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異世界転生主人公は、ラスダン近くの美少女だらけの村を勢い任せにハーレムにしてしまうかの岐路に常に立たされている  作者: くる


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リリカ=ワーナ  かげ  L83

 トントン。

 小刻みに何度かドアを叩く音がした。

 居るのはわかっているぞ、と言わんばかり。

 明かりは消して、部屋のドアを開ける。


「どちらさまです?」

「…勇者と言われる割に無警戒ですね…この間合いでも手傷など負わないという自信なのでしょうか?」

「えと…お会いしたこと、無い方、ですか?」

「この顔、全く見たことがないというわけではございませんでしょう?」


 フードと眼鏡で隠しておいて何を、と思うのは言わずにおいて、相手が眼鏡をずらすと、たしかに見覚えがある。

 そして、その顔立ちの美しさもあり、素直にぎょっとする。

 皇女だ。

 陽のある時刻に同じテーブルで話をした、その人。


「…さ、さすがに、本人ではないですよね…一人で出歩けるお方であるはずがない…」

「機転はきく御方のようで。では、この顔の方、もう一人このお部屋に来ませんでしたか?」

「き、来てたら、街中大騒ぎなんでは?」

「そうでしょうねぇ。王族が人目を忍び、一介の旅人のところにお忍びで押しかける…大変な物議の種です」

「いえ、街中の警備が大騒ぎで動き出す気がしますし、僕も呼び出されるでしょう」

「…でしょうね。皇女はこの街の道など把握しておられるはずがないですから」

「でもあなたがこんな時間に動かれるって、何か…あったんでしょうか?」

「…いえ、少しお顔を確認に来ただけですので、それでは失礼します」


 雰囲気があまりに違う。

 顔は同じでも、本当にずいぶん違うものだ。

 冷淡というか、敵対的というか、緊張感を感じさせるというか。

 言うまでもなく、間違いなく皇女の影武者なのだが、彼女は役割の時以外は極力表に姿を出さないタイプではないようだ。

 なにか、無駄に強さを感じさせる。

 そしてそのまま、彼女は音もたてないように去った。

 なんだったんだろう。

 

「さて…本当におっしゃった通りになったことですし、ここからは、色々お話していただけるのですよね、皇女」

「ご迷惑だと、お思いですか?リューオさん」

「…いえ、正直、ドキドキしっぱなしで、今もどうしたものやら」


 影武者が立ち去ったところで、本物の皇女に声をかける。

 誰かが部屋に立ち入って調べたいという場合も想定していたので、スピランテという、隠密行動目的の隠れられるディスクを用意して、皇女に隠れてもらったりもしていた。

 街に戻って早々に全部をすぐセットしてくれたマリカさんに感謝しないといけない。

 とはいえ。


「それと、あの人と話していても思いましたが、警備も何も動かず、影武者のあの人だけが最初に来るの、やはり、意味が分からないです…」

「リリカは復権派のなかでも急進派閥のほうから、いきなりコウに仕えるものとして投げ入れられた、筋金入りの役者です」

「…穏やかじゃない話…ですか?」


 皇女の口ぶりが、信頼できる臣下の話をする雰囲気じゃない。


「あれは隠すこともなく、明確にどちらからの情報も気軽に流すスパイであることを隠すことをしませんでした」

「ダメな奴じゃないですか!?」

「ある意味、立場は揺るがないという意味では分かりやすく信頼できる人物なのです。ワーナという名家の生まれでもありますし」

「…それも、急進派の家系なんですよね多分…」

「よくおわかりで」


 怪しい通り越して邪悪すら見え隠れしてそうだが、それも涼しい顔で信頼できると言えるのは、高い位置の視点が持てている、器というものなんだろうなぁ。


「こなす仕事は完璧で、予定を言わなければアイーダでも父君の隣で愛想笑いをしている時は見分けがつかないくらいですから、今だと完全に入れ替わって見分けがつく人などいないかもしれませんね」

