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まえおき

 裸の女性が立っている。


 その女性のほかに部屋にいるのは、自分ただ一人。

 と、なれば、やることはただ一つ。

 なのだが。

 涙ぐんでいる。

 いかにも望まない、耐えるしかないという表情をしている。

 …やりづらい。

 多分、笑うと美人なんだろうな…と考えてしまうから、なおきつい。

 「そういった」本能がないわけではないのだが。

 どうしたらいいだろうか、この微妙な空気は…。

 

 発端は、売り言葉に買い言葉。

 そういうものだったと思う。

 

 ————————————————————————————

 

 僕の名前は、リューオ。


 適当に世界を荒らしまわった異世界転生者だ。

 数年、好きなことだけをしようと能力をストレス解消に使いまくり、いつからか自分も悪党であると割り切って、名前も聞き覚えのある悪役を自分にとって付けた。

 そんな自分でも、なけなしの良心がないわけではない。

 下心もありつつ、大規模な街の争いなど、敵が多そうなところに腕試しで殴りかかっていく生活をしていたら「調停の英雄」などともてはやされたりもした。

 被害が大きくなるより、その場の気に入らないやつを目につくだけ無力化しないと食べ物がもったいない、を続けてそうなっただけだが。

 

 そのうち、その伝文だけでRPGぽい勇者扱いとなって魔王討伐など、異種族狩りの依頼などが発生し、金のためにこなしだし。

 ラスボスである、ここの人たちが呼ぶ「魔王」の根拠地に攻め入る軍隊などが準備される段階となる昨今。

 その周囲にある村や港を開放という名の見学で廻りだした時…。

 あまりにも本来の侵攻ルートから離れすぎていた、ひとつの村があった。

 大街道からも、港からも離れた、今後も取り残されるだろう、一つの村。

 このまま異種族完全抹殺まで行けば、姫とゴールインだって、たぶん視野に入る。

 異世界で成り上がるなら、まず大体のやからは、やってみたかったこと。

 だから、村程度に時間は割けない。

 ここの人間たちが善人なら、場所の報告だけすれば今後防衛ラインの中に入れてくれるはずだ。

 それで終わり。

 だったが。

 村長と僕は、言い合いになる。

 僕は見た目的には15にもならない程度のくだらない若者。

 ほかに頼めと言われても、村長がここを守ってほしいと、一人だけの僕に、なぜだかわざわざ食い下がってきた。

 それで、僕もそのまま捨てればいいのに、これも、なぜだか真っ向から張り合って言ってしまったのだ。


「だったら一晩いるごとに一人、別の若い女を用意して差し出せるのか」


 と。


 状況を思い出せば、足元を見た、極めて卑怯な要求だったかもしれない。

 人間側のでかい軍隊とコネがあり、防衛人員を出せるか聞くくらいはできると行ったかも、今思い出すと定かじゃない。

 その後ろめたさはある。

 だが、それに二つ返事で即決する相手も、どうなんだ。

 相手の危機感がすごくて、条件が何でもありになっていたのかもしれない。

 だからって、そんなに早く、その日から用意しますと言えるのか。 

 自分で言うのもなんだが、お互いあまりにも鬼畜すぎやしないだろうか。

 故に今困っているわけだ。

 

 ————————————————————————————


「……お願いです……」


 絞り出すような、つらそうな声が、なけなしの良心にダメージを与えてくる。

 わかってやっているとしたら、最高の策士で、今まで生きてきて一番効くダメージだ。


「……私だけではいけませんか…あの子だけは、妹だけは選ばないように言ってくださいませんか……」

「何で来たんだよ、じゃあさぁ」


 つい、苛立って口を出してしまう。

 狭い村にしたって、たとえば既婚者や未亡人。

 それどころか、そういった系統の商売で暮らしている人がいる可能性、あるじゃないか。

 青年を手玉に取って遊べる若い女性、またはそういう趣味の人くらい一人はいるだろうに。

 トップバッターが泣き落としは、こっちも泣きそうな攻撃的な人選とも取れるのだ。

 僕には。


「…お願いします……」

「ああ!もうさぁ、空気どうしようもないんだわ!こっちもさあ!」


 罪悪感の強さが、童貞にとても刺さる。

 思わず立ち上がり、そいつの肩をつかんだ。

 彼女は、そっと目をそらし、何も言わず、震えた…。

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