タマ=ニンイー ニンジャ L33
「さすがに通じないか……」
ビックリ玉。
そう呼ばれていた爆弾らしいものの効果を確かめた。
地形を変えるにはかなり効果がある強いものだが、想定よりも全然通じない。
目の前には、自分の数倍ある背丈の鉄の塊。
ロボット?鎧を着た悪魔?
暗い中で見ると、それのどっちが近いのかの確認もできない。
この、ビックリ玉も、照明弾に近いものかと思ったらしっかり爆発して地面をえぐったりしているので、強いて言えば、村の中で使わなくてよかったとは言える。
しかし。
この巨大な何かは、それに対してへこみもしないし怯みもしない。
「お前の得意な幻覚あたりで、あいつを崖までもっていったりできないもんか?」
「楽に使おうと思っても、それほどうまくはいかないよぉ~」
「そもそも、それほど弱いとは思ってないっていう高めの評価してるんだぞ?」
「そもそも、あいつそのものは意志らしいものがないからな~、そんなのかからないって話~」
「…分析、どうも」
やはり生物が巨大な鎧を着ている、というものではないのか。
ワンチャン、タダの飾りを置いているだけの硬いカカシってことはないか。
楽に考えたくもなる。
実際は、わざわざ感知の仕組みを見破った挑発をしているのだから、頭も使えるし本気度も高めと理解してはいるが。
このあからさま加減を見るに、ほかに敵がいないのが、ほかの陽動なのか後ろに何かを仕込んだ足止めなのかすら、読めない。
近寄ったとき横合いから狙われる、という可能性もあるし、慎重さは持っておいて出来ることを探す。
「ほかは…この小箱か」
武器屋の子から借りたものをいくつか、警戒しながら眺める。
手投げと生活用のナイフは、常に余分に持つように心がけて用意するようにはしている。
「…真ん中から開くようになって…なんかグリップっぽい形だな」
操縦桿の握る部分だけ切り取ったような、そんな趣。
使い方を説明書無しでわかるような気にしてくれるのは、いい商品のコツなので、これもいいものなのではないだろうか。
ボタンも何もないから役には立たないが。
爆弾の遠隔起動スイッチかと思ったんだけどな。
とりあえず、寄って投げナイフも投げてみる。
動かない。
それでも全く動かない。
「やはり、たいしたことないようですね!」
「うわ!?」
連れてきているのは「アレ」くらいなのに、不意な声がして本気でビビりを出してしまった。
「誰です!?危ないですよ」
「着替えるのに時間がかかってしまいました、こんばんわ用心棒さん」
「いや、だから…」
「ああ、強そうなんで村の人ではないと思ったんですね!わたくし、村の危機には必ず立ち上がる勇者!タマでございます!」
「…守ろうとしている人が積極的に死にそうなところに来ないで…いただけます?失礼ですけど」
何かを間違えている、ビニールを張り付けたような、生身のラインがぴったりとでる全身スーツ。
アイスピックのような、ちょっと武器らしくない武器。
緩みっぱなしの、気合の見られない表情。
どれをとっても、強さの欠片もボクは感じない。
「とりあえずこれを投げるんですか?」
「いや、それは通じなかったんで置いといていいです」
「あいつにぶち当てればいいんですよね!?」
話を聞け。
それだけでいいんだ、頼む、聞け。
「オルアァァ!ギャアァァァァァ!!!」
目の前で飛び出し、転び、爆発するタマ。
その玉自体は照明弾ぽいのだったらしく、当人は無事っぽい。
「ノリャァァァァァァ!ギャァァァァァ!!!!!」
そのまま鎧のようなものに飛びつこうとするタマ。
即座に、初めて動いたそいつの腕で払われ、ボールのように飛んでいく。
ギャグ時空からの侵略者かなんかか、あれは。
だが、目の前のカタマリがハリボテでないことが発覚した。
ありがとうタマ、末代まで君のことは語り継ごう。
いいことも悪いことも。
「なら、できるなら目だけでも潰すか」
僕も近寄って、ナイフで出来る範囲はやってみる覚悟を決める。
巨大なメイスが振り下ろされるのを出来るだけ至近距離で避け、細かく動けなさそうな体にこすりつける勢いで、まとわりついて顔を狙う。
「届きそうにはないか」
あわよくば、体制が怪しいところに一撃加えて倒せれば、なども考えたが、視界は広いようで、手を回して確実に僕を狙い続けている。
有効打がない。
と、思った、そこで。