「…次から次に大変なことをおっしゃる」

「父君が、そもそも私に興味を持つことがないので一番簡単に騙せそうなのが、いけないだけですわ」


 今の発言が一番とんでもねえ。

 当人であっても、笑って言っていいようなたとえ話ですらない。

 今の王も、目立つ政策を出す人ではないが節穴ではないはずだし。


「ただ、まぁ、細かく癖などを観察させたり、本人かを疑ったものがいた場合の対処法を一緒に考えたり、かなりコウの後押しもありますし」

「ひどいことを…」

「何かが起きたときに、完璧な影武者が完璧に仕事をこなすよう図るのは、間違いなどないはずですが…?」

「それではなく、気付かれないような完璧を判断させる対象が、身内とアイーダさんになっていることですよ」


 僕も、遠慮している分の距離は維持しつつ、だいぶ言いたいことを言うようになってきている気がする。

 アイーダさんが横に居たら、さすがに怒りそうと、少し我に返りつつ。


「たしかに…それはいい指摘ですねリューオさん」


 さっきからずっと、柔らかく笑っているの、少し怖いんです皇女。


「でも、入れ替わったままでもいいと思っているからには、それこそ推し進めてしかるべきでしょう?」

「誰も、それがいいとは思っていないという話も、アイーダさんもしていると僕は思っていますが…」

「確かにです。でも、コウなりの理由もあります…ひとつ、いえ、ふたつです」

「ま、まぁ、話せるものであれば、聞きますが」

「お話したとおり、剣が見つかったとしたら、私は手にすることはできませんし、正しくそれを手にできたものが継承することでしょう…命が惜しいので、そこで偽物呼ばわりされて殺されるより、逃げたいんです」

「…大変失礼なことを言います、お許し頂きたいのですが…嘘ですよね、それ」


 一瞬驚いた皇女。

 その直後に、下を向いて笑う。


「意地悪なことを言って気を引こうとしても、考えなしでは、むしろ嫌われてしまいますよ?大丈夫なのですか?」

「皇女が、ただ逃げたいだけで過ごしているはずがないという感情的なのもありますが、お仕事も準備も替え玉も丁寧に整えて周囲のことを考えられる皇女を、全員手のひらを返して殺すなんてないと思いますし、そんな生真面目に積み立てた立場全てを皇女が紙切れのように捨てられるくらい軽く考えられると思うのも、無理があるじゃないですか…」

「考えすぎなのですけど…真面目だと信じてくれるのは、悪い気分ではないです、リューオさん」


 真面目に言っているのだが、ずっと笑われている。

 少し思い詰めていた顔を最初はしていたのが、緊張がずいぶん解けたのだろうか。


「でも、剣が出てきた時を怖がっていたのは本当で、誰も私が別人になることを望んでいないと思っているだろうというのも、間違いです」

「…間違い…なんでしょうか…」


 納得しきれない。

 皇女を見て日が浅いとはいえ、アイーダさんが心酔出来て、物事の組み立てをしっかり見据えられて、周囲からの長年の評価が賢いの一言。

 それを組み込んでなお、間違いだと言われるのも納得しづらい。


「リリカは、当人の考えなのか、命令なのかは伺い知れませんが、隙があれば完全に入れ替わって、迷いなくコウとして振る舞う気でおりますよ」

「反逆でしょうに、それは」

「私はそれが嬉しいと思ったんです。何かがあっても、誰に気付かれることもなく穏便に取り繕えて、わたしの存在などあっても消えても変わらず世界は進む…素敵ではないですか」

