じょうきゅうしょく アブソーブ・クイーン
村の子たちがみんなで、球の中に入って浮いている僕の体を集め、場所をそれぞれ合わせる。
手のあった位置、足のあった位置。
結構不気味な感じだろうけど、必死にやってくれて、本当にありがとう。
「これ、この球のままくっつけていいのですわよねえ?」
『こちらでも位置のサポートが出来ますので、そのままでよろしいかと』
「あて木の予備、そっちにあるかしらー?」
「ここに用意したのだわー」
「…こ、こっち、少し手伝ってください…足が、動かなく…て」
「早く動きなさいよ!バカ犬!」
いろいろな声が聞こえる。
みんなで、協力してくれている。
断面が相当痛いので、ちょっと離してほしい気がするけど、くっつける作業だからしょうがないか。
ずれないように周囲を固定、手足を元々の位置に固定、さらに固着用の補助に薬品。
フロートリフトと呼ばれる球も連結しながら体の位置をできるだけ支えている。
胸のど真ん中に空いた穴は、まぁ、回復の際に欠落箇所も再生されて埋まるだろうと軽めの解釈。
「では行くのだ…ポッド開放、レベル最大!」
ピラミッド状のパーツを魔王が掲げて唱える。
「…いまので?」
「何もないようですが、治りましたの?」
『いえ、作動していませんね』
していない。
「やっぱり…世は…なにも…」
想定の何倍かはショックを受けている魔王。
まぁ、攻撃とか専門なのだろうし、それはそれで諦めていいのでは。
『前提が多い未完成なものなので、諦めないでください』
そこを、ロンドが、珍しく後押しという真似をする。
どうしたんだろうか。
だがまぁ、未完成というか欠陥品なのは、本当だ。
埋まっていた、僕やマリカさんの入った終末遺跡には、本来、破損や起動不能になっていたキューブがあちこちに転がっていた。
それがメインの回収目的になっていたのだ。
使い捨てになったりするが、重さを無視した手荷物というものがどれほど便利かは、言うまでもない。
ただ、壊れたものは価値が当然ない。
それを、ずっと何かできないかを考え続けていたのが、マリカさん。
内部解析ができるロンドと、その技術を徐々に手に入れながらマリカさんや僕が歪曲空間にフタをしたりエネルギーを注入したり、熱中し続けたときは今も懐かしい。
最終的に、呼び出す空間などを限定し、複数組み合わせて、エネルギーのみの空間を固定する技術を発見。
この世界の、いわゆる魔法と治療のエネルギーの素をぶちこんでみた。
強めに蓋をしているので、噴出の防止にする召喚者の精神力は必要量強めに設定。
仕組みは、タンサンに漏れない蓋をしているのと実際は変わらないレベルの、原始的な理論で作った空間たち。
量の調節や呼び出しのコードの変換などをロンドがさらに追加し、結果できたもの。
それが、ポッド。
元の終末遺跡にあったものとの関わりも薄めになった、こんな物体なのである。
もしかしたら、人により、あうあわないがあっても、それは仕方ないこと。
「あ、諦めないでください!」
「それならわたくしがやって見せますわ!ポッド、開放!」
何も起きない。
『ロックを解くための起動エネルギーが、おそらく足りていないです。わたしも供給のラインがそこに対応していないので、起動はできません。』
「じゃあ何人かで集まったら!」
だめだ。
一応は承認キーの設定もあって、そんな混ざったものだと注入エネルギーのラインに入れられてしまうだろう。
そのまま、何人も、かわるがわる、色々と力を込めていく。
だが、複数人なら、という話が強く機能してしまって、みんながただ消耗するままになってしまっていた。
「すぐできるから、待ってて…ね」
薬屋の子が、かなりかすれた声で言うのが聞こえた。
「カギは明示されていました…幸運と進歩のカギで、この角の方がいれば大丈夫だと、星の位置で、出ていました…」
「クソボケの駄犬が、ずいぶん困らせてくれるけど、大丈夫、もう目のま…え…」
仕組みのせいで、精神が吸いつくされてしまったようになってしまった、占いの子、マッパーの子が、目の前に見えた。
伝えられないのがきつい。
「「わたしたちのちからで、何とでもなるはずです」」
双子。
言うのもなんだが、絶対二人でやっているであろうここは、望みがある気がしない。
でも、ありがとう。
そこまで本気でいてくれて。
「不本意ですが、あるじのかわりに、少しだけやってやります」
「勇者は…いいところで、やり遂げる…ものなので…」
「絶対…ちゃんと、ちゃんと…助けますわ…リューオ」
「…どうして…どうして…どうして…!」
みんなもういい。
なんか、もういいや。
自分たちを大事にしてくれれば。
そっちの気持ちが、少し大きくなっていた。
一度休んでくれたら…。
この独白のようなものは、どうしてロンドに伝わらないものか。
感情的なものを理解できないから、ジャミングにしか受け取られないのか。
悲しい。
「もう一度…世…も…もう一度だけ…」
いや、本当に止めてくれていいんだ。
街までもっていこう。
『起動限界です、マスター…すみ、ませ…』
そっちか!
それはまずい!
こいつが落ちたらリフトが消えて維持装置の機能も消えないか!?
エネルギーをその維持で耐えていたから、それ以外しなかったのか!?
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
落下の激痛が走る。
かなりやばい気がする。
そんなに早く切れたっけか、ロンド。
「は、早くしないと…!」
「動いてよ!これ」
「も、もう一度みんなで…!」
口々に言ってくれるのはありがたいが、何の余裕もない。
このままの苦痛をずっと味わうのは、きついって。
しかも、漏れ出した血液もリフトに入っていた液体もすぐなくなるわけで…。
「ポッド起動!!」
魔王の声も、やはり、何も起きない。
「どうしたら…これをどうしたら…いいんですの…」
「……できます」
そこで一番正気を保っていたのは、その一人だった、ようだ。
「魔物の方、できます…いっしょに、やりましょう」
一番ダメな手段だけど、もう言う余力がこっちにもない。
何とか痛みを和らげて、急いでくれという心からの願望しか。
「手を合わせて…」
「うむ…」
「「ポッド、出力最大、全力で、起動してください」」
その時。
光った。
(なんじゃ?力を吸いだされるような、これは、なんじゃ?)
周辺、その一帯が、さっきまで吸い上げていたものまで出し尽くし、一気に植物なども成長していった。
すさまじい密度の森ができ、消耗した少女たちもすぐに回復していったのを知る。
「これは…」
「わかんないけど、何が起きてるんだ…ぼくも、みんなも…」
「「「リューオ!!!」」」
これはあくまで考察だが。
二人で行った、という状態ではなかったのだと、思う。
魔力が放出できない魔王と、それを自らのスキルで強制的に吸い上げて力を自分と合わせて、自分の力として供給する仕組みを行ったステラ。
そんな合わせ技で、ポッドのふたを開封したのではないか。
もっと奇跡があったことの方が美しくていいとは思うが。
あとから思い出した、僕の考察は、そうではないかと今も思っている。
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