自分の手が少し光っていることに気が付く。
持ったままのグリップに力を入れていたからだ、と、気付くのだけは、さすがに早かった。
「なんか使えるのか、もしかして」
相手をよけながら手に少し力をこめると、指の間から手の延長となるほうに光が伸び出している。
おそらく、箱を閉じたときは握った親指のほうから、剣のように光が出て構えられて、広げて握るとこう伸びる、という照明か武器か、どちらか。
少し伸びた光を振り下ろすと、相手の鎧に跳ね返る感触がある。
「いい武器かもしれない」
弾かれる反動で飛びのき、間合いを行ったり来たりしながら、最終的にはナイフで目を潰そうと、すこしこのカタマリと対峙してみる。
両方ダメージはあまりないが、打ち合いにはなっている。
相手の鈍さは、思った通りで、最悪の一撃がなければ光明はありそうだ。
「用心棒さん頑張ってますかぁ?」
「少し戻ってこないかしら?お水あるわよ?ね?」
また後ろから声がする。
「重要な話ですか!?ちょっと今立て込んでいるんですが!」
「割と冗談じゃないかもね?だからお願い、ね?」
瞬間の集中も切れないから、何とか言葉だけひねり出すが、だめかもしれない。
追ってくるにしても、少し離れて何かする時間は稼げるだろうか。
そう、数回さらに切り結んでから、なんとか頭の中で思い立ち、メイスの大振りを合図に、カタマリから離れて一度逃げる。
「先生と、お義母さんの人でしたか…」
水筒を受け取って、後ろを注意しながらやっと話を聞く体制に。
「こっち、完全に陽動ですよお」
「そうっぽいですね、後ろからも横からも何も来ない…けどこれ一匹だけでも十分村なんて壊れる気もします」
「本体は崖からくる羽付きの魔物たちみたい、だから向かってあげて欲しいなって、ね?」
こっちに火力があればすぐにでもそうする。
牽制できたり足止めになる何かだ、これの。
残念ながら、読み違いで障害物を積み上げる系の人材を用意する暇も考えもなかった。
「ここは、私たち二人で何とかするわぁ」
「それなりに昔は頑張った二人だし、安心していいのよ?ね?」
「人で何とかなる物体ですかね…」
「いいのいいの、みんなにいいところ、見せたくなることじゃない?そろそろ」
「そっちのおまえは、この人にサポートはできないのか?」
「あれ、そもそもボクあんまり好きじゃないんだよねえ~芸がないしかっこ悪いし~」
そういう話はしていない。
「…誰かいますの?他にそこに」
「……え」
お義母さんの人の一言に、割と背筋に来る何かを感じた。
「そこの人、ボクの目を見たら絶対むしろうとするから、最初からずっとボクのことは見えてないよ~、知らなかった?」
かなり重要なことですが。
こいつ、本当になんでもない常時レベルから相当な仕込みしてるなぁ。
「じゃあ、何かできる状況になったらあれの足だけ止める考えを持ってきますから、逃げ回ってくださいね」
「倒しちゃっても、かまいませんのですよねえ?」
「私たちを弱弱しく見すぎなら、後で痛い思いしちゃったり、しますかもですよぉ?」
「全員を守りたいから言っているんです、ご無理されませんように」
言って走り出す。
横の「あれ」も、ふらふらしながらそのままついてくるのを確認する。
「見えなくなりましたね」
「久しぶりに、それでは楽しみますか」
先生、デモンと、セーソが同時に微笑む。
寄り添うようにして、背中合わせに構えながら。
「アシッドレイン!」
デモンが片手をあげながら声を上げると、あのカタマリの周囲に突如と雨が落ちてくる。
「足止めにはなるかもですが、あまり効きませんねぇ」
「私がやり損ねて一度離れたら、次は雷で行きましょう」
「わかりましたぁ」
「じゃ、いくわよ!」
『汝の望み、得るべきものはすべてこの手から与えられん』
『得るべきは力、望むべきは滅び、手にすべきもの、それすなわち己たらん』
『さすれば、その心に捧げられる一つのもの』
「昏き底なしの我 リッチリィ・デプス 鏡の色のオブシダン」
倒れるように後ろに落ちるデモンと、その胸に手を当てるセーソ。
そしてセーソの手は、上天に掲げられた時に一つの何かをにしている。
巨大な黒い刀。
かつて、とある地に伝説を残した、破壊という現象そのものがそこにはあった。
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