「とんでもない…ご自身が作ったいくつもの功績を小さく見すぎなだけでは…」


 自分が何でもないもの。価値のないもの。

 そういう風に考えている節は、昼の話でも少し見えた。

 だからと言って、これはあまりにもだ。

 アイーダさんも見過ごせない、見捨てられないと、これだけについてずっと気に病んでいても不思議じゃない。

 それくらいに、何か思考感覚の分野か要素に欠落すら感じる。

 あらためてもらいたい。


「ともかく、コウそのものをあらかじめ入れ替えるのは、復権派の一部が下準備をした計画の可能性もありますからね」

「ほんとうに、ふんじばって解体してください、それ…」


 心から思う。

 万一そうだった場合、そこまで行くと飼われている中に国賊がいるだけだ。


「旧王権復権は、一日太陽のあたりから扇動がうまくなりまして、今の動きではもう多数派の大派閥ですし、実質的に無理ですね」

「不敬すぎる部分を切り取ったりはしないと、飲まれて国がまともに動かなくなったりしないか不安ですが…皇女の安全も含めてですよ?」

「でも、リューオさんがそれでお怒りになるの、ずいぶん不思議です」

「笑っている場合と思わないんで…外野ですみませんが」


 確かに、王宮内の空気といったものは知らないで言うのは滑稽だろう。

 が、国を運営していて国を敬いも維持する意思もないものが大半じゃ、それは国ではないと思う。


「いえ、すみません…そんな部分で気分を荒げるほど、宮廷派閥に関心やご興味がありましたとは知らなくて」

「将来が楽になるには、ちゃんとしてくれるところはちゃんとしていたほうが嬉しい…だけなんですけどねぇ」


 たしかに、言ったところで、なんだが。


「でも、コウが心配でもあって、そうしてお気持ちを動かしてくれているのなら…うれしい…」

「みんな同じはずですよ、皇女はそれだけたくさん人を助けたり、敬意を集めたりしているはずですよ…だから」

「…だから?」

「皇女はもっと、輝くようにして憧れであってほしいと、言いますか…愁いをできるだけ取って胸を張ってほしいと言いますか」


 あれ、なんか、恥ずかしいことを言っている気がするぞ。


「そうそう、それと、先ほど言っていた理由、まだ全て話してませんでしたね」

「え?は、はい」

「……初恋です」

「えっ」


 絶句する。

 何を言ったのか理解するのにも、そのまま放置されたら数時間解決できなかったくらい。


「アイーダと一緒に、ずっと街のできる様子も、あなたの姿も見ていました…横でずっと…」

「その、だれについてとか、その色々…あの」

「まっすぐで、私欲を振りまわさず、何も残らないくらい毎日、その手にあるものを出し尽くして、コウを不安にさせるようなことばかり」

「ごめんなさい」

「優しくて、でもそれは負けない強さに裏付けられていて、それでいて…食べ物を買うお金がないとアイーダを驚かせたこともありましたね」

「めったにないんですよ?そこまでは」


 ここに街を作るなんて計画などなかったころに、食い扶持のない大工や職人さんを連れてきた時、給料に当たるものは自分が出す約束だったので、たまにそこに吸われて手持ちが枯れることはあった。

 常にではないんだ。

 マリカさんがいるから借りることはできたんで。


「そんなあなたを、いつからともなく…見ているだけなのに、好きになっていました。生まれて初めて」


 いかん。

 雰囲気的に、これはもう飲まれたくて仕方がない。

 いろいろ、その、出来る空気じゃないのか!?


「…ずっと、あの方の影を見ながら、強欲で尊大であれ…そう、コウは意地になるように振る舞ってました」

「…いや、そんな部分、感じたことないですが…」

「欲に従うべと、高くて珍しい果実を取り寄せてみれば、高い理由が、育てる土地が荒れて人が死にかけで作っているなどと言われ、アイーダに学者を団体で派遣する護衛を頼んでみたり、美術品が手に入らなくて各地の専門職保護で技術の集積施設を作らせたり、そんなのばかり…」


 なるほど、そこが今まで見えないところを振興して産業おこしになったか。


「楽しそうに完全にこなせるリリカと違い、私が自分でない立ち振る舞いをするのは、とっくに限界です」

「ご自分自身でないと思い込んでいるだけですよ、きっと…ぜんぶ皇女が身の丈の実力でなさったことだと僕は思いますよ」

「アイーダもそういいましたね…でも、もう、壊れてしまうかもしれない…死ぬより、それが怖くて…好きな人に好きと言えないままで、そんなの…そんなの…」

「皇女、大丈夫ですよ。何も怖くないです」

「…だから、私を、私のまま、私だけで持って逃げてくれる人かどうか…好きな人に、確かめたいって、その一心で…」


 そう言い、涙をにじませて、皇女は見る。

 僕を。


「好きになってくれますか?コウを…」

「嫌いなはずないですよ」

「私は、好きです…愛しています、リューオさん…!」


 ここまで言われて、何が言えるものだろう。

 お互いに誰かに押されるように、抱きしめた。

 ここで突き進まないと、思ったままの気持ちを出し合わないと、本当に「彼女」が壊れてしまうと思った。

間があいてしまい心から申し訳なく思っています

巻き進行で頑張ります

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