マッド・メガ・トード まほうせいぶつ L39
さて、とりあえず今の状況ですが。
怪獣みたいなのと、戦っています。
なんだこれ。
一応、馬の入った丸太を組んだ箱と、上に乗っていた皆さんは陸に避難。
今は薬屋の子が、サーティオーガという魔族の兵器を動かしてそれの前に立っています。
「すごい…馬の5倍以上のエネルギーゲインがある…リューオが夢中になるわけだ」
なってないですよ。
捏造しないでください。
「やってみるさ!」
念のためと思って、オーガの頭の上に乗ったままでいるが、気付いてはいない気がする。
独り言でなんか、楽しんでるだけなんだろうか…。
「パンチだ!オーガくん!」
言って、思い切り振りかぶって殴りに行く。
目の前のカエルに思い切りめり込む、高威力のパンチが命中し、胴体丸ごと大きく変形していくのが見える。
「やったか!?」
「サーティオーガの特徴は、鎧によって大きく上げたウェイトによる質量任せの一撃が出来ることにあります。決して倒れる事も死ぬ事もない、指示するものの命令のまま蹂躙する不死身の兵士!そう、勝利を目的とした完璧な兵器!」
「…いかにマッドメガトードの強靭な皮膚といえど、あの一撃に耐えられようはずがないのです…柔軟な皮膚によりあらゆるものを吸収すると言いますが、他愛のないことなのです…」
遠くなのであまり聞こえないが、観客席がテンション上げてキャラ崩壊しているのと、世界観間違えたのがいるのと、みんなでフラグ立てしていそうなのは、わかる。
ありていに言えば、泥の中からカエルが出てきたのを近寄らないようにしている…だけに思うのだが。
「…なにっ!?」
オーガの中から声がする。
中に入って操縦している薬屋の人、入り込んで浸ってるな…。
「耐えたのか…そうこなくては」
(たのしそうだなぁ…もうちょっと切らないで黙っとこうか)
なにやら、下手に手出ししてもすべて邪魔になりそうな空気。
「なんですって!?効いていない!」
「ば…馬鹿な…あの一撃は厚さ10センチの鉄板すらぶち抜くはず…」
「敵が…メガトードが我々が知らないほどの進化を遂げていたというのか」
「いや、見るが良いのじゃ!あいつらの戦っている戦場を」
「は……沼!」
そこは見る前に気付け。
みんな演技すること、そのもの楽しんでるよね?
「上半身しか使えないあれの攻撃は50…いや30パーセントほどしか出せないと見てよいじゃろう。不利すぎるのじゃ」
「奴はそこをついてオーガを狙って!」
「あるじさま、そこを気付かれるとはなんという認識力!」
「いやいやぁ」
にっこにこの魔王の方。
ついにカエルが知能犯になった。
そんな高度な思考するものに見えるかいあれ。
いや、まぁ、罠に入らないと絶対仕掛けてこない虫なんかもいるから、本能って凄い知恵が作ったものなんじゃないかという学者さんとかは、いそうですけどね。
僕は、ナワバリに入ってきたものを見つけたから、ただ見境なく近寄った説を推します。ずっと。
「何か武器はないのか…なにか…」
僕の知る限りは、何も伝えられていないが。
「これか、ホーミングインパクトブロウ!」
聞こえた声と同時に、左手の肘から先が、飛んだ。
何仕込んでんだ老人!
あの人も遊びでこれ作ったろ!
案の定、ダメージもなく、カエルの口にそのまま飲み込まれる。
「インパクトブロウが通じない…だと!」
「敵がオーガを研究して弱点を!?」
「何という怪物なのだ…いったい何者が…」
主眼が変わってきたな?
何かが送り込んだ侵略怪獣みたいなものに変化してないか?
カエルくんも大変だな。
映画化されたら主役になれるかもな。
「いまのでオーガの近接戦能力が80パーセント低下です!」
沼に入って何パ―セントも言ってたし、今何割ですかね強さ!?
「くっ…これを狙っていたというのか…敵は」
「卑劣なっ」
「くぅっ…我々には…ただ見ていることしか…できないというのか」
助けてあげていいんですよ!
見た目は、ま、たしかに凄いんですけどね。
沼地に夕日をバックに僕ごとオーガを飲み込もうとする大きな口の巨大ガエルと、片手をなくしてそれに抗うロボット。
息詰まる大格闘戦。
ここで負けたりあれが壊れたとして、なにか大変という危機感があったら、格好付くのかな。
食われかけのど真ん中のポジションで他人事なの、おかしいけどね、僕もね。
「パワー負けしている!?このオーガくんが!」
「なにか!何か打つ手はないのか!」
「このままではなすすべもなく、オーガは倒れてしまう!」
「負けないでムカちゃん!」
盛り上がってるなあ…。
みんなの中で、この一戦に世界背負ってるのかなぁ。
「私の勇気は……死なない!」
カエルの上唇らしいところを持ち、押し返し、跳ねのける!
強いぞ!僕らのサーティオーガ!
僕もうそれだけで泥だらけですわ。
「交代よー!!」
観客席から声があがる。
魔族の、従者のほうの人である。
「しかたないわね」
すっかり何かになりきった薬屋の子、何かを察したようにすんなり、観客席に近づいてオーガを降りる。
「あと、まかせたわ」
「本気を見せてあげますわ」
「決めてきてください!」
二人が旧知の戦友のように、すれ違いざまに片手でハイタッチ。
そして占いの子がなぜか親指を立ててポーズ。
そこ、絶対キャラ間違ってるからね。
終わったら戻しておいてね。
僕も、さすがにもうオーガの頭から降りる。
「あの子が出るの?」
「見せてもらいましょうか、オーガの性能とやらを!」
それ敵側のセリフですね、お嬢さん。
どこでお勉強してました?
