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ステラ=ケナゲルト むらむすめ L2

 童貞卒業が強姦でいいなら、十年は前にやっとるわ。


 そう考えるのを客観視しただけで、異世界だからとはいえ、自分も蛮族になかなか染まり切ってきたのを感じる昨今。

 そういった心持ちで、自分にも環境にも怒りすら感じるこの時間。

 どうせなら、金でも暴力でも手に入らなかった、甘々な時間というものを手に入れたいものだ。

 …本当に発想が青少年じみていて、そこも自己嫌悪の対象として新たに浮き彫りにされるのを感じる。

 まず、今の状況だが。


「…どうにでもしてください……でも、お願いします……」


 自分から出てきたのに、生贄だと主張しているような態度の裸の女性の肩を、僕がつかんでいる。

 別に、彼女を脅迫しているわけでも、力任せにひん剥いたわけでもない。

 …はずだ。

 とはいえ、こうやって体を震わせて半分泣いている子に何ができるだろう。

 村の防衛に関して、弱みに付け込んで女を要求したんだろうと言われれば、本当にそう。

 だから、罪悪感を抱かせるように彼女が選ばれたのではないか、と考えるのも、その発想に至る自分がいるのも、ダメだろうと。

 そんなもろもろ。

 状況全てがもう、これから遊ぶぞと切り替えるのも、ウェーイしながら女にかぶりつく空気になれない。

 最悪、噛みちぎられないか、アレ。

 ゆえに。


「とりあえず、ちゃんと下着と服着て、またこの部屋にはいってこい」

「ど、どうしてですか」

「趣味だよ!そういう趣味だよ!服を破いて抱き着くのが趣味なんだよ!」


 我ながら、なんだそれ。


「破くのですか」

「悪いやつなんだよ!びりびりにして悲鳴上げたりするの好きなんだよ!そうじゃないとヤれないんだよ!」


 僕は、どのくらい壊れている設定なんだ。


「……わかりました……」


 そして、素直に彼女は出ていく。

 年と背丈は、僕とそれほど変わらない気がした。

 今のところは、妹がいるのと、なんだか男性経験豊富そうではないという雰囲気しかわからない。

 計算高い人間か、そう吹き込まれた人間か、果たしてほかの、何かなのか。

 今はわからない。

 それから、計ったのなら十分くらいか。

 改めてワンピースを着た彼女が入ってくる。

 破れてもいいような質素さを考慮したのか、だれが用意したのか、そこも気にならないわけではないが。


「じゃあまずそこに座るかね」

「……はい………」


 もう、気分じゃないのに押し付けられた女性に対して、どうやったら気分よく過ごせるかのチャレンジミッションしている気にしかなれない。

 相手の気分を考えるのも、疲れてきた。

 そう思い世間話からはじめる。

 得意なことは何か、好きなものは何か、頑張ればできることは何か。

 ま、たあいもない話からである。

 本来なら、敵の根拠地に近いことで得られる情報や、ここが過去襲われたりしたかどうか、など、聞くべき話は山ほどある。

 経済的な話や物資の有無といった、村の現状などは、後から考えると優先度がむちゃくちゃ高かったはずである。

 それどころじゃなく心が痩せていたので、仕方ないが。

 あとは、そこにたどり着く前に、趣味的な彼女自身の話を聞けるまで打ち解けるまでに、それだけで夜中になったのもある。

 根負けだ。

 眠い。

 言ってみれば、一晩使ったと言う条件を完了することをいつの間にか目標にしていた自分の失敗かもしれない。

 彼女が理不尽な行動を寝ている間にしないといいが。

 話をしながら、最後はそれだけを考えていた気がする。


「……寝て、いらっしゃる…」


 そんな声を、聴いた気もするか、それも曖昧なレベルの記憶のボケ方。

 警戒心もそこそこに、爆睡した。

 割と本気で疲れてはいたので、食えるものも食わないで云々は言わないで欲しい。

 


 気が付くと、完全に朝。

 目が覚めた瞬間に、少し警戒したが、体は何もないようでほっとする。

 ベッドの横には、冷めても食べられるような配慮も見られる、質素な朝食。

 ま、干し肉と樹皮を煮詰めて固めた巨大なスナック菓子風の、この世界のよくある食事と水差しだけだが。

 それと、畳んで、ベッドの上に服が一枚あるのを見つけた。

 見るとメモも一緒に乗っかり。


「破いてかまいません」


 そう書いてあった。

 ひどい優しい心遣いもあったものだ。

 一方で、顔を合わせる気はなさそうなのを見ると、もしかしてとも考えるまでもなく、嫌われたろうか。

 そのほうがいいな。

 会って言うこともないし、そう納得して切り替える。

 そうして、数日、ここを離れられないかもしれないと、人間側の行軍指示の計画書などの草案をここで書いてしまうことにした。

 


 なお。


 その、彼女は、その日から。

 村のそば、断崖側の空き地の草原の草を、ずっといじりだしていた。

 黙々とそれを繰り返すのを見た数人は、無理をさせすぎて狂ってしまったと、また、噂を流すことになる。

 真実は、まだ不明である……。

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