門職は夜間呼び出しと打ち合わせでかき集められてるし、一般の人は外出禁止令でものものしいのよ…隠れて移動してるわけ…で、この音で気になってね…」
お祭りのはずが、戒厳令並みの締め付けになってるのか。
夜間だけとはいえ。
そんな話、聞いてないんだけどな。
野次馬が飛びつかないわけだ。
というのもさておき。
薬屋の子はなぜ、そんなに都合よく来たのはいいけど、オークに乗りたいの…。
「まぁ、なるほどですが」
ともかく、事情はいい。
一応マンホールを利用したことは納得はしよう。
出歩くことの必要性を問い質したくて、たまらなくはあるが。
「話は聞かせてもらいましたわぁ」
「ひい!?」
が、もうひとりいるのは想定外。
「なんですか勇者さん!楽しそうですねえ!」
「ちょっと、そっち後で!」
「誰かいるんですか?近衛の方ですかねぇ?」
完全に影武者の人にバレてるじゃないですか。
しかもお嬢様、よくそんなとこ我慢できますねえ。
「お嬢さんのほうは、どっちにしろ戻ってください、危ないんですよ」
「風邪ひいたかもしれないんで、薬がないとと連れてきてもらってるのにずいぶんな言い口ですこと!」
「それこそ寝ててくださいよ…」
「街の観光できないの終わるのも嫌なんです!お土産も買いたいし!」
「オーガくんまだ!?」
「あぁ…もぉ…」
口で言っても解決しなさそうだし、時間なんてかけられないし。
「キューブ28アンロック!」
仕方ないですね、出しますよ、出しますよもう。
壁から離れた、開発中の区画の広場に飛び出す旅のお供をした方の、オーガ。
…薬屋の方…左手ないままなんで、たぶんどうともならないですよ?
「っしゃぁ!」
「近衛ではない!?」
大きなものがいきなり飛び出したのに影武者さんのほうが驚いている隙に。
「オーガの大きさの差が、戦力の決定的な差でないことを教えてやる!」
なんとも素早くマンホールから出てきてオーガに滑り込んだ薬屋の人。
片手をあげて実にやる気がありそうなポーズの後、一目散に壁にダッシュしていく。
「あいつら、このデカブツのテストは好きに遊べるゲームのようなものだと言っていたのに、なぜ敵に居るのですか!?」
「ごめんねぇ、沼地で武器も使えるの知って、どうしてもオーガくんの武器つかってみたくってさ!的になってもらうよ」
「この私に向かって、よく言ったものです!」
オーガ同士がぶつかり、組みあって、殴りあう。
距離を取ったり引きずられたり、それだけでさっきまでとは比較にならない被害が街の中で広がっていく。
まじでやめて…?
「これね?…じゃあ、アイアンタイフーン!」
薬屋の人が乗っている方のオーガの首がぐるぐると回転し、槍のようなものが首から射出。
本当に何の意味があるんだろうその挙動。
「いいじゃない、いいじゃない!」
「おかしな飛び道具を使ったところで!」
影武者のほうのオーガも素早く手で防御し、弾いて被害らしいものはない。
周囲にそれが散らばって建物はまぁ壊れるが。
「ホーミングインパクトブロウ!」
さらに腕も飛ばす!
当然弾かれて、今度はうまく足元に落下。
再び装着して腕を復活できたようだが、倒すには程遠い。
少し相手の腕装甲に、へこみはできたろうか。
それ以上に、どんどん被害が街に…。
頼みます、出来るなら、壁の外に持ってってやってください…。
「らちがあかない…!フィフティオーガ!それを掴んでおきなさい!」
言うが早いか、影武者の人がようやくオーガの頭から飛び降り、姿を消す。
「逃がしてたまるか!」
そっちを追いかけようとしたが、相手のオーガに腕を掴まれて動けない薬屋さんの乗るオーガくん。
ピンチではあるが、どっちかというと、僕にとってもその方が助かる。
「できれば、そのまま壁の外まで押して動かせませんか!?」
「…んー、ちょっと、パワーで負けてるから、思い通りとはいかないかな!」
呼びかけるが、薬屋の人からの返答としては難しいという判断か。
「あっちはあっちで、好きに遊んでもらいましょうかね」
そこに、後ろから不意に聞こえる声。
「派手に暴れる割に、皇女を探しにもいかず僕に話に来る…って、目的がさらにわからなくなりましたね…」
「皇女は今は関係ないですから、それはそうでしょうね」
「だったら、その顔をもうちょっと違うものに加工してこういった行動をしてほしかったですかね…」
「それはまぁ、無理なのでしょうがないですよリューオさん」
「…その呼び方、やめて欲しいな…その顔では」
「ずいぶん、あなたはリューオを怒らせられる立場の方なのですねぇ。わたくしも興味、ありますわ」
マンホールからあがってきたお嬢さん。
いつの間にか、三人の立ち話という構図になっていた。
「まともにやりあうとしても、少なくとも思った展開にはならないと思いますよ?こういうことですから」
言って、影武者の人が片手を出す。
そこに、出してから手のひらの上に現れる、四角の物体と、水晶球。
「キューブ!?」
「私のいう意味、これを見たら分かりますでしょう?」
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