幕間 「こどくにいすにすわるしょうじょのおはなし」
その子は、片方の親から見る形では、望まれない子だった。
当代の魔王による遺伝子ブレンドの追及という狂気の犠牲。
文献の英雄の話を参考に、過去の王家の末裔や獣神とよばれる地方の守護者などをさらい、または一時的に狂わせ、手持ちの魔力の高い有力者にあてがって子をなすという作業の連続。
その中にあって、生まれ落ちた瞬間から特大の可能性を感じた子供。
日ごとに高まる魔力から、すでに教育を行うものたちのなかに近寄れるものはない魔力の塊のようなものを周囲に放つ存在。
2歳にもならぬころから、だれしもそれを恐れ、そのオーラだけで王宮の存在もが敬服した。
王は喜ぶ。
これはあらゆる望みにこたえる器だと。
膨らみすぎ、尽きることのない力に、全ての救いはやってくるのだと。
やがてそこから半年ほどすると、初めて問題らしいものが王の耳にも入る。
恐れて陰でやっていたものが、どうにもならなくなったのである。
伝えられた二つの事柄。
それは。
余りの力の増大に、耐えられる体など存在しないという結論が出ていたこと。
もうひとつは、何物も近寄れなくなりつつあり、その体を維持するためのものだろうと何物も近寄れず、衰弱死も近いということ。
一度衰弱死に近くなり、衰えたときに栄養となる液体などをできる限り注入し、何とか持たせながら、今度はその子に、力をある程度にとどめる技術を教える必要が、あまりに早くやってきた。
侯爵と、その指揮の下でアイテムの装備など多くの手段が試されたが、それらもすべてはうまくいかず。
周囲が打つ手もなくやつれていく姿を見ているしかなくなっている時。
ひとり、人間がやってきた。
その強大な魔力を持つ子よりすこし年上の少女、そして、誰も知らない強大な、別世界の存在かと思う悪魔を連れて。
人間は、連れてきた少女が無造作に取り出した剣の切っ先を進み、衰弱したその子に近づくと、おもむろに頭をつかみ、その剣に触れさせた。
驚く間もない周囲をよそに、それで魔力を霧散させた人間は、いくつかの呪印を施し、その子には心がないのかもしれない、それを生み、育てるために必要な力は流石にないと言った。
だが、それらにより一時的な制御、そして、肉体に、直接その力を内から打ち消すことで周囲への影響を減らす呪力の知識を叩きこんだ。
そののち。
芽生えだした意識、それによる大きな周囲の影響は大きく、すさまじい魔力を持つその子は、まぎれもない継承者として扱われる。
そのまま、大いなる魔力の持ち主となり王の座に就いたもの。
オーマ。
だが、そこに一つだけ陰があった。
ずっと変わらず魔力の強大さは維持している存在。
たぐいまれなる力を秘めた存在。
だが。
何を覚えても、何を使おうとしても。
その力の出力を漏れ出すオーラ以外で出すことは、ずっとできないままだった。
侯爵は、後ろ盾となりながら、これをずっと、今も隠していた。
王は王たればよし。
其れが次代と繋がれるならばよし。
何も欠点などは存在していないのだと。
今も、これはたった一人の魔王の腹心と侯爵のみしか、知らないのである。
短いので今日もう一話なんとかと思っています




