アティエルナ=デモン せんせい L45
「この状況…なんなんでしょう…」
縛られている。
磔の刑のようにベッドに縛り付けられている。
そして、満足そうな顔をしている人が三人、見下ろしている。
どうしてこうなったのか。
それは「あの日」の夜に、遡る。
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「あ~終わりましたわ…かあさまがそんなに早く出てくるなんて、不幸でしたわ……」
「…いい、おかあさま、ですよね……?」
「言いたくはありませんが、わたくし、あの方ほど純粋に強欲な方をこの世で見たことございません」
ずいぶんすっぱりと言うものだ。
「もう、残ってたらおこぼれを貰うか、捨てられた何かを見てそれが好きになれるか賭けるくらいしか、無いですわ」
「ひ、人に対して言うようなお言葉のようには…その」
ステラが、不満というには申し訳なさそうに、あくまで控えめに会話を続ける。
「ま、あの人の外側を見て想像は付きませんわよねぇ…結構本気になれそうな可愛げのお方でしたのに」
「…け、結構って…そんな遊びみたいに言うの、よくない…です」
「あら、ステラ?」
ゴーカが、気になる何かを感じだしたのが、その時。
「まわりで、あなたがあの方にあってから頭がちょっと混乱しているように話していたの、どうやら…思うほど間違っていなかったんですの?」
「…変なのは…この、奥にあるもの、だけだと思います…」
ステラが胸をグッと、両手で押さえるようにする。
「私、あの方に、どうしてもほかの人に危害を加えてほしくないと言いに行ったんです…そうしたら、あの人は、急に励ましてくれて…」
「あ~ら、あらあらあら!」
「最初わからなかったんですけど!他人のためにと自分を潰そうとするより、負けない気でいれば、周りの人を助けられる強さがみんなにも生まれてくるはずで、だから気持ちを大きくしていくんだよって…それが、初めて聞いたからうれしくて…」
「それで…もしかして、誰かに嫉妬、したんですの?」
少し、そこを一足飛びに聞くのは意地が悪い。
「それで!あの方、今できることや、何か自分が誰かよりうまく出来ることがあるかなんて相談にも乗ってくれて、夜中中話してくれて、綺麗だとも言ってくれて!」
「好きに、なったんですのね」
「わかんないです…わかんないんです…」
涙ぐんでいた。
ここまで本気に、先になっているとは、ゴーカも思わなかった。
ちょっとネジが外れた噂も、なるほど、こんなに強い心の行き場がなかったのだと。
あふれ出てわからないほど、心を奪われていたとは、と。
「なら、おかあさまがどうしていたとしても、何か手段は作らないといけませんね」
「…なに…です…?」
「わたくしが先に出れば、魅力で勝つのは当然ですからね、あなたには最大限の対策と、あとは着飾ってもらわないと。わたくしも、心苦しく思います、ね?」
「ゴーカ様あぁ…」
「ほらほら、レディですから人前で鼻を拭かない」
「…ぶあい…」
こうも純粋だと、どうにも、ぶつかる手が緩む。
ゴーカの強く出にくい内面が、これでもかと引き出されるキャラになるとは。
少しだけ、自分を恨めしく思った。
とはいえ、ゴーカの、心のまま行くと決めた気持ちは変わらない。
思い立ったら、全力で飾り立てるだけだ。
と、いったことで、対策本部がたてられた。
「もう!あんなのに手渡しするなんて、ステラじゃ上玉すぎると思うわ!」
ムカが、一も二もなくステラを抱きしめて、まず一言。
ついでに顔を舐めているのが癖なのか、愛情的なものなのかは、不明。
「楽しそうだし、私はゴーカに任せるわ」
「突発的な色恋なんて、そうそう村で聞きませんものね」
「ですです」
ともに集まった何人かは、おおむね好意的だ。
「むしろ、ムカさんが本気なんだったりしてね」
「そんなわけがないでしょ!!ステラが大事なのよ!?」
いきなり発火するあたり、脈がない感じではなさそう。
「でも、だとしたらこれから毎晩ステラさんなんです?」
「そこは気になるところね」
「いえ、そこは変わらず、違う方優先でいきますわ」
「…え…」