聞いてか聞かずか、そのまま重々しく発進する、オーガ。
そして、そのまま。
「アイアンタイフーン!」
急に腕と首をぐるぐる回転させだすオーガ。
なんか思ってるのと、違う!
そして、オーガの顔から飛び出す矢のような鉄の串のようなもの。
いよいよなんか、ファンタジー系じゃないな!?
カエルも、寄ってこようとしたところを口の中に針のようなものが入り、苦しそうだ。
「スライスショッター!」
言葉と同時に右手の甲から刃物が出た。
ちょっとそれっぽいものが出ただけで、何も変わりないようにしか見えない。
が、カエルがそれを見ただけで離れたので、素振りを数回しただけでも効果はあったようだ。
「がんばれオーガ!」
「凄い強い!すごい!すごいマシンだ!」
「そこだ!もういちげき!」
なんか…月並みすぎて微笑ましいレベルだ。
そんな観客席。
何も言わないで、眺めておこう…。
「ブラストカノン!」
今度も、また首と手をぐるぐると回す。
その予備動作、本当に役に立つものなのかな。
そして飛び出す。
ミサイル。
「…えぇ」
こっちにもかなりの勢いが来る爆風が起き、そのままカエルはものの見事に敗北してしまった。
ああ、かわいそうに。
僕が切ったほうがまだ…逃げて終わりにできそうだったのでは。
「さすがにこれは、すごい威力でしたわねえ」
「しんじゃった?」
「…あぁ、半分吹っ飛んだくらいだと月夜の間に戻ってるんじゃないですかね…」
うそだろ!?
「あ、豚野郎がそんなウソに騙されないぞって顔してますね…でも、ああするレベルで動き止めて卵をとる漁があったので普通に死なないですあの泥ガエルは」
「えげつない生物しかいないですね…このへん」
「うっわ、卵これですか?宝石じゃないかってくらい綺麗!」
吹っ飛んだカエルの死体…いや、復活予定の体から、体内に包んでいた卵が見える。
言われると、油膜のような光沢ですごい乱反射して、こんな大きな宝石あったらいいと、僕も思うくらい綺麗ではある。
「あれ、中身はほとんどの生物にとって毒なので、それ用の採取が必要ないなら触っちゃだめですよー」
「そうなんですね…」
魔族の方からも補足説明。
なるほど、猛毒の採取でむかし、漁みたいなのをしていたんだ…。
と、納得するところだったが。
「それ、飛び散ったこの辺り…すごい毒とか、ないですか…ね…」
「あるねー」
………。
「「「急げ!!」」」
もう、止まる選択肢がない。
毒の霧のようなものが既にできてみんなが吸っているかもしれないので、解毒薬で効果ありそうなものを、薬屋の子がすぐ用意し、みんながぶ飲み。
周囲も、それの異常を怖がったのか生物の気配はだいぶ鳴りを潜め、埋まる可能性以外は結果的には、危険度が減るような形に。
深夜までオーガを酷使した結果、沼を抜けることに成功。
抜けると、程なくマップとしては海側に下るようになり、そこからは数回谷を内回りする以外は、海岸沿いの街道で見通しのいい通りやすい道に行くことができる。
「ここに来れば、ちょっと安心感ありますね…」
「こっち、もう廃墟になった港町がある…」
分かれ道にマップを広げて、起きている数人で確認。
「…スルーで」
「それに賛成ですね、僕も」
「リューオは、村に来る前も様子は見てているのでしたね」
「ま、一応、遠くからは」
「船とか、あったんですか?」
「泊まれるような建物も探しにくそうなのと、死体の片づけなんかもしているはずがないので骨いっぱいあると思いますよ…」
「「「スルーで!」」」
このあたりで、占いの子を信じてちょっと別の道にそれたりもしたのだが、ここで昔に放置された馬車のようなものがあったのが幸運だった。
オーガをこれに乗せ、補強をして、怪しい足跡を残さないように車輪を履かせる簡易改造が出来たのだ。
バランスを取りながら、片足でちょいちょい地面をひっかけながら走らせる、短いスケートボードのような見た目というといいのだろうか。
こうなると、箱を持ってスケボー状態のオーガを一人が操縦しながら他は休み、交代しながら進むというサイクルで固定されてくる。
なにか、別の意味で罠だったのではと思わされるほど老人の笑いそうな状況に少し心苦しくもなる。
つまり、サーティオーガの操作経験は、動かせなかった魔王さんと触りたくないで済まされたお嬢様を除いてかなり順調に蓄積。
老人が本当のことを話しているとしたら、彼女たちの、最終的な兵器みたいな扱いを想定した養成に手を貸していないか?
楽だけど、それと別の悲しいルート構築。
そうしないように自分が矢面…なんて、すべて面倒見れる立場でもない。
悲しいなぁ。
そう思いつつ、本当に昼夜関係なくずっと走るリレーを成功させ。
見張り達が見えるような距離になる前には馬車に乗り換え、ルートを誤魔化して…。
途中でリューオを拾った旅芸人の馬車という建前で、なんと出発から五日目にして一行は街に到着した。
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