マヨイ=ウチズハ マッパー L15
「本当に必要な時に!偶然おいしいところを持っていくスキル!」
「その声!?」
「これが!!勇者でうす!!!ギャァァァァァァ!!!」
女性に手がかかる寸前、ということろでピックのような武器をオークに突き立てたのは、タマ。
直後に、やはり当然のようにホームラン級の弾道で、するりと服だけ取られて吹っ飛ばされる。
やっぱり別の世界から出張してきてるんだろうな、あれ。
今は残念だが、過剰に反応してやる暇も、見ている暇もない。
出来る限り割って入って、村の女性を逃がすしかない。
やっと、この光の棒の使い道がわかってきて、細めの刀身のようにする制御が出来てきている気がする。
周辺の目についたものを、斬り飛ばせるようにはなっているが…。
「数がやっぱり多い!」
それだけではなく、見つけるのが遅かったのが一番大きいが、言えない。
調子に乗りすぎて失敗続きだとは、言えない。
どこから湧いて、言われていた簡易ゲートとやらの場所もわからない。
数は多いが、それ以上に、多く見えるほど出てきた時点で叫びたいレベルに、やばい。
多く見えるほどいるということで、一点の密集突撃ではなく、広がっているのが、まずい。
村の小道や通りの端っこなど、潜伏して待っていることも想定しないといけないなら、本当にもう、きりがない。
殲滅したかどうかも確認しきれないまま緊張と集中を続けないといけないのであれば、余裕で、そのうち根負けだ。
戦闘しながら状況把握に加えて、そんなことまで考えないといけないのも、つらい。
いや、やめよう。
考えが負け前提のようだ。
まず、目の前を全て片付けるんだ。
「いやぁ!」
村長の近くの人も、ほか何人かも加わってくれているらしいが、見ている余裕がない。
何人かで固まってやる方がいいという話もできずじまいだ。
つまり、こちらはもう、めちゃくちゃなのである。
「ち、ちょっとなんなの!」
「きゃあぁぁぁどこにいけばいいの!」
悲鳴も聞こえる。
胸が痛く、胸も苦しい。
腹が立って、泣きそうになるが、目の前のことしか、できない。
退避の指示もできていないか、予想の退路そのものも、もうふさがれるほど囲まれているのか。
手詰まりとは考えたくない。
全員、助けたい!
そう願われたのだから。
「武器屋前、一時的にクリアですわ」
「宿屋の横道、今、あいつら居ません!」
「先生の家の広場、なにもいないです!」
あちこちに報告も叫ばれてくる。
しかし、地理詳しく把握していない僕にだけわからない。
悲鳴のところに向かって、そこを何とかするしかないんだ。今の僕は。
もどかしい。
体が動くだけ、ましと思おう。
そして倒そう。
「ありがとうございます…」
「なるべく固まってくれと、誰か見つけたらいってくれ、あと、村長のそばの人の見える範囲なら安全だと思う」
言うことがしょぼい。
一般兵士みたいだ。
だが、彼女のほうが見える範囲と強さは今、上だろう。
優秀さを見せてやって欲しい。
そこにまた悲鳴。
終わらない焦燥感と、自責に吐きそうでも、悔いるのは後だ、急げ。
「薬屋の子!!」
「あ、あんた…来てくれたのね、よかった…よかったよ…」
笑いながら涙ぐむ姿に、こっちもさらに歯がゆくなる。
服がちぎれているのを見て、無事でもないことに、また胸が痛む。
「これ、あいつらにはあまり効かないみたい…ちょっと大変ね、これから…」
「励ましたいけど、すいません、みんなかなり散ってしまっていますか?」
「パニックで横道に逃げだしたりした子はいるみたい…あと、家に帰りたいという子がいたようだけど、止められたかどうか、ちょっとわからない」
「村の建物の配置とか、わからなくて、今、悲鳴しかたよりになれなくて、なんとかしないと…」
「頑張ってるね」
「いえ」
「本気で、ちゃんと本気で、通りすがりみたいな私たちを心配してる…私はそういうの、ちゃんと見るよ」
「絶対、何とかします」
「……わかってる」
無理に笑っているのがわかる。伝わる。
「出来れば集まることができるように、お願いしてもいいですか」
「大丈夫よ!私強いから」
気をつかわせる時点で、僕は最低かもしれない。
肩を支えて、ここという集合場所に連れていけたら安心させられるだろうに。
その場所の把握もできないから、言えない。
「ほら、早く…」
悲鳴がまた聞こえて、彼女が一言。
僕は言葉も出せずに走る。
心の中では、遠ざかりながら言えたが。
ありがとうと。
「は、放してって!?」
「もっと減ろ!貴様ら!」
悲鳴の主を襲っているやつの後ろに、即座にナイフを突き立てる。
咆哮をあげて離れたら、そこに光の棒で頭を狙えたら狙い、潰す。
これに慣れるのは大変遺憾だ。
相手が触れる前に倒したい理想とかけ離れても、助けた気にはなれるのがバカみたいと思う。
これでも、だが、死んでないから間に合ったというのは自分の基準の堕落。
こうだけはなりたくない自分にはなるなと、自戒して否定する僕。
「ありがとうございます…ずいぶんつかれていますね…」
「あいつらより、自問自答にやられてるね、これは」
「それは大変で…」
「じゃあ、次に行くから、あの村長の近くの子のとこ、集まるように誰かにあったら言っといて…」
「誰なんですか?それは?」
「え」
名前知らないんだよな。
もう既に、殲滅すればいいんだよくらいに、頭がマヒしだしているのを自覚した。
「あの、剣を持ったですわって話し方で、髪がこう…」
「わかりませんね…剣が特徴な人って、村の誰なのか…でも、え?」
「僕のところにも来た、偉そうな感じの」
「あ!ゴーカさん!」
もしかして、今まで助けた人にも通じてなかったのか?
少し青ざめる。
それだと、自分が、みんなが混乱する指示を飛ばしていた構図になりかねない。
「ゴーカさん、そんな武闘派でした?私、わからないのですけど」
「僕も、言われるといきなり剣を取り出したのを見ただけだから…いつもは違うのかな」
「ちゃんとはっきり!それに、場所だってどこなんですか!待ち合わせ場所言わなきゃわからないでしょ!ほら言えよ!」
「いやその、村のスポットと地形がはっきりわかってなくて…」
「はー!?知らないでどこうろついてた!?村、大変なことになってるのよ!異常事態なのよ!?」
あれ、口調変わった?
「いや、非常に面目ない…その、先生の広場と武器屋は安全だけは聞いた…けど」
「仕方ないな!」
オークの死体を前にして豪胆な子だ。
通りのマップをはがして、下に置く。
インクに死体の血を使う、ロックさが怖い。
しかもだいたいひん剥かれて丸出しだし。
「今言ったところがこう、今の場所がここ、方角がこっち、みんながさっき集まってたとこがここ!」
すごい。
すべてのものが瞬間で置かれたマップに詰め込まれて形になる。
「ここに薬屋の子がいて今さっき…」
「アン、ここね…おおよそ、こっちが無駄に集中して誰かが狩りをしていることになるね!あとこっちに進んでた指示した人、かーんぜんに間違い!カス野郎!」
ここまで口悪い人がいたのか。
しかし、これは、とてつもなく助かる。
「これ持って行って、みんなを誘導できませんか、あなた」
「おまえもクソ野郎の一人だからな、ちゃんとうちらの盾になるって契約してどういうことなの」
「おっしゃる通りで…」
「それに、あんたはちゃんと仕事できるなら、人を別の戦ってる人に寄せるのって、動きにくくする邪魔してることでもあるからな?理解してやれよな!?」
ほんとうに、みにつまされる。
説教がもっともすぎる。
裸の女を前にして土下座しても普通と思ったのは初めてだ。
「仕事できるなら、むしろお前がちゃんと集めて率いて、守るのが普通じゃぁ、ないか」
「そうですね…ほんとそう」
泣いていいです?
ついさっきの感動っぽい励まされ、なんだったの、僕。
「んんーじゃ、集めるわよ!もう、みんな!あんたの目の前に集めてちゃんと仕事するようにします!わかったね!?」
「は、はい」
「できるよなあ!?」
「は、はいっ!」
「あぁー…座ったからパンツももう気持ち悪くて駄目だこれ」
するり。
「…目の前で迷いなく脱ぎましたね…」
「仕方ないじゃんさ!服とパンツちょうだいよ!早く!」
「僕の着てるのでいいなら、上着はすぐにその」
「きちゃないそれ!パンツだけ脱いで、くれ!それ!」
「…はい」
下が寂しい若い男子と、ホットパンツっぽい下だけの丸出し女子のペアが、そうしてここに誕生した。
「急ぎなさいよ!」
武器屋で見かけたデリンジャーっぽい小型銃を片手に、もう片手は地図。
走り出した彼女に、やれそうな、少しの希望を、僕も見た気がした。
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