ステラが、少しだけ不満そうにムカの腕の中で反応する。
「あの方が何でも食べる食欲旺盛な方ではなさそうなのもありますし、よそ見するならステラさんに向いてない人だったということでもあります」
「よね!よね!」
「そのうえで、ただ村の人との顔見せなら、そもそも必要なことなんですから変えずともいいかと思いましてね」
「横入りありってことかしら?意地の悪いゴーカさんですねぇ」
「お世話や交流は昼だってあるんですからね、ステラにはやる気になって、夜にも会いたいと言わせる流れにするのが、集まった理由と言ってもいいのです、そういうことです」
「会う時間は、我々からも協力して増やす、それくらいでいいと」
「左様ですわ、呑み込みが早くて大変助かります」
遊びたい、応援したい、茶化したい、護りたい。
様々な方向の存在を確認しながら、それでいて適当に集まった各々が語り続ける。
結局、あまり変わらずに流されようとしかならないのは、興味を持つ住人が多くないことでもあるが。
「それともう一つですね、わたくし、どうしても、あの方が戻ったら試したいことがありまして」
ゴーカが切り出す。
それはいわゆる、男性に対する対策。
好かれるために必要なこと、好みに合わせることという能動的な方法。
直接的に調べることが誰にも不可能な以上、ここは話し合うしかない。
なにせ、男性がいないのだから。
とりあえず、今は、来た男性、リューオの好みを列挙することでそれにぴったりなステラを飾り立てることとする。
今までの情報としては
ステラ 破れた服が好き、または破るのが好き
ムカ 脅されるのが好き、刺されるのもまんざらではない、リードされるのも好き
ゴーカ 反応を見るため女を放置するのが好き、泣かされるのも好き
「…変態ですの…?」
「いえ、男性ってそういうものなのかも、知れません」
「正しいことって奇妙なんですねえ」
趣味なんだと彼の漏らしたことを集めた結果。
「…や、やります…私、頑張ります…みなさんに、こうしてもらったんですから…」
やる気、というべきか、ここで勇気を出したステラ。
これらを取り入れるよう、改めて準備をすると決めた。
「では、わたしが、そこの準備に関してばっちりサポートするわぁ」
「「「先生!!!」」」
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ということで。
縛り上げ、脅し、泣かしてナイフを見せつける。
ステラ、そして応援のための夜中にあったことのある合計三人でこれを決行した。
「全く意味が分かんないですね!?」
「…どうですか?魅力的な人ですか?これで…」
自分たちで破った服を、あえて裸の上からはおり、ナイフを手に顔の近くに持っていくステラ。
「ひとつ刺してみてもいいのかもしれないわね」
「このまましばらく眺めるほうが、好みなんじゃないんですの?」
口々に言うことが、正気の人から見るとだいたいおかしい。
「リューオさんの、好きな人…こうなんですよね…頑張ります…」
「そうだったっけかねえ!?怖い!怖いよ!?」
「効いてる効いてる!」
「少し踏んでみましょうか」
悪化する環境。
そして迷いのない暴行。
何をしてしまったらこうなるものか。
「あと、どうしていったらいいですかねぇデモン先生~」
「名前よ!!!」
「うーん、メロメロになったか確認しながら、三人でそのまま触ったりするといいんじゃないかしらぁ」
「とんでもないこと言ってる奥の人は本当に何なんですか!誰です!?助けて!」
そのまま試行錯誤は続く。
「照れ隠しって言う言葉、ここの村には通じないんですかぁ!?」
そこにリューオの考えが行きつくまで、どのくらいの時間を要したろうか。
そして、だんだん状況が呑み込めてきたあたり。
そんな夜半。
「…申し訳ないです、これ、本当にすぐ解いてください」
「満足して、頂けました?」
「そうじゃないです…僕が仕掛けた感知器がすべて一気に反応したんです…わかってて反応させたのだと思います、つまり」
本気の侵攻がある、そういうことだ